コカエチレンとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 学問 > 化学物質辞書 > コカエチレンの意味・解説 

コカエチレン

分子式C18H23NO4
その他の名称コカエチリン、Cocaethyline、(1R,5S)-3β-(Benzoyloxy)-8-methyl-8-azabicyclo[3.2.1]octane-2β-carboxylic acid ethyl esterCocaethylene、Ethylbenzoylecgonine、エチルベンゾイルエクゴニン、コカエチレン、コセチリン、ホモカイン、ホモコカイン、Cocethyline、Homocaine、Homococaine、エチルコカイン、ベンゾイルエクゴニンエチル、Ethylcocain、Benzoylecgonine ethyl、(1R,2R,3S,5S)-3-Benzoyloxy-8-methyl-8-azabicyclo[3.2.1]octane-2-carboxylic acid ethyl ester
体系名:(1R,2R,3S,5S)-3-(ベンゾイルオキシ)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボン酸エチル、(1R,5S)-3β-(ベンゾイルオキシ)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-2β-カルボン酸エチル、(1R,2R,3S,5S)-3-ベンゾイルオキシ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボン酸エチル


コカエチレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 13:45 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

コカエチレン(Cocaethylene)とは、ヒトにおけるコカインの主要代謝産物の1つであるベンゾイルエクゴニンカルボキシ基が、エタノールとのエステルを形成した、トロパンアルカロイドの1種である。コカインの類似物質として知られており、コカインとの違いはエステルを形成している相手のアルコールが、メタノールではなくエタノールだということだけである。ヒトがコカインとエタノールを同時に摂取した場合、すなわち、コカインを使用した時に飲酒を行っていた場合、ヒトの体内で生成する化合物として知られている。

ヒト体内におけるコカエチレンの生成

上記の構造を見比べれば、コカエチレンがコカインの類似物質であることは一目瞭然であろう。また、コカインがエタノールとエステル交換反応を起こした結果が、コカエチレンであることも見て取れるだろう。そして、実際にヒトの血中にコカインとエタノールとが同時に存在した場合、肝臓においてコカエチレンが生成されることが判っている [1] 。 ヒトの体内においてコカインは、肝臓に発現しているカルボキシルエステラーゼ(カルボン酸エステルを加水分解する酵素)によって、ベンゾイルエクゴニン(コカインのエステルが加水分解されてメタノールが外れた状態)、または、エクゴニンのメチルエステル(コカインからエステルが加水分解されて安息香酸が外れた状態)のどちらかに代謝されるのが普通である。ところが、この代謝を行っている最中にエタノールが存在していると、カルボン酸エステルの加水分解反応よりも、エステル交換反応の方が起こりやすくなるために、コカエチレンが生成されてくる [2] 。 具体的には、ヒトの肝臓において、

  1. コカイン + が、カルボキシルエステラーゼ1英語版による触媒を受けて、 ベンゾイルエクゴニン + メタノール となる。
  2. ベンゾイルエクゴニン + エタノール は、エステルを生成して、コカエチレン + 水 となり得る。
  3. コカイン + エタノール が、カルボキシルエステラーゼ1による触媒を受けて、コカエチレン + メタノール となる。

以上の反応が起こる。

ヒトにおけるコカエチレンの生理作用

コカエチレンは、コカインと同様に局所麻酔作用を有しており、同じエステル型の局所麻酔薬と言える。これとは別に、コカエチレンは、やはりコカインと同様に、ヒトの脳に対して直接作用することが可能である。つまり、ヒトの血液脳関門をコカエチレンも突破できるのである。コカエチレンは、脳内の細胞に存在するドーパミントランスポーター、セロトニントランスポーター、ノルアドレナリントランスポーターを全て阻害することによって、神経伝達物質として細胞外に放出されたドーパミンセロトニンノルアドレナリンの細胞内への取り込みを妨げて、細胞間に存在するこれら3種の神経伝達物質の量を増加させる。これにより精神刺激作用、多幸感をもたらす作用、食欲減退作用、アドレナリン様作用を有する。ただし、コカエチレンは、ドーパミントランスポーターをコカインよりも強く阻害する一方で、セロトニントランスポーターとノルアドレナリントランスポーターに対してはコカインほどには阻害しない [3] [4] 。 このためなのか、コカインよりもコカエチレンの方が、多幸感が長く続くとされている。そして、以上のような作用を持つことから、コカインと同様に濫用薬物として、楽しみのためにヒトによって使われてきた。つまり、コカインの濫用と同時に、酒を飲むという使われ方がなされてきた。なお、この他にコカエチレンにはコカインと同様に心毒性を持っている。しかも、コカインよりもコカエチレンの方が心毒性の強いことが示唆されている [5]

出典

  1. ^ S. Casey Laizure, Timothy Mandrell, Naomi M. Gades, and Robert B. Parker (2003). “Cocaethylene Metabolism and Interaction with Cocaine and Ethanol: Role of Carboxylesterases”. Drug Metabolism and Disposition 31 (1): 16–20. doi:10.1124/dmd.31.1.16. PMID 12485948. 
  2. ^ Cocaethylene metabolism : interaction with cocaine and ethanol Cocaethylene metabolism and interaction with cocaine and ethanol: role of carboxylesterases by Laizure SC, Mandrell T, Gades NM, Parker RB (January 31st, 2003)
  3. ^ Jatlow, Peter; McCance, Elinore F.; Bradberry, Charles W.; Elsworth, John D.; Taylor, Jane R.; Roth, Robert H. (1996). noradrenaline transporter(NAT) 00026&type=abstract “Alcohol plus Cocaine: The Whole Is More Than the Sum of Its Parts”. Therapeutic Drug Monitoring 18 (4): 460–4. doi:10.1097/00007691-199608000-00026. PMID 8857569. http://jousrnals.lww.com/drug-monitoring/pages/articleviewer.aspx?year=1996&issue=08000&article=the noradrenaline transporter(NAT) 00026&type=abstract. 
  4. ^ M. Perez et al. (1994). “Cocaine and cocaethylene: microdialysis comparison of brain drug levels and effects on dopamine and serotonin”. Psychopharmacology (Berl.) 116 (4): 428–32. doi:10.1111/j.1471-4159.1993.tb03305.x. PMID 8455033. 
  5. ^ Wilson, L. D.; Jeromin, J; Garvey, L; Dorbandt, A (2001). "Cocaine, ethanol, and cocaethylene cardiotoxity in an animal model of cocaine and ethanol abuse". Academic emergency medicine : official journal of the Society for Academic Emergency Medicine 8 (3): 211–22. doi:10.1111/j.1553-2712.2001.tb01296.x. PMID 11229942

参考文献



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「コカエチレン」の関連用語

コカエチレンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



コカエチレンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
独立行政法人科学技術振興機構独立行政法人科学技術振興機構
All Rights Reserved, Copyright © Japan Science and Technology Agency
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのコカエチレン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS