魚雷 概要

魚雷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 10:14 UTC 版)

概要

開発当初の魚雷は信頼性が低かったが、航走距離の延伸、命中率を向上させるために多くの技術改良がなされる一方で、その防御方法も編み出された。初期の魚雷は単純なジャイロ誘導であり、直進することしかできなかった。当時は低い命中率を補うため同時に複数の魚雷を状に発射し、いずれか1本でも命中することを期待する戦術を採っていた(通常、商船など低速な目標に対しては1-2本だが、軍艦などの高速な目標に対しては4-6本発射していた)。第二次世界大戦時から、艦船が出す音響などを感知して追跡するホーミング魚雷の開発・配備が進んだ。

魚雷の発射にはいくつかの方法がある。潜水艦においては魚雷発射管を用い、管に装填した魚雷を高圧空気または水圧で押し出す。潜水艦の運動性能が低かった時代[いつ?]には、艦首と艦尾に発射管を装備しているのが一般的であった。潜水艦の速度が向上した現在では、対戦する艦船に近距離追尾される状況が減ったので、艦首だけに装備することがほとんどである。

水上艦においては、喫水線下(第一次世界大戦頃までの戦艦)または甲板(第二次世界大戦頃までの巡洋艦駆逐艦)、艦首付近(初期の小型艇)に設置された魚雷発射管を用いることが一般的であった。魚雷艇(PTボート、Sボート)などでは、甲板上から側方や後方へ落射させるものもあった。航空機からの発射では、第二次世界大戦時は飛行する航空機(雷撃機)から投下する方法が主であった。 第二次世界大戦時においては、艦艇への攻撃力として高く期待されていたため、各国において威力向上・誘導方法の向上が検討されており、現在のミサイルに近い高価・高度な兵器として扱われた。

反面、魚雷は艦船にとって防御上の弱点にもなり得た。魚雷兵装は甲板上に合計数百キログラムから数トンにもなる爆薬がほぼ無防備に置かれている状態であり、特に装甲防御を持たない駆逐艦では機銃や砲弾破片程度でも魚雷の弾頭が爆発する危険があり、第二次世界大戦では搭載魚雷の爆発による轟沈艦が多数出ている。戦艦の一部に装備されていた魚雷発射管は戦間期に撤去が進み、巡洋艦の中には魚雷が弱点となることを嫌って搭載しない艦も多かった。

第二次世界大戦頃までは一部の海岸防衛施設にも配備され、実戦で戦果を挙げた例もある(オスロフィヨルドの戦い)。

P-3哨戒機のウエポンベイに搭載されたMk54魚雷

現代では甲板上の魚雷発射管から水中に向けて射出する従来の方法に加え、魚雷にロケットエンジンを装着したアスロックなどの対潜ミサイルをミサイル発射装置で発射する方法や、ヘリコプター対潜哨戒機等で魚雷を投下する方法が採られている。これは対潜前投兵器の発展と見ることもでき、艦船から自由自在な位置に誘導魚雷を投下する手法の一つでもある。対潜ミサイルや航空機から投下された魚雷はパラシュートを装着した状態で落下し、軟着水した後に目標の追尾を開始する。

現代の魚雷は、主に対潜水艦戦を想定して製作されており、音波を利用した誘導装置を搭載している。また有線誘導型も利用されている。

魚雷の対抗手段としてはデコイが主流であるが、魚雷迎撃用の魚雷も研究されている[2]


注釈

  1. ^ 海洋障害物の除去などに用いられることはほとんどない
  2. ^ Torpedo, p. 171によれば攻撃は1月25日で、沈められたのは国税庁の汽船「Intikbah」
  3. ^ 小室直樹 日下公人『大東亜戦争、こうすれば勝てた』117~118頁によると、澤地久枝は雷爆転装はなかったことを突き止めたという。

出典

  1. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典【魚雷】
  2. ^ a b 世界初 魚雷迎撃魚雷「シースパイダー」あらわる 潜水艦と水上艦の戦い 変わるのか? サイト:乗り物ニュース 著; 稲葉義泰(軍事ライター) 更新日:2019.12.15
  3. ^ torpedo サイト:Online Etymology Dictionary
  4. ^ 新見志朗『軍艦と装甲』潮書房光人社、2016年、p.74
  5. ^ Delgado, James P. (2011). Silent Killers: Submarines and Underwater Warfare. Osprey Publishing. pp. 74. ISBN 978-1-84908-365-2 
  6. ^ Polutov, Andrey V.「ソ連/ロシア駆逐艦建造史 (第1回)」『世界の艦船』第755号、海人社、2012年2月、187-193頁、NAID 40019142092 
  7. ^ Hughes, Thomas Parke. American genesis: a century of invention and technological enthusiasm, 1870?1970, p. 127. University of Chicago Press, 2004. ISBN 0226359271
  8. ^ Stoff, Joshua (2001). Historic Aircraft and Spacecraft in the Cradle of Aviation Museum. Courier Dover Publications. p. 16. ISBN 0486420418. https://books.google.ca/books?id=DANK-SZZh7YC&pg=PA16&lpg=PA16&dq=modern+aerial+torpedo&source=bl&ots=NJ4S4lYbJZ&sig=3mar-lBQUmNu8y8dJfDmFJ8OXGc&hl=en&ei=ORTGStrOJ4LY8Aa7tehC&sa=X&oi=book_result&ct=result#v=onepage&q=modern%20aerial%20torpedo&f=false 2010年2月22日閲覧。 
  9. ^ a b 魚雷技術
  10. ^ 板倉光馬 「あゝ伊号潜水艦―海に生きた強者の青春記録」光人社 ISBN 9784769820055
  11. ^ Blair, p.30-1.
  12. ^ ロシアが誇る「無敵」核兵器をアメリカは撃ち落とせない『ニューズウィーク』日本版(2018年3月7日)2018年4月18日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「魚雷」の関連用語

魚雷のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



魚雷のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの魚雷 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS