アヴァランシェの過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/28 22:27 UTC 版)
「アヴァランシェ・ブレークダウン」の記事における「アヴァランシェの過程」の解説
アヴァランシェ・ブレークダウンは強電界下での電流増倍のプロセスであり、電力送電システムの様に非常に高い電圧を使用する場合か、半導体内のように電圧は高くないが、非常に近い距離に印加される場合に発生する。アヴァランシェ・ブレークダウンが発生するために必要な電界の強度は材質により大きく異なっている。空気では一般に3MV/m、セラミックのような良質な絶縁体では、40MV/mが必要である。半導体デバイスでは、通常20 - 40MV/mの電界強度が必要であるが、この値は素子により異なってくる。 電界強度の条件が満たされると、アヴァランシェが発生するには自由電子が必要である。この自由電子は、どんな良質な絶縁体であっても非常に少ない数であるが存在しており、アヴァランシェは必ず発生する。アヴァランシェが発生する素子では、アヴァランシェ・ブレークダウンが発生するしきい値より低い電界強度に設定すると、電流は電子の生成に大きく依存する。例えばアヴァランシェ・フォトダイオードでは、光の入射がこれらの自由電子の生成に使用される。 アヴァランシェ・ブレークダウンが始まると、自由電子は電界で非常に高速まで加速される。これらの高速の電子は物質内を走りぬけ、原子にぶつかる。もし、電子の速度がアヴァランシェ・ブレークダウンを起こすには十分でない場合(すなわち、電界が十分な強度を持っていない場合)、電子は原子に吸収され、この過程は停止する。しかし、原子に衝突した際にスピードが十分に高い場合、衝突した電子は原子をイオン化し、原子から電子をたたき出し、自由電子を作り出す。これを、衝突電離という。元からの電子とたたき出された自由電子は電界で加速され、別の原子に衝突し、新たな自由電子を作り出す。この過程が繰り返され、大量の自由電子が材質内を指数関数的に増加しながら移動する。ここまでかかる時間は、ピコ秒のオーダーである。アヴァランシェの結果、非常に大電流が流れ、他の外部的な回路等により電流値は制限される。全ての電子がアノードに到達するとホールが同じように作られないとこの過程は停止する。 BJTでは、ベースの駆動の強さがアヴァランシェ電圧に重要な要素となる。もし、ベースに低インピーダンスが接続されている場合、電荷はベースから早い時間で取り除かれ、アヴァランシェの過程を抑制する。しかし、もし、ベースに電流源などの高インピーダンスが接続されている場合、増加したチャージはベースにとどまり、アヴァランシェが低電界でも発生する。
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