産女
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 06:20 UTC 版)
近年の事例
1984年(昭和59年)5月15日の午前7時25分、静岡市(現・静岡市葵区)産女(うぶめ)の県道で女性が運転する乗用車が集団登校中の児童の行列に突っ込み、児童数人を跳ね飛ばしてガードレールに激突した。加害者の証言によると、三つ辻の道路の左側に変な老婆が立っており、避けようとして事故になったと答えた。だがこの事故を目撃した児童はオートバイを追い越そうとして事故になったと証言し、老婆のことには言及していない。その土地は古来から産女新田と呼ばれていて、地名の由来は江戸時代に牧野喜藤兵衛という漂泊の者の妻が妊娠中に死に、その霊が何度も現れたため、その怨念を鎮めるため村人が産女明神として祀ったという縁起である。現在、産女明神には子安観音が安置されており、近隣の女性たちの安産の守護霊になっている[17]。この交通事故について民俗学者・宮田登は、産女という名の土地に現れた妖怪・ウブメが働きかけたことが事故の原因であり、ウブメのような妖怪変化があらわれる辻のもつ霊的な力が民間伝承として現代に出没していると語っている[17]。
東京都では、足立区の六ツ木交差点で交通事故に遭った産婦が、赤子を抱いた姿の霊となって現れ車を止めたといい、産女の目撃談とされた[18]。
参考文献
- 柳津町誌総説編p239-241
- 会津やないづの昔話(あかべこさくら会)p26-29
脚注
関連項目
- ^ 村上健司『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、56頁。
- ^ a b 京極夏彦・多田克己編著『妖怪図巻』国書刊行会、2000年、151-152頁。ISBN 978-4-336-04187-6。
- ^ a b 村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、74-75頁。ISBN 978-4-04-883926-6。
- ^ 中央大学 民俗研究会. “常民 26号 福島県大沼郡金山町 調査報告書”. 怪異・妖怪伝承データベース. 国際日本文化研究センター. 2008年12月8日閲覧。
- ^ a b 千葉幹夫『妖怪お化け雑学事典』講談社、1991年、69-70頁。ISBN 978-4-06-205172-9。
- ^ “阿蘇デジタル博物館民間伝承”. あそバーチャル体験ランド. 阿蘇テレワークセンター. 2008年12月8日閲覧。
- ^ 『日本妖怪大事典』、42頁。
- ^ a b 『日本妖怪大事典』、46-47頁。
- ^ 京極夏彦文・多田克己編『妖怪画本 狂歌百物語』国書刊行会、2008年、275-276頁。ISBN 978-4-3360-5055-7。
- ^ 人文社編集部『諸国怪談奇談集成 江戸諸国百物語 東日本編』人文社〈ものしりシリーズ〉、2005年、20頁。ISBN 978-4-7959-1955-6。
- ^ 志村有弘監修『図説 地図とあらすじで読む 日本の妖怪伝説』青春出版社、2008年、77頁。ISBN 978-4-413-00965-2。
- ^ 田中聡『江戸の妖怪事件簿』集英社〈集英社新書〉、2007年、147-149頁。ISBN 978-4-08-720398-1。
- ^ 桜井徳太郎編『民間信仰辞典』東京堂出版、1980年、39頁。ISBN 978-4-490-10137-9。
- ^ 『妖怪事典』57頁。
- ^ 宮田登『妖怪の民俗学・日本の見えない空間』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2002年、30-32頁。ISBN 978-4-480-08699-0。
- ^ 柳田國男『遠野物語・山の人生』岩波書店〈ワイド版岩波文庫〉、1993年、184-185頁。ISBN 978-4-00-007121-5。
- ^ a b 『妖怪の民俗学・日本の見えない空間』、156-161頁。
- ^ 山口敏太郎『江戸武蔵野妖怪図鑑』けやき出版、2002年、22頁。ISBN 978-4-87751-168-5。
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