れい‐こく【例刻】
例刻
読み方:れいこく
- 寛政享和の頃、吉原にて流行せし語なり。「例刻」又は「例国」と書けり。「こく」の字解し難し。菎蒻本『松の登妓話』に「此女等兎角亭主の例こくへくらひつきます」とあり。『商内神』には「客、揚屋町の湯にでもへへつてこよふ。女郎、うちでおへとりなんしな。客、イヤ生貝を塩でもむよふに例こくをごしごしやつた湯はおそれいりやす」とあり。例の物との意なるべし。
- 例刻。例のもの。例のことの意にて、性交、男陰、女陰を指す。昔の隠語。蜀山人作「道中粋語録」に客の詞として「今迄咄し声がしたつけ、大かた例刻だらう」とあるは情事の義。女陰を指すものに「商内神」に「揚屋町の湯にでも這入つてこやう」「青楼(うち)でお入りなんしよ」「いや生鮑(ナマガイ)を塩でもむやうにれいこくをごしごしやつた湯は恐れやす」。又、安永四年版懸川春町画作「春遊機嫌袋」に「誰もかれもすきな字といふを按摩福いちウウれいこくといふ字か」とあり。川柳に「れいこくへかむろ風呂敷持つてかけ」とあるは男陰の義にも解し得。「例刻のやうに大黒後ろ向き」「ソレ薩摩芋と例刻だと御宰」などは専ら男陰の義なり。其他「李不尽通詩撰諺解」に例刻の註として「陽にして余れる処男子のしるしなり」とあり。「松登妓話」に「此の女がとかく亭主のれいこくへくらひつきます」。又、式亭三馬の「酩酊気質」に「れいこくといふことは難有い事さ、大黒天のおつむりをうしろから御らうじろ、能く似てゐるものがある。即ちれいこく天と名付けたのじや、天はこれ天空じや依之れいこく天と申せども至つて深いわけがあつて遥の後に大黒天と改めた」とあり。
- 「例刻」色事といふ意に用ゐたり、畢竟例のこと、例の物、の義にて例刻の字を正当とすべし、蜀山人作の『道中粋語録』に客の詞とし此語あり、又男の物、女のものをもれいこくといふことあり。安永四年版恋川春町画作の『春遊機嫌袋』に出でたるは女のものをさせるが如し、又『李不尽通詩選諺解』に例刻とありてその註に依れば男のものをいへる也。武亭三馬の『酩酊気質』下に「れいこくといふ事は難有いことさ大黒天のおつむりをうしろから御らうじろ能く似てゐるものがある則れいこく天と名付けたのぢや天はこれ天空ぢや依之れいこく天と申せども至つて深いわけが有つて遥の後に大黒天と改めた云々。」
- 江戸時代語で房事のこと。例の時刻、即ちいつもの時刻という意味から出た語。
- 例のもの、例のことの意味から陰名となった。江戸時代の遊女で、しきりとつかわれたものである。〔風流〕
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