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ちょんこ

大阪弁 訳語 解説
ちょんこ ちょん 朝鮮人のこと。様々な時代背景から、差別用語


チョン (蔑称)

(ちょんこ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/09 20:01 UTC 版)

チョンとは、

  1. 俗に、頭の悪いこと。おろかなこと。
  2. 朝鮮人の蔑称。「チョン公」「チョンコ」などとも[1][2]

概要

この蔑称の初出は、1870年(明治3年)に出版された『西洋道中膝栗毛』と考えられている[3]

なんだ仮初にも亭主にむかってさっきから人中だと思ッて勘弁すりゃァばかだのちょんだの野呂間だのとモウ此上は堪忍ぶくろの緒が切れた

意味・語源は不詳だが、「ばか」や「のろま」と並置されていることから悪口であろうと推察される。あるいは『西洋道中』の掲出部分[4]の文脈は、直前に遊び惚けて仕事をしない弥次郎兵衛と北八に妻たちが愛想をつかして喧嘩になる場面であり、「話(離縁あるいは落し前)をつけてもらひやせう」を口にしたのちの弥次郎兵衛のセリフであり、文脈では「幕切れ(縁切)の拍子木」の比喩とも取れる。ただこの場合も、文脈上あきらかではなく(「のろま」は弥次郎兵衛の妻おはちのセリフとして文脈上で直接出てくるが、「ばか」や「ちょん」に直接つながるセリフがない)推測の域を出ない。いずれにせよ、本作の筆者仮名垣魯文の幕末明治期の執筆上の関心は西欧(英米仏蘭露など)に集中しており、また明治3年頃の東京府の市井に朝鮮人が(ましてや侮蔑の対象として)広く意識されていたとは考えられない[5][6][7]

これ以降の他の用例も「バカだのチョンだの」「バカでもチョンでも」といった語形が大半であり、「チョン」単独で悪口として使われたことは確認できない。国語辞典は「まともでないこと、頭のわるいこと。つまらないこと。また、そういう人や物やそのさま。」[8]を採録するが、その他の語源説として、

  1. ちょんがれ節の語源「ちょぼくる」からの類推で①口先でうまく言いくるめる(者)②からかう、ばかにする(者)という意味[9]になった
  2. 半人前や取るに足らない人のことを芝居の終わりに打つ拍子木の音になぞらえた
  3. 踊り字の「ゝ」(ちょん)が「漢字にも満たない中途半端な文字」であることから「半人前の人」を指すようになった
  4. 役務を帳票に記す際、筆頭名主は役職名と姓名を記したのに対して、筆頭以下の同役に対しては「以下同役」の意味で「ちょん」と略記した上で姓名を記したことに由来し「取るに足りない人」を指すようになった

などがあるが、はっきりしない。「チョット」という副詞は室町時代から「チットシタ/ソットシタ」という語として利用されており、日葡辞書(1603-1604)には「ソットシタコト」「ソットシタヒト」は「少しの事」「普通の人、あまり値打ちのない人」という意味であると掲出されている[10]。「ちょんぼり」という語(副詞)は「こぢんまりとしているさま。また、わずかであるさま」という意味であると小学館デジタル大辞泉は採録する[11]

もとは江戸言葉だったと言われることもあるが、三好一光編『江戸語辞典』や、前田勇編『江戸語大辞典』には掲載されていない。

戦後、「バカでもチョンでも」が略された「バカチョン」という表現が広く使われるようになった。

一方、朝鮮人の蔑称としての「チョン」は、1960年代あたりから使われるようになった。やはり語源は不詳だが、「朝公(ちょうこう)」が変化して「チョン公」となったという説がある[12]

これが「バカチョン」と結び付いて侮蔑的・揶揄的に使われたことで、「バカチョン」が侮蔑語としての意味を有するようになったと言われている[1]。こうした事情から、日本国内のメディアによって放送禁止用語の一種にされている[1]

脚注

  1. ^ a b c 小林健治 2011
  2. ^ 上原善広 2011
  3. ^ 精選版 日本国語大辞典は初出の実例として挙げる。コトバンク・精選版日本語大辞典「ちょん(チョン)」[1]
  4. ^ 仮名垣魯文『西洋道中膝栗毛』(聚芳閣、1926年)[2]国立国会図書館デジタルコレクション、コマ番号15
  5. ^ なお仮名垣魯文が熟読し「童絵解万国噺」の元本ともした箕作省吾『坤輿圖識』には「人民頗蛮庶」とあるものの「土人柔和にして、能漢字を解す」と必ずしも酷い書きぶりではない。漢土(中国)の言及が9行なのに対し朝鮮の言及は5行。
  6. ^ このほか1869年(明治2年)に刊行された福沢諭吉「世界国尽」(注:一説には百万部刊行されたという)ではアジアにおける支那(から)やアジアにおける西欧列強の進出には大きな関心を向けているものの朝鮮に関する言及は一切ない。福沢全集巻2「世界国尽」[3]国立国会図書館デジタルコレクション、(注)源昌久「福沢諭吉著『世界国尽』に関する一研究」(大阪市立大学文学部、空間・社会・地理思想2巻、1997年)[4]PDF-P.1
  7. ^ 李氏時代の朝鮮では自国民の海外渡航は禁止されており、日朝貿易は原則として釜山の草梁倭館で行われており、長崎や東京府に仮に朝鮮人が在留していたとしても極めて少数か、特段の事情があったものと推認できる。明治末期の日韓併合時点で在日朝鮮人は少なくとも790人(権泰煥,2002)から多くとも2600人(田村,1998)との推計がある。鈴木透「近世以降東アジアの人口移動」(厚生労働科学研究成果データベース、2017)[5][6]PDF-P.13
  8. ^ 精選版日本国語大辞典「ちょん」[7]
  9. ^ なお「西欧道中」では上掲のせりふの前に、売掛の回収を口実で出かけたまま遊んでいた事を女房達が罵倒する一節がある。
  10. ^ 深津周太「室町期における副詞「チョット」の意味」(名古屋言語研究、2010)[8][9]、P.34、PDF-P.4
  11. ^ 小学館デジタル大辞泉「ちょんぼり」[10]
  12. ^ 立命館大学「チョン語」問題”. 2024年11月19日閲覧。

参考文献

  • 『西洋道中膝栗毛』(1870年出版)
  • 小林健治「『バカチョン』『チョン』という言葉」『差別語・不快語』にんげん出版〈ウェブ連動式 管理職検定02〉、2011年。ISBN 978-4-931344-31-0 
  • 上原善広「チョンコ」『私家版 差別語辞典』新潮社、2011年、217-219頁。ISBN 978-4106036798 

関連項目



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