『悪についての試論』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/17 01:33 UTC 版)
「ジャン・ナベール」の記事における「『悪についての試論』」の解説
「ある種の行為や社会構造、実存のある側面について、そんなことは正当化できないと考える場合、私たちは何を根拠にしてそうするのであろうか。」 という一文で始まるこの書は、「正当化できないという感情」を悪に関する考察の出立点とする。例えば戦争について「どれほど冷静に考えて予見していたとしても、シニカルに政治的な計算を行っていたとしても、また〔戦争に事欠かぬ〕歴史に通暁していたしても、戦争の勃発が私たちの内に呼び覚ます感情を抑えることはできない。それは、またしても人類の運命が意思の庇護から逃れてしまった、という感情である。」 と、自らの第一次大戦の兵士体験、執筆当時(1955年)まだ生々しい第二次世界大戦の記憶への思いを吐露したあと、悪について苦渋に満ちた晦渋な考察を進めていく。訳者・杉村靖彦は上記引用分の訳註で「いかにしても正当化できないという尺度なき感情のみを掘り下げることによって進められるナベールの悪論は、「存在することの悪」を語るレヴィナスや、「悪の凡庸さ」を語るアーレントの洞察と数々の点において通じ合っている」と評している。
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