電子メール 問題

電子メール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 17:17 UTC 版)

問題

トラフィックの増大と配送遅延

電子メールのトラフィックの多くは実はスパムメールである。バラクーダネットワークスの報告[36]によると、2007年中に送信されたメールのうち90%から95%がスパムメールであったという。大量に送信されるこれらのスパムメールはメールサーバに過大な負荷を与え、メール配送遅延の原因となることもある。たとえば2004年7月下旬から8月上旬にかけて、大手インターネットプロバイダ@niftyで、海外から大量に送信されたスパムメールによりメールサーバに断続的な負担が掛かり、メールの受信に支障が生じる状態が続いた[37]。(2010年10月ロシアで摘発されたスパムメール業者は1日500億通を発信していたという。)

また近年[いつ?]トロイの木馬などのマルウェアに感染したコンピュータ群によって引き起こされるDDoS型のスパム送信の割合が急激に増加しており、ますますメールサーバに多大な負荷を及ぼすものとされている(→ボットネットを参照)。

スパム以外のトラフィック増大要因として、いわゆる「年賀メール」(元旦前後に発生する大量の挨拶メール)の類もある。特に携帯電話等のメール機能は「即時の意思疏通を図る手段」としてチャット的に利用される場合があるため、一般の電子メールに比べ大量かつ集中的に送信されやすく、これを原因とした配送遅延や輻輳が問題になる場合もある。この対策として、各通信事業者が年越時間帯の利用自粛を呼び掛けたり発信制限を行ったりすることもある。かつてパソコン通信が全盛だった時代には、処理の集中を防ぐため、あらかじめ年賀メールをサーバに予約送信しておき元旦に順次配送するといったサービスも提供されていた。

なお、電子メールの配送システムの多くは、メールサーバに一定以上の負荷が掛かると送信を保留し一旦スプールに保存し後に(例えば数時間後に)再送信を試みる仕組みになっているため、トラフィックが一定量を超えると配送の極端な遅延が起こる。この遅延はメール1通毎に起こるため、同時期に送ったメールであっても、あるものは数秒で届きあるものは数時間で届くということになり、これを理解していない利用者の間ではメールを「送った」「送らない」で揉める恐れもある。

一時的なトラフィックの増大でスプールに保存された保留メールは、多くの場合時間の経過と共に処理され正常に戻るが、メールサーバの能力が十分でないと再送処理自体が間に合わなくなり、送信者に失敗通知が返送されることもある。なお、失敗通知すら返送されず「消滅」することは原理的にありえない。メールサーバは能力が追い付かない場合メールの受信(SMTPコネクション)自体を拒否するからである。よく年賀メール等で「トラフィック増大が原因であるプロバイダのメールの紛失が起きた」と、あたかも不可抗力であるが如き報道を目にするが、正確にはそのプロバイダのメールサーバの管理が適切でなく、混雑時の処理が正しく動作していないシステム不良である。[要出典]

同時多発テロ時には、ニューヨーク周辺間のメールが1日遅延するなどした他、2009年には南アフリカケープタウンヨハネスブルグ間700kmで実験が行われ、電子メールより伝書鳩の方が早く情報を伝達できた。

スパムメール対策の問題点

スパムメール対策としてサーバ上、クライアント上でのフィルタリングが普及してきたが、誤検知により通常のメールがスパムであると判断されてしまい、不着となる問題が増えている(→電子メールフィルタリングを参照)。

コミュニケーション上の問題

文字だけのやりとりに見られる問題(炎上Flaming)は電子メールにおいても見られる。メールの真意、感情が相手に伝わらず、度々揉め事に発展するケースが挙げられている。英語圏では、メールの真意を読み取り間違え、感情に任せて送るメールの呼称(スラング)にFlame Mailというものがある。

安全性の問題

電子メールにおけるテキストベースな平文は、サーバーネットワーク上でスニッフィング(傍受)される可能性が高くセキュリティーの観点から好ましいとは言えない。フィル・ジマーマンが開発し、公開した暗号ソフトウェア(Pretty Good Privacy:PGP)のプラグインなどを導入することで安全性を高められる。


注釈

  1. ^ ここでいう「メールアドレス」は、技術的にはメールボックス・リスト (mailbox-list) という。BCC、CC、Reply-To、Toも同様。
  2. ^ ここでいう「メールアドレス」は、技術的にはメールボックス (mailbox) という。
  3. ^ : carbon copy
  4. ^ : blind carbon copy
  5. ^ : black carbon copy
  6. ^ : forward

出典

  1. ^ RFC 5321 - Simple Mail Transfer Protocol”. Network Working Group (2008年10月). 2010年2月閲覧。
  2. ^ OCN公式ページ
  3. ^ 会員サポート…基本メールボックスの容量と保管期間
  4. ^ BIGLOBEメールの仕様
  5. ^ 「最大 50 MB のメールを受信できます。[1]
  6. ^ 「注: 25 MB を超える添付ファイルを送信するには、Google ドライブや他のファイル共有サービスを使用してください。[2]
  7. ^ a b JUNET利用の手引(第1版)
  8. ^ Using International Characters in Internet Mail[リンク切れ]
  9. ^ a b c d e JISX0032 1999.
  10. ^ The Watsons: IBM's Troubled Legacy
  11. ^ See File:Gestapo anti-gay telex.jpg
  12. ^ Telex and TWX History、ドナルド・E・キンバーリン、1986年
  13. ^ Ron Brown, Fax invades the mail market, New Scientist, Vol. 56, No. 817 (Oct., 26, 1972), pages 218-221.
  14. ^ Herbert P. Luckett, What's News: Electronic-mail delivery gets started, Popular Science, Vol. 202, No. 3 (March 1973); page 85
  15. ^ a b USPS Support Panel, Louis T Rader, Chair, Chapter IV: Systems, Electronic Message Systems for the U.S. Postal Service, National Academy of Sciences, Washington, D.C., 1976; pages 27-35.
  16. ^ "CTSS, Compatible Time-Sharing System" (September 4, 2006), サウスアラバマ大学英語版, USA-CTSS.
  17. ^ Tom Van Vleck, "The IBM 7094 and CTSS" (September 10, 2004), Multicians.org (Multics), web: Multicians-7094.
  18. ^ IBM (pdf). 1440/1460 Administrative Terminal System (1440-CX-07X and 1460-CX-08X) Application Description (Second Edition ed.). IBM. H20-0129-1. http://bitsavers.informatik.uni-stuttgart.de/pdf/ibm/144x/H20-0185-1_1440_ATS_termOpe.pdf 2013年2月22日閲覧。 
  19. ^ IBM. System/36O Administrative Terminal System DOS (ATS/DOS) Program Description Manual. IBM. H20-0508 
  20. ^ IBM. System/360 Administrative Terminal System-OS (ATS/OS) Application Description Manual. IBM. H20-0297 
  21. ^ Version 3 Unix mail(1) manual page from 10/25/1972
  22. ^ Version 6 Unix mail(1) manual page from 2/21/1975
  23. ^ APL Quotations and Anecdotes, including Leslie Goldsmith's story of the Mailbox
  24. ^ History of the Internet, including Carter/Mondale use of email
  25. ^ David Wooley, PLATO: The Emergence of an Online Community, 1994.
  26. ^ Stromberg, Joseph (2012年2月22日). “A Piece of Email History Comes to the American History Museum”. スミソニアン博物館. 2012年6月11日閲覧。
  27. ^ "...PROFS changed the way organizations communicated, collaborated and approached work when it was introduced by IBM’s Data Processing Division in 1981...", IBM.com
  28. ^ "1982 - The National Security Council (NSC) staff at the White House acquires a prototype electronic mail system, from IBM, called the Professional Office System (PROFs)....", fas.org
  29. ^ Gordon Bell's timeline of Digital Equipment Corporation
  30. ^ Tom Van Vleck (2001年2月1日). “The History of Electronic Mail”. 2008年2月21日閲覧。
  31. ^ Ray Tomlinson. “The First Network Email”. 2008年2月21日閲覧。
  32. ^ Version 7 Unix manual: "UUCP Implementation Description" by D. A. Nowitz, and "A Dial-Up Network of UNIX Systems" by D. A. Nowitz and M. E. Lesk
  33. ^ "BITNET History", livinginternet.com
  34. ^ rfc976 https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc976 UUCP Mail Interchange Format Standard 5節“Summary”に、( ! でホスト名をつないでメールアドレスを表現する) bang path の説明がある。bang path の例としては hosta!hostb!user などがある。
  35. ^ 木村広, 田井村明博「電子メール・電子ニュースの使い方」『長崎大学教養部紀要 自然科学篇』第33巻第1号、長崎大学教養部、1992年7月、65-109頁、ISSN 02871319NAID 120000916619 、の「5.1モデム(デジタル電話)とパソコン間のセットアップ」など]
  36. ^ 勝村幸博 (2007年12月14日). “「メールの95%は『迷惑メール』だった」、2007年のスパム動向”. ITpro. 日経BP社. 2008年2月21日閲覧。
  37. ^ 会員サポート > 大量スパムメールによるメール遅延、ならびに対策について”. @nifty. ニフティ (2004年8月13日). 2008年2月21日閲覧。[リンク切れ]





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