著作権表示 さまざまな著作権表示

著作権表示

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/17 01:54 UTC 版)

さまざまな著作権表示

さまざまな著作権表示がある。

なお、「®」(マルR)はその直前の語が登録商標であることを示す表示で、著作権とは無関係である。

℗(マルP)

「℗」(マルP)表示は、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」(レコード保護条約)第5条で定められている[7]原盤権」による保護を受けるための表示である。Pは、「レコード」を意味するphonogramの頭文字。なお、「レコード」には、CDカセットなどのあらゆる音楽用メディアが含まれる。

原盤権とは、著作権法上の用語では「著作隣接権」のうちの「レコード製作者の権利」であり、いわゆる「マスター音源」の製作者が有する権利である。著作権とは異なる内容の権利である(ただし、アメリカ合衆国著作権法には著作隣接権という概念はなく、原盤権は copyright として扱われる)が、日本では著作権法の中でその権利内容が規定されている。

「©」同様、無方式主義国のレコードが方式主義国で保護を受けるための表示である。ただし、原盤権についても現在ではほとんどの国が無方式主義である。

「℗」記号と、最初の発行年を、レコードまたはその容器包装(ジャケットなど)に表示する。「©」表示と違い、レコードまたはその容器包装の表示から原盤権者が明らかなときは、「℗」表示自体に名前は必要ない。

著作権者と原盤権者が同一である場合には、「℗&© ……」とまとめて表示することもある。

All rights reserved

しばしば著作権表示に書かれる「All rights reserved」は、著作権の保護を受けるための「著作権表示」ではあるが、万国著作権条約とは無関係である。1910年にアメリカ合衆国など方式主義諸国が調印したブエノスアイレス条約第3条で、

The acknowledgement of a copyright obtained in one State, in conformity with its laws, shall produce its

effects of full right, in all the other States, without the necessity of complying with any other formality, provided always there shall appear in the work a statement that indicates the reservation of the property right.[8]

要約: 他の加盟国で著作権保護を受けるには「権利を留保する」という趣旨の表示が必要

と定められていたことによる。この表示により、ブエノスアイレス条約加盟国間で著作権が保護される。

そのため、アメリカのような万国著作権条約加盟国かつブエノスアイレス条約加盟国では、「© 権利者名 発行年 All rights reserved」などという著作権表示がされる。これにより、万国著作権条約加盟国とブエノスアイレス条約加盟国の双方で著作権の保護が受けられる。


版権所有

日本の版権法(明治26年法律第16号)5条で定められていた表記。版権法では、版権(現行の出版権に相当)について保護を受けるためには、内務省に対する登録とともに、出版する複製物に「版権所有」の文字を記載する必要があった。

旧著作権法(明治32年法律第39号)により、著作権の発生要件に関して無方式主義に移行したため、この表記の意味は失われた。


  1. ^ 発行年と著作権者名の表示の順番は入れ替えても良い、ということ。
  2. ^ インクや紙や活字の状態など様々なことが原因で印刷の質が低下したり表示の活字のサイズが小さい場合、©マークが潰れてしまって、ただの「・」(テン)になってしまうことがあるため。また印刷がうまくできても、近視・老視その他のことが原因で視力が良好ではない人々(世の中のかなりの割合の人々)にとっては、©マークはかなり認識しづらい小さな記号でありしばしば「・」に見えるため。つまり「・2017 John Smith」などと見えてしまい、これでは見る人々に著作権表示とは理解してもらえないため。
  3. ^ 原文の英語で、strongly recommendedと表現されている。
  4. ^ 著作権を侵害する複製物が世の中に出回っても、通常、複製物には著作権侵害した人物の名はわざわざ表記されていないので、誰がその複製を作成したのか つきとめるのは大抵は困難であり、提訴することも困難である。仮に、運良く複製物を作成したと思われる人物をつきとめられた場合でも、その人物を被告として提訴して裁判を(数ヶ月や数年かけて)行っている間に、別の誰かがすでに世の中に散布されてしまった(著作権表示の無い)複製物を見て、また複製物が作成されて配布されてしまうという望ましくないことが起きがちで、あらたな(人物によって行われたと推定される)複製物を見つけるたびに疑わしき人物を探しては個別に提訴するという「いたちごっこ」の泥沼状態に陥り、著作権者は際限なく提訴を繰り返すことができるわけもなく、複製の連鎖を止められなくなるため。また、あるひとつの裁判で裁判官がたとえどのような判決を下しても、それは個別の被疑者に対する個別の判決であって、次々と新たに現れる当該作品の複製物作成者を止めることができない、たとえ裁判官がどのように判決文を書いても現実世界を止められない、という事態に陥るからである。一方、作品に著作権表示をすると、人々に対して、作者はこの作品については勝手に複製物が作られることを明らかに望んでいない、と気づかせることができ、広く世の人々に対して心理的なブレーキをかけて複製物の作成を抑制することができるのである。
  5. ^ もちろん、最初から自分の作品の著作権を護る気がまったく無いような人は、著作権表示をしなくてもよい。著作権表示の使用は、「義務」ではなく、「任意」なのである。ちょうど、玄関のドアに錠前を設置し施錠することは「義務」ではなく「任意」であるが、一般に、施錠することが(警察などによって)強く勧められ、ほとんどの人々が通常は施錠するが、一方で、空き巣や こそ泥 や強盗などに入ってもらってかまわないと考えている人の場合は施錠しない自由もある、というのと同様の論理構造になっている。
  6. ^ 実際、作品を公表した著作者には、そのような問い合わせがそれなりの頻度で来るものである。
  7. ^ また著作権表示をしておかないと、使用許可を求める人や著作権料を払って作品を使いたい人があてずっぽうに著作権者を探した結果、誤って、本当の著作権者ではない人に連絡をとってしまい、その者が真の著作権者のようなフリをしてお金を詐取してしまうということも起きる(現実世界では実際、その種の詐欺事件が、ときどき起きる)。
  8. ^ むしろ、著作権表示に関しては、いちいち許可を求めてはいけない。そんなことをしたら当局の人々は対応事務に追われ、迷惑する。
  1. ^ a b c d e f g h United States Copyright Office, "Copyright Notice"(アメリカ合衆国著作権局「著作権表示」)p.1
  2. ^ a b UK Intellectual Property Office, "Using Copyright Notices" イギリス著作権局「著作権表示の使用」
  3. ^ a b c d e f g United States Copyright Office, "Copyright Notice" pp.3-4 "Advantages to Using a Copyright Notice"(アメリカ合衆国著作権局「著作権表示」。「著作権表示を使用することの利点」の節)
  4. ^ Use of the notice informs the public that a work is protected by copyright, identifies the copyright owner, and shows the year of first publication. Furthermore, in the event that a work is infringed, if the work carries a proper notice, the court will not give any weight to a defendant's use of an innocent infringement defense—that is, to a claim that the defendant did not realize that the work was protected. An innocent infringement defense can result in a reduction in damages that the copyright owner would otherwise receive.
  5. ^ 日本弁理士会 関西会「著作権表示」
  6. ^ a b c d e f 安藤和宏 2018, p. 172.
  7. ^ 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約(日本語)
  8. ^ ブエノスアイレス条約原文(英語)
  9. ^ a b 文化庁『著作権法入門 2015-2016』著作権情報センター、2015年10月、72頁。ISBN 978-4-88526-081-0 
  10. ^ a b c 安藤和宏 2018, p. 174.
  11. ^ a b 安藤和宏 2018, p. 171.
  12. ^ 安藤和宏 2018, p. 170.
  13. ^ 安藤和宏 2018, p. 169.
  14. ^ 半田正夫 & 紋谷暢男 1989, p. 300.
  15. ^ 半田正夫 & 紋谷暢男 1989, p. 300-301.
  16. ^ 半田正夫 & 紋谷暢男 1989, p. 301.
  17. ^ 半田正夫 & 紋谷暢男 1989, p. 302.
  18. ^ 安藤和宏 2018, p. 173.
  19. ^ WIPO-Administered Treaties WIPO Bodies > Assembly (Berne Union)
  20. ^ 大阪高等裁判所判決 2007年10月02日 、平成19(ネ)713、『著作権に基づく差止請求権不存在確認請求控訴事件,同附帯控訴事件』。


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