ジプシー女とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > ジプシー女の意味・解説 

ジプシーおんな〔‐をんな〕【ジプシー女】


ジプシー女

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/14 15:14 UTC 版)

『ジプシー女』
フランス語: La Bohémienne
英語: The Gipsy Girl
作者 フランス・ハルス
製作年 1628-1630年
種類 板絵キャンバス
寸法 57.8 cm × 52.1 cm (22.8 in × 20.5 in)
所蔵 ルーヴル美術館パリ

ジプシー女』(ジプシーおんな、: La Bohémienne: The Gipsy Girl)は、17世紀オランダ黄金時代ハールレムの巨匠フランス・ハルスが1628-1630年に板上に油彩で描いた絵画である。委嘱された肖像画ではなく、トローニー (顔の表情と珍しい衣装を描いた習作) であるが、ハルスが制作していた時代には、このように公の場で胸を見せるような衣装は普通のものではなかった。本作は、リベーラの『えび足の少年』、レンブラントの『ダビデ王の手紙を手にしたバテシバの水浴』、ヴァトーの『ピエロ』などを含む583点からなるフランス人医師ルイ・ラ・カーズ英語版のコレクションにあったが、1859年、そのコレクションがすべてパリルーヴル美術館に寄贈されて以来、ルーヴル美術館の所蔵となっている[1][2]

作品

この絵画は、オランダ美術史家ホフステーデ・デ・フロート英語版により、1910年に記述され、以下のように書かれている。

119番。ジプシー女。B. 41、M. 263。半身像。等身大。笑って、ほぼ顔の全体を見せているジプシー女が右下を向いている。彼女の茶色い髪は肩の上に下がっている。胸を露出させている白いシュミーズの上に赤い胴着を着ている。黄ばんだ肌の色調。素晴らしい絵画。

ホフステーデ・デ・フロートは、本作のモデルが身に着けているドレスがハルスの他の2点に描かれているドレスに似ていることに着目した。そして、デ・フロートは、それら2点を本作の両側に記述した (目録番号118、120)。

本作は、1782年、パリで最初に記録され、以降、あらゆるハルスの目録は本作を含んでいる。1962年の展覧会の目録で、エントリー番号23とされた本作の解説によれば、輝く光の中に、かつて胸の両側にあった斜めの筆触が見えるが、これは、ハルスが最初、彼女のはだけた胸をより控えめにしていたことを示している (このことはX線の解析でも裏付けられている[1])。ハルスは通常、一気呵成に塗り重ねて作品を描いていたので、 この発見は、モデルのふしだらな女性の肖像を描く際におそらくハルスがある種の躊躇をしていたことの証左である。とはいえ、当時、そのような主題は一般的なものであった。

本作は、ハルスがイタリアバロック絵画の巨匠カラヴァッジョの影響を強く受けていた初期に制作された風俗画のうちの1点である。技法的にも、大きな荒い筆致で素早く描かれた衣服や、下塗りが透けて見える背景の処理はハルスの初期に特有のものであるが、生命力の塊のような奔放な娘を描いた本作にはそれがことのほか似つかわしい。庶民の旺盛な活力をこれほど単刀直入に描いた絵画はそれまでになかった[3]

『ジプシー女』は、最近の国際的な展覧会には出品されておらず、最後に貸し出されたのは1962年のフランス・ハルス美術館におけるフランス・ハルス展の折であった。その時、本作はシンガーソングライターのレナールト・ネイフ英語版を触発し、彼はモデルの女性について歌を作ったが、展覧会に出品された別の作品名に従い、誤って『マッレ・バッベ』(ベルリン絵画館) という題名にしてしまった[4]。 歌は、本作の女の艶めかしく、強い官能性を賞賛している。このみだらな歌は、1975年、オランダでロブ・デ・ネイス英語版のヒット曲となり、今でも他のアーティストたちによりさまざまなヴァージョンで非常に人気が高い。そのため、今日でも本作は、ときどき『マッレ・バッベ』と呼ばれている。古文書には本作のいかなる名称もないが、さまざまな美術史家は、彼女は娼婦であったと推測している。乱れた髪や大胆に広く開けられた胸元から見て、娼婦である可能性は高い。彼女がジプシーであると推測する本当の理由はない[1][3]

脚注

  1. ^ a b c 『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、2011年、293頁。
  2. ^ La Bohémienne - Louvre Collections” (フランス語). collections.louvre.fr. 2023年2月11日閲覧。
  3. ^ a b 『NHKルーブル美術館V バロックの光と影』、1986年、113頁。
  4. ^ Voskuil, Peter; Isabelle Brus; Oscar Vermeer; Matty Verkamman (2007). Testament. Leven en werk van Lennaert Nijgh. Kats: De Buitenspelers. ISBN 9789071359057 

参考文献

外部リンク



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ジプシー女」の関連用語

ジプシー女のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ジプシー女のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのジプシー女 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS