カネラ科とは? わかりやすく解説

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カネラ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 19:56 UTC 版)

カネラ科
1. カネラ(Canella winterana
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: カネラ目 Canellales
: カネラ科 Canellaceae
学名
Canellaceae Mart. (1832)[1][2]
タイプ属
Canella P.Browne (1756)[3]

カネラ科カネラか学名: Canellaceae)は、被子植物カネラ目に属するの1つである。常緑性木本であり、精油を含む。カネラ科のタイプ属であるカネラ属(Canella)の名は、古代ラテン語でシナモン(シナモンスティック)を意味する "cane" に、小さなものを意味する指小辞の "ella" を付したものであり、「小さなシナモン」を意味する[4]。革質の互生し、雄しべが互いに合生して筒状の単体雄しべとなっており、複数の心皮が合生して1室の雌しべをつくっている。フロリダ西インド諸島から南米アフリカマダガスカルに分布する。5属20種程度が知られる。

特徴

常緑性で多くは高木だが(下図2a)、まれに低木[5]。節は3葉隙[5]道管は細く、隔壁は大きく傾斜しており、階紋穿孔または網状穿孔をもつ[5][6]師管色素体はタンパク質繊維を含む[6]。精油を含む[5][4]。集晶をもつ[5]。ときにアルカロイドをもち、サポニンプロアントシアニジンフラボノールエラグ酸を欠く[5]

2a. カネラ(Canella winterana
2b. カネラの植物画

互生し、螺生または2列互生する[5][6](上図2b, c)。葉は単葉、ふつう革質で無毛、油点をもち、全縁葉脈は羽状、葉柄があり、托葉を欠く[5][7][4](上図2b, c)。気孔はふつう平行型、ときに不規則型[5]

は両性、放射相称、集散花序または総状花序を形成または単生し、花序は頂生または腋生する[5](上図1, 下図3a, b)。萼片(苞葉とする説もある[6])は3枚、輪生、宿存性[5][6](下図3a, b)。花弁は(4–)5–12枚、ふつう離生[5][6](下図3a, b)。雄しべはふつう6–12個、キンナモスマ属では多数、互いに合着して筒状の単体雄しべを形成している[5][7][4](下図3a, b)。花糸筒から蜜を分泌する[6]は外向、縦裂する[5]。タペート組織は分泌型[5]花粉は2細胞性、単口粒[5]雌しべは1個、2–6個の心皮からなり合生心皮、子房室は1室で短い花柱と2–6裂した柱頭をもつ[5][6][7][4]子房上位、側膜胎座、1心皮あたり胚珠は2個から多数、半倒生から湾生胚珠で厚層珠心、2珠皮性、珠孔はジグザグ型[5][6][7]。胚嚢はタデ型[5]

3a. カネラの花
3c. カネラの果実

果実液果、2個から多数の種子を含む[5][6][7](上図3c)。はよく分化しているが小さい[5]。胚乳は油質[7]染色体基本数は x = 11, 13, 14[6]

分布

西インド諸島フロリダ中米南米ベネズエラブラジル南部、アフリカ東部から南部、マダガスカル熱帯亜熱帯地方に分布する[6]

人間との関わり

4. カネラの乾燥樹皮(左)

カネラ[4]Canella winterana)から採取された樹皮は white cinnamon(白桂[4])ともよばれ、しばしば香料香辛料に用いられる[7](図4)。葉は虫歯の痛み止めとされることもある[4]。またオレンジ色の樹皮は、プエルトリコにおいて魚を捕るための毒にも用いられる[7]。西インド諸島の Cinnamodendron corticosum の樹皮も、強壮剤として用いられることがある[7]

マダガスカルCinnamosma fragransはインドへ輸出され、宗教的な儀式に用いられる[7]ウガンダWarburgia ugandensis も加工用の材や香辛料下剤として用いられることがある[7]

系統と分類

古典的な被子植物の分類体系である新エングラー体系クロンキスト体系では、カネラ科はモクレン目に分類されていた[8][9][10][11]。形態的特徴からは、バンレイシ科ニクズク科などとの類縁性が考えられていた[7]。一方で心皮が合生して側膜胎座をもつ1室の雌しべを形成する点では、モクレン目としては例外的であり、スミレ目に分類されたこともある[4]

やがて20世紀末以降の分子系統学的研究によって、カネラ科は他のモクレン目植物とは系統的にやや遠いが、シキミモドキ科には近縁であることが明らかとなった[6]。このカネラ科とシキミモドキ科からなる系統群は、2022年現在ではカネラ目Canellales)として分類されている[6]。カネラ目は、コショウ目ウマノスズクサ科コショウ科など)の姉妹群であり、さらに外側にモクレン目クスノキ目が位置することが示されている[6]

2022年現在、カネラ科にはおよそ5属20種ほどが知られている[1](下表1)。ただしこのうちキンナモデンドロン属(Cinnamodendron)は多系統群であることが示されており、おそらく今後改変される[12](下図5)。

カネラ科

カネラ属(Canella

プレオデンドロン属(Pleodendron)+ キンナモデンドロン属の一部

キンナモスマ属(Cinnamosma

キンナモデンドロン属(Cinnamodendron)の一部

ウァルブルギア属(Warburgia

5. カネラ科内の系統仮説[12]

表1. カネラ科の分類体系の一例[1][2]
6a. カネラ

脚注

出典

  1. ^ a b c Canellaceae”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022年4月2日閲覧。
  2. ^ a b GBIF Secretariat (2021年). “Canellaceae”. GBIF Backbone Taxonomy. 2022年4月2日閲覧。
  3. ^ Canellaceae Mart.”. Tropicos.org. Missouri Botanical Garden. 2022年4月7日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o トーマス・ウィルソン (1997). “カネラ科”. 週刊朝日百科 植物の世界 9. 朝日新聞社. p. 98. ISBN 9784023800106 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Watson, L. & Dallwitz, M. J. (1992 onwards). “Canellaceae Mart.”. The families of flowering plants: descriptions, illustrations, identification, and information retrieval.. 2022年3月28日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Stevens, P. F. (2001 onwards). “CANELLACEAE”. Angiosperm Phylogeny Website. 2022年4月2日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l Heywood, V.H. (ed.) (1985). “CANELLACEAE”. Flowering Plants of the World. Helm. pp. 29–30. ISBN 978-0709937784 
  8. ^ 加藤雅啓 (編) (1997). “分類表”. バイオディバーシティ・シリーズ (2) 植物の多様性と系統. 裳華房. p. 270. ISBN 978-4-7853-5825-9 
  9. ^ 井上浩, 岩槻邦男, 柏谷博之, 田村道夫, 堀田満, 三浦宏一郎 & 山岸高旺 (1983). “モクレン目”. 植物系統分類の基礎. 北隆館. pp. 219–222 
  10. ^ Melchior, H. (1964). A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien mit besonderer Berücksichtigung der Nutzpflanzen nebst einer Übersicht über die Florenreiche und Florengebiete der Erde. I. Band: Allgemeiner Teil. Bakterien bis Gymnospermen 
  11. ^ Cronquist, A. (1981). An integrated system of classification of flowering plants. Columbia University Press. ISBN 9780231038805 
  12. ^ a b c Müller, S., Salomo, K., Salazar, J., Naumann, J., Jaramillo, M. A., Neinhuis, C., ... & Wanke, S. (2015). “Intercontinental long-distance dispersal of Canellaceae from the New to the Old World revealed by a nuclear single copy gene and chloroplast loci”. Molecular Phylogenetics and Evolution 84: 205-219. doi:10.1016/j.ympev.2014.12.010. 

外部リンク

  • Kabeya, Y. & Hasebe, M.. “モクレン類/カネラ目/カネラ科”. 陸上植物の進化. 基礎生物学研究所. 2022年4月2日閲覧。
  • Stevens, P. F. (2001 onwards). “WINTERACEAE”. Angiosperm Phylogeny Website. 2022年4月2日閲覧。(英語)
  • Watson, L. & Dallwitz, M. J. (1992 onwards). “Canellaceae Mart.”. The families of flowering plants: descriptions, illustrations, identification, and information retrieval.. 2022年4月2日閲覧。(英語)
  • Canellaceae”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2022年4月2日閲覧。(英語)
  • GBIF Secretariat (2021年). “Canellaceae”. GBIF Backbone Taxonomy. 2022年4月2日閲覧。(英語)



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