出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/21 02:31 UTC 版)
確率変数の関数
実数のボレル可測関数 を実数値確率変数 X に適用すると、新たな確率変数 Y を定義することができる。Y の分布関数は、
である。
関数 g に逆関数 g−1 が定義可能であり、かつそれが増加関数かまたは減少関数である場合には、
上記の関係は以下のように展開できる。
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(g−1 が増加関数の場合),
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(g−1 が減少関数の場合).
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さらに、同じく g の可逆性に加えて微分可能性も仮定すると、両辺を y で微分することにより、確率密度関数の関係を下記のように記述できる。
g の逆関数が存在しない場合でも、それぞれの y が高々可算個の根を持つ場合(すなわち、y = g(xi) である xi の数が有限または可算無限の場合)には、上記の確率密度関数の関係は次のように一般化できる。
- ただし xi = gi−1(y)
この式は g が増加関数でなくとも成立する。
確率に対する公理的アプローチとしての測度論において、空間 Ω 上の確率変数 X およびボレル可測関数 を取る。可測関数を合成したものもまた可測である(しかし、g がルベーグ可測の場合はその限りではない)ため、Y = g(X) もまた空間 Ω 上の確率変数である。Y の分布を知るために、確率空間 (Ω, P) から への移行と同じ手順を利用できる。
例1
X を実数の連続確率分布とした時、Y = X2 とすると、
y < 0 の時は であるので、
- (ただし y < 0)である。
y ≥ 0 の時は であるので、
- (ただし y ≥ 0)である。
例2
x は、分布関数が
となる確率変数とする。ただし θ > 0 は固定されたパラメーターである。 確率変数 Y を とすると、
最後の表現は X の分布関数で計算できる。すなわち
-
例3
X を標準正規分布に従う確率変数であるとすると、その確率密度は下記の通りである。
確率変数 Y = X2 を考えると、上記の式を変数変換して確率密度を下記のように表すことができる。
この場合、Y の値は2つの X(正の値と負の値)に対応するので、変換は単調写像ではない。しかし、関数が対称であるので、両半分をそれぞれ変形することができる。すなわち、
である。この逆変換は、
であり、両辺を微分すると
である。従って、
これは自由度 1 のχ2分布である。