エンタングル状態の非局所相関
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 09:22 UTC 版)
「量子もつれ」の記事における「エンタングル状態の非局所相関」の解説
説明のため、スピン1/2をもつ2つの粒子A、Bから成る系を考える。粒子A、Bはある時刻 t 0 {\displaystyle t_{0}} から t 1 {\displaystyle t_{1}} の間に相互作用し、時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} に系全体の状態が | ψ ⟩ = | ↑ A ⟩ | ↓ B ⟩ + | ↓ A ⟩ | ↑ B ⟩ 2 {\displaystyle |\psi \rangle ={\frac {|\uparrow _{A}\rangle |\downarrow _{B}\rangle +|\downarrow _{A}\rangle |\uparrow _{B}\rangle }{\sqrt {2}}}} になったとする。ただし、 | ↑ ⟩ {\displaystyle |\uparrow \rangle } 、 | ↓ ⟩ {\displaystyle |\downarrow \rangle } はスピンのz成分 s z {\displaystyle s_{z}} の固有値1/2、-1/2に属する固有ベクトルである。時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} 以降は2つの粒子が離れていって相互作用が無くなり、以降は系全体の状態は | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } のままであったとする。 | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } は、エンタングル状態であることが容易に証明できる。すなわち、時刻 t 1 {\displaystyle t_{1}} 以降の系全体の状態は、粒子Aの状態と粒子Bの状態とのテンソル積として表すことができない。 t 1 < t 2 {\displaystyle t_{1}<t_{2}} となる時刻 t 2 {\displaystyle t_{2}} に、粒子Aのスピンのz成分を測定するとしよう。量子力学が教えるところによれば、測定結果として1/2と-1/2がそれぞれ確率1/2で得られる。そして、測定結果が1/2であれば系の状態は | ↑ A ⟩ | ↓ B ⟩ {\displaystyle |\uparrow _{A}\rangle |\downarrow _{B}\rangle } に収縮し、測定結果が-1/2であれば系の状態は | ↓ A ⟩ | ↑ B ⟩ {\displaystyle |\downarrow _{A}\rangle |\uparrow _{B}\rangle } に収縮する。したがって、粒子Aに対する測定を行う以前には粒子Bのスピンz成分は不確定であるが、粒子Aのスピンz成分を測定したとき、同時に、離れた位置にある、粒子Bのスピンz成分は100%の確率で粒子Aの測定結果と逆向きの値になると判明する。 粒子A、Bは時刻 t 2 {\displaystyle t_{2}} には離れた場所にあるのだから、粒子Aに対する測定が瞬時に粒子Bの測定結果に影響を与えるということを、2粒子間の相互作用に帰することはできない。むしろこの結果は状態 | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } が持つ性質として理解されるべきである。このようなエンタングル状態が持つ非局所的な相関という性質が、すなわち量子もつれである。
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