ロンドン旅客機爆破テロ未遂事件とは? わかりやすく解説

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ロンドン旅客機爆破テロ未遂事件

(イギリス旅客機爆破テロ未遂事件 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/30 09:03 UTC 版)

ロンドン旅客機爆破テロ未遂事件(ロンドンりょかくきばくはテロみすいじけん)は、ロンドン警視庁2006年8月9日イギリスからアメリカ合衆国へ向かう複数の旅客機を飛行中に爆破する大規模テロ計画を未然に阻止した事件である[1][2]

ロンドン東部ウォルサムストーのフォレストロード上にたたずむ警察官

概要

2006年8月9日ロンドン警視庁イギリスからアメリカ合衆国カナダへ向かう複数の旅客機(最大で10機と見られる)を爆破させる大規模なテロ計画を未然に阻止した[1]

この計画は、過酸化アセトン(TATP)を使用し、アメリカ合衆国の主要都市上空で飛行中の旅客機を次々に爆破・空中分解させる計画としていた[1][3]。TATPを機内に持ち込むにあたって、細工を施した上でスポーツドリンクペットボトルにTATPを生成する原料を入れた他、起爆装置をデジタル携帯音楽プレーヤーやノートパソコンなどに隠すなど手口の巧妙さが目立った[4][3]。また、液状物質を使う点、複数の旅客機を洋上爆破させようとした点で、ボジンカ計画との類似性が指摘された[4]

容疑者

ロンドン警視庁MI5と共同してロンドンやバーミンガムなどを家宅捜査し、国際テロ組織アルカーイダに関与しているとみられる24人を反テロ法違反容疑で逮捕した[1][5][6]。逮捕された24人のうち、22人がパキスタンイギリス人と判明した。

イギリスの報道機関は本事件の黒幕としてアルカーイダの軍事司令官の名を挙げている[7]。この軍事司令官は爆発物製造の専門家で、アフガニスタンまたはパキスタンにある軍事訓練キャンプでパキスタン系イギリス人を指導し、活動家が居住する国外の銀行に送金する役割も担っていたとされる[7][8]。また、今回の事件の計画を立案し、本事件の主犯格に指示を出していたという[7]。さらに、ウォルサム・フォレスト区に居住する本事件の容疑者がアルカーイダと関連するキャンプで軍事司令官から恒常的に軍事訓練を受けていたと伝えられた[7]

反響

ジョージ・W・ブッシュ大統領は「我が国がイスラム過激派との戦争状態にあることをはっきり思い起こさせた。我々は米国民を守るために様々な措置をとってきたが、いまだ完全に安全なわけではない」とする声明を発表した[9]。また、マイケル・チャートフアメリカ合衆国国土安全保障長官は記者会見で「いくつかの点でアルカーイダの計画を思わせる」と述べた[10]

トニー・ブレア首相は「容疑者逮捕は警察とMI5の『長期間の捜査』の成果であり、アメリカ当局から多大な協力を得た」とする談話を発表した[2]

影響

アメリカン航空ユナイテッド航空エア・カナダの便がテロの対象となっていたため、液体物質の持ち込みが規制され、化粧品などを含む一切の液状、ゲル状の物質の飛行機への持込が禁止された[2]。また、イギリスおよびアメリカ合衆国は、イギリス発アメリカ合衆国行きの民間航空機に対する警戒レベルを最高レベルまで上げた[1]。さらに、ロンドン・ヒースロー空港は、すでに同空港へ向けて離陸した便を除くすべての航空機の着陸を禁止した[1]

世界の一部の国際空港では航空機内に財布、貴重品を除く手荷物の持ち込みを禁止する措置をとった[1][11][12]

対象となった便

各便の航路

脚注

  1. ^ a b c d e f g ロンドンで旅客機爆破テロ未遂 21人を逮捕」『朝日新聞朝日新聞社、2006年8月11日。オリジナルの2006年8月11日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  2. ^ a b c 英で航空機爆破テロ計画を摘発、21人逮捕」『読売新聞読売新聞社、2006年8月11日。オリジナルの2006年8月12日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  3. ^ a b 英旅客機テロ計画、爆発物は有機過酸化物か」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月12日。オリジナルの2006年8月27日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  4. ^ a b 爆発物隠し、巧妙化 英のテロ未遂」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月12日。オリジナルの2006年8月12日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  5. ^ 英テロ未遂、逮捕者24人に 実行予定は「数日後」か」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月11日。オリジナルの2006年8月20日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  6. ^ 11日演習、16日に実行か 英テロ計画」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月11日。オリジナルの2006年8月12日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  7. ^ a b c d 黒幕のアル・カーイダ幹部、旅客機テロ計画主犯に指示」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月13日。オリジナルの2006年8月23日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  8. ^ 旅客機テロ計画、イスラム「慈善団体」が資金供与か」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月14日。オリジナルの2006年8月27日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  9. ^ 英テロ未遂、ブッシュ大統領非難 「実行の直前」と米長官」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月11日。オリジナルの2006年8月22日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  10. ^ 英の航空機爆破計画、米長官「アル・カーイダを連想」」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月10日。オリジナルの2006年8月12日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  11. ^ テロ厳戒態勢の中、出国ラッシュ 各空港は大混雑」『朝日新聞』朝日新聞社、2006年8月11日。オリジナルの2006年8月16日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。
  12. ^ テロ計画で米空港も厳戒、航空各社も対応急ぐ」『読売新聞』読売新聞社、2006年8月11日。オリジナルの2006年8月12日時点におけるアーカイブ。2025年3月30日閲覧。

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