「輪番」説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 16:40 UTC 版)
「ケシク」を「輪番」の意と解釈する説。現代モンゴル語において「ケシク」が「恩恵・寵愛」などのみならず「輪番・番直」の意も有することは既に箭内亘が指摘しているが、箭内はこの語義を寧ろモンゴル帝国時代の親衛隊制度から派生したものであると解釈し、以後箭内の見解が踏襲されてきた。 しかし近年、宇野伸浩は同時代のウイグル語文書において「ケシク」という語が「輪番」という意味で用いられていること、またマフムード・カーシュガリーのテュルク語辞典『テュルク語集成(ディーワーン・ルガート・アッ=トゥルク)』でも「ケシク」が「輪番」という意味の単語として記されていることを紹介し、ケシクの「輪番」という意味がモンゴル帝国以後に成立したとする箭内の説は成り立たないことを指摘した。その上で、モンゴル帝国時代以前よりテュルク系諸族の間で「輪番(=ケシク)制」が存在したと考えられること、それを導入することでモンゴル帝国におけるケシク制度が成立したと考えられる、と述べている。 この解釈の場合、「ケシク」という単語はそのまま「輪番/番直」、あるいは輪番の「班」を意味し、これ自体では「親衛隊組織」そのものを指さない。故に、宇野伸浩は「モンゴル帝国時代の親衛隊組織」を指す際には「当直を持つ人々/輪番を行う人々」を意味する「ケシクテン(kešigten)」という語を用いるべきである、と述べている。
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