なぜPaO2≦60Torr なのか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 04:32 UTC 版)
「呼吸不全」の記事における「なぜPaO2≦60Torr なのか」の解説
ヘモグロビンの酸素解離曲線の傾きが、PaO2が60Torr の時点から急峻になるためと、多くの教科書に記載されているが間違いである。解離曲線の形は一見そのように見える。しかし、解離曲線が急峻になるPaO2 の値を計算で求めると、その値は30〜40Torrであり、60Torr ではない。 それでは、なぜ60Torrなのであるかを、組織への酸素供給からその理由を示す。組織への入り口がPaO2で出口が静脈血酸素分圧(PvO2)とすると、低酸素血症が引き起こされPaO2が低下し、組織の出口であるPvO2も一緒に低下すると、組織への血流量が同じであればその組織で使われる酸素消費量は低酸素血症のおこる前と同じである。しかし、組織の出口のPvO2が低下するとその周囲の組織は酸素不足に陥る。血管から遠い細胞ほど酸素欠乏に陥る。そのため、生体ではPaO2が低下してもある値まではPvO2は低下しない。その値がPaO2=60Torrである。 この研究はCOPD患者を対象にしたものであるが、肺動脈性肺高血圧症(原発性肺高血圧症)では、PaO2 80TorrからPvO2が低下すると言われている(在宅酸素療法の適用疾患に、「低酸素血症の有無に関係なく肺高血圧症」がある)。
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