鳥羽 (砲艦) 艦歴

鳥羽 (砲艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/15 13:22 UTC 版)

艦歴

計画

1910年 (明治43年) 1月の時点で艦艇補足費造船費で製造の「利根」と30号(後の「浦波」I)、31号(後の「磯波」I)、32号駆逐艦(後の「綾波」I)の明治42年度予算が399,138余っていた[18]。 この剰余金を用いて浅喫水砲艦1隻を佐世保海軍工廠で建造することが同年1月17日に提案され、2月2日に決裁した[18]

建造

同年(1910年)3月25日に佐世保鎮守府あてに(二百五十噸)浅喫水砲艦1隻を製造するよう訓令が出された[4]。 船体・機関の製造予算は艦艇補足費造船費支弁の337,853で明治44年(1911年)度に竣工するよう定められた[4]。 同1910年6月28日に製造費は軍艦製造及建築費支弁に変更[19]第二号甲鉄戦艦(後の「鹿島」)と第一号装甲巡洋艦(後の「鞍馬」)の明治43年度造船費予算からの剰余金692,647円から充当された[19]。 また造兵費予算67,780円はこの2隻の43年度の造兵費から63,000円を流用して予算年度の前倒しを行った(2隻の造兵費予算は翌年度に同額を本艦の予算から戻す予定)[19]

浅喫水砲艦佐世保海軍工廠1911年 (明治44年) 7月7日起工した[5]。 同年11月7日に「鳥羽」と命名され[20]、 二等砲艦に類別[21]、 同日午前8時30分に進水した[22]。 当初11月10日の進水予定だったが、都合により繰り上げられた[23]。 「鳥羽」は11月17日に竣工[12]、 約4カ月で建造され当時のスピード建造の記録を作った[12]

就役

竣工当時中国大陸辛亥革命が発生していた[12]。 「鳥羽」は11月18日に第三艦隊に編入され、浮きドックに入れられて防護巡洋艦笠置」の曳航により11月25日に佐世保を出発し、12月3日に上海に着いた[24]。 直ちに同方面の警備任務に就き、以後日本に帰国することは無かった[12]

第一次世界大戦

第一次世界大戦では、始め中国が中立国であったため河用砲艦は武装解除した。第三艦隊の艦艇は1914年 (大正3年) 8月13日までに上海に集結[25]。8月22日、「鳥羽」は浦東海軍用地内の三井物産倉庫岸壁前錨泊していた「伏見」の上流に錨泊[26]。8月24日、2隻は武装解除を完了した[26]。また、同地には「隅田」も錨泊した[26]。「伏見」には7名が残留し、艦の保管は三井物産上海支店に委託された[27]。8月24日、第三艦隊より除かれ佐世保鎮守府予備艦となった[28]

1917年 (大正6年) 8月14日に中国が参戦したことにより、8月29日に河用砲艦の乗員は上海に到着[29]。「鳥羽」は9月11日に上海発[29]。漢口、宜昌などを経て10月26日に重慶に到着[30]。事態の悪化に伴い、12月4日には陸戦隊を揚陸した[31]。12月15日、「鳥羽」、「千代田」、「宇治」、「隅田」、「伏見」で第七戦隊が編成された[32]1918年 (大正7年) 4月25日、「鳥羽」は宜昌上流で北軍から射撃され、交戦[33]。その後、5月14日に上海に着き、修理が行われた[33]。「鳥羽」は6月15日に上海を発し、7月19日に重慶に着いた[33]

昭和期

上海事変日華事変に従軍した[12]

太平洋戦争

太平洋戦争では上海で1941年 (昭和16年) 12月8日に駆逐艦」と共同で砲艦「ペトリル」を撃沈、砲艦「ウェーク」(後の日本海軍多々良」)を捕獲した。

終戦後

1945年(昭和20年) 9月30日除籍。中華民国に接収され「永済」となった。1948年 (昭和23年) 4月17日に湖北省郝穴での戦闘で功をあげ「郝穴」と改名された。1949年 (昭和24年) 11月29日に永安と共に中国人民解放軍に投降、「湘江」となった。1960年代に除籍。


注釈

  1. ^ #帝国海軍機関史(1975)下巻p.401によると2軸と記載があるが間違い。

出典

  1. ^ a b c d e f g h #戦史叢書31海軍軍戦備1付表第一その一「大正九年三月調艦艇要目等一覧表 その一 軍艦」
  2. ^ #内令提要7版/艦船(1)画像1-3、艦艇本籍別一覧表 大正四年四月一日調。
  3. ^ #戦史叢書31海軍軍戦備1pp.229-230
  4. ^ a b c #M44公文備考20/鳥羽製造命令及予算(1)コマ9-12、明治43年3月25日官房機密第42号の2「浅喫水砲艦製造ノ件」
  5. ^ a b #M44公文備考20/鳥羽製造命令及予算(2)コマ1、明治44年7月7日「浅喫水砲艦鳥羽起工ノ件」
  6. ^ #M44公文備考20/鳥羽製造命令及予算(2)コマ23、明治44年11月17日電報「鳥羽今十七日竣成シ海軍工廠長ヨリ艦長ヘ引渡済」
  7. ^ a b c #日本海軍特務艦船史(1997)p.97、鳥羽
  8. ^ 明治44年11月7日付 海軍内令 第196号改正、海軍定員令「艦第15表 二等砲艦定員表 其2」。
  9. ^ a b #M44公文備考66/設置改装及兵装(2)コマ14
  10. ^ a b #M44公文備考66/設置改装及兵装(2)コマ15
  11. ^ a b 日本海軍艦船名考 1928, pp. 182–183、鳥羽 とば Toba.
  12. ^ a b c d e f g #銘銘伝(2014)pp.244-245、鳥羽(とば)
  13. ^ a b c d e f #帝国海軍機関史(1975)下巻p.401。
  14. ^ #T2公文備考35/上揚子江溯江報告(鳥羽)(6)コマ37、重慶地方警部任務中機関動作表。
  15. ^ a b c #M44公文備考20/鳥羽製造命令及予算(2)コマ19-21、明治43年3月25日官房機密第157号「浅喫水砲艦兵装変更ノ件」
  16. ^ #戦史叢書31海軍軍戦備1付表第二その一「大正十二年三月調艦艇要目等一覧表 その一 軍艦」
  17. ^ #戦史叢書31海軍軍戦備1付表第三その一「昭和六年三月調艦艇要目等一覧表 その一 軍艦」
  18. ^ a b #M44公文備考20/鳥羽製造命令及予算(1)コマ13-18、明治43年官房機密第42号「浅喫水砲艦製造ノ件」
  19. ^ a b c #M44公文備考20/鳥羽製造命令及予算(1)コマ3-8、明治43年官房機密第42号の3「浅喫水砲艦製造費ノ件」
  20. ^ #M44達/11月コマ22、明治44年11月7日達第121号
  21. ^ #M44達/11月コマ22、明治44年11月7日達第122号
  22. ^ #M44公文備考20/鳥羽進水式関係コマ9、明治44年11月7日電報「午前八時三十分鳥羽無事進水ス」
  23. ^ #M44公文備考20/鳥羽進水式関係コマ2、明治44年10月23日佐鎮第1013号の2
  24. ^ 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、102ページ
  25. ^ 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、110ページ
  26. ^ a b c 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、111ページ
  27. ^ 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、111-112ページ
  28. ^ 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、112ページ
  29. ^ a b 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、113ページ
  30. ^ 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、113-114ページ
  31. ^ 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、114ページ
  32. ^ 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、115ページ
  33. ^ a b c 戦史叢書第72巻 中国方面海軍作戦<1>昭和十三年四月まで、120ページ
  34. ^ 『官報』第1750号、大正7年6月4日。
  35. ^ a b 大正8年3月3日付 官報第1972号。国立国会図書館デジタルコレクション 永続的識別子 info:ndljp/pid/2954086 で閲覧可能。
  36. ^ a b 『官報』第1992号、大正8年3月27日。
  37. ^ a b 『官報』第2501号、大正9年12月2日。
  38. ^ a b 大正10年10月7日付 官報第2756号。国立国会図書館デジタルコレクション 永続的識別子 info:ndljp/pid/2954871 で閲覧可能。
  39. ^ a b 大正12年8月14日付 官報第3312号。国立国会図書館デジタルコレクション 永続的識別子 info:ndljp/pid/2955435 で閲覧可能。
  40. ^ 『官報』第3505号、大正13年5月2日。
  41. ^ 『官報』第3982号、大正14年12月2日。
  42. ^ 『官報』第279号、昭和2年12月2日。
  43. ^ 『官報』第878号、昭和4年12月2日。
  44. ^ 『官報』第1179号、昭和5年12月2日。
  45. ^ 昭和5年12月2日付 官報第1179号。国立国会図書館デジタルコレクション 永続的識別子 info:ndljp/pid/2957646 で閲覧可能。
  46. ^ a b 昭和7年5月3日付 官報第1599号。国立国会図書館デジタルコレクション 永続的識別子 info:ndljp/pid/2958070 で閲覧可能。
  47. ^ 『官報』第1778号、昭和7年12月2日。
  48. ^ 『官報』第2353号、昭和9年11月2日。
  49. ^ a b 『官報』第2651号、昭和10年11月2日。
  50. ^ 『官報』第2976号、昭和11年12月2日。
  51. ^ a b 昭和15年10月15日付 海軍辞令公報 (部内限) 第543号」 アジア歴史資料センター Ref.C13072079000 
  52. ^ a b 昭和16年8月20日付 海軍辞令公報 (部内限) 第695号」 アジア歴史資料センター Ref.C13072081800 
  53. ^ a b 昭和18年6月21日付 海軍辞令公報 (部内限) 第1152号」 アジア歴史資料センター Ref.C13072091700 
  54. ^ 昭和19年10月1日付 海軍大臣官房 官房人機密第1805号。
  55. ^ 昭和20年8月27日付 秘海軍辞令公報 甲 第1897号」 アジア歴史資料センター Ref.C13072107000 
  56. ^ #M44達/11月コマ22、明治44年11月7日達第123号
  57. ^ #M44達/12月コマ1、明治44年12月4日達第130号。同コマ2、正誤。





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