アメリカ近代小説黎明期の作家として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 02:59 UTC 版)
「ルイーザ・メイ・オルコット」の記事における「アメリカ近代小説黎明期の作家として」の解説
オルコットの作品は少女小説、ジュブナイル小説、スリラー小説といったジャンル小説として、本格的な文学史議論、アメリカの近代リアリズム小説の誕生の研究からは無視されてきたが、近代小説の成立の過渡期にあたる作品であり、平石貴樹は、『Moods(気まぐれ)』においてひとまず、「近代小説はやや特殊な形で成立した、とみることも可能であるだろう」と評価している。本作の主題は道徳であり、この「情熱ではなく徳義」という自己否定的主張は、ブロンソンを父とするオルコットにとって、幼少期から極めて重要で切実な問題であるため、前近代的テーマの小説のようにも見えるが、彼女の個人主義的な主題の追求となっているともいえる。平石貴樹は「オールコットの個人的、伝記的な要因を率直に反映しながら、彼女の苦心の自己表現として書かれた、その意味では個人主義的な、一人前の近代小説であることは、最終的には否定できないだろう。」「オールコットは逆説的なことに、自己否定の願望を自己表現しようとする作家だった。これが、彼女が(近代小説への)過渡期的な作家であることの深層の意味であり…彼女が『気まぐれ』を、「書かないわけにはいかなかった」理由、第二版まで二十年以上にわたって抱え込んでいた理由だったとも考えられる。」と分析している。
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