猫又
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 03:45 UTC 版)
妖怪画
江戸時代には図鑑様式の妖怪絵巻が多く制作されており、猫又はそれらの絵巻でしばしば妖怪画の題材になっている。1737年(元文2年)刊行の『百怪図巻』などでは、人間女性の身なりをした猫又が三味線を奏でている姿が描かれているが、江戸時代当時は三味線の素材に雌のネコの皮が多く用いられていたため、猫又は三味線を奏でて同族を哀れむ歌を歌っている[1]、もしくは一種の皮肉などと解釈されている[13]。芸者の服装をしているのは、かつて芸者がネコと呼ばれたことと関連しているとの見方もある[13](冒頭の画像を参照)。
また1776年(安永5年)刊行の『画図百鬼夜行』では(右側の画像参照)、向かって左に障子から顔を出したネコ、向かって右には頭に手ぬぐいを乗せて縁側に手をついたネコ、中央には同じく手ぬぐいをかぶって2本脚で立ったネコが描かれており、それぞれ、普通のネコ、年季がたりないために2本脚で立つことが困難なネコ、さらに年を経て完全に2本脚で立つことのできたネコとして、普通のネコが年とともに猫又へ変化していく過程を描いたとものとも見られている[13]。また、アメリカ合衆国のボストン美術館にビゲロー・コレクション(浮世絵コレクション)として所蔵されている『百鬼夜行絵巻』にもほぼ同様の構図の猫又が描かれていることから、両者の関連性も指摘されている[14]。
仙狸
中国で「仙狸(せんり、「狸」は山猫の意)」という猫の妖怪が伝えられている。これは年を経た山猫が神通力を身につけた存在であり、美男美女に化けて人間の精気を吸うとされる[15][信頼性要検証]。
日本の猫又の伝承は、この仙狸を起源とする説もある[16]。
その他
- 不忍通りには、「猫又坂(猫貍坂・猫股坂)」という坂がある。
- 新潟県上越市の伝承では、中ノ俣の村に何千年も生きた猫又が暴れていたので、吉十郎という男が退治したが、その死体は高田城下の人々に見せられた。のち、「猫又塚」が作られ、今は「猫又稲荷神社」も建てられた(死後の祟りを恐れた伝承の一)。
- 富山県の猫又山山麓には、黒部峡谷鉄道の猫又駅がある。
- 猫股の火
- ^ a b c d e 多田 2000, pp. 170–171
- ^ a b c d 笹間 1994, pp. 127–12
- ^ a b c 石川 1986, p. 696
- ^ a b 平岩 1992, pp. 36–66
- ^ 荻田安静編著 著「宿直草」、高田衛編・校中 編『江戸怪談集』 上、岩波書店〈岩波文庫〉、1989年(原著1677年)、121-124頁。ISBN 978-4-00-302571-0。
- ^ 編著者不詳 著「曾呂利物語」、高田衛編・校中 編『江戸怪談集』 中、岩波書店〈岩波文庫〉、1989年(原著1663年)、57-58頁。ISBN 978-4-00-302572-7。
- ^ 谷川健一『続 日本の地名』岩波書店〈岩波新書〉、1998年、146頁。ISBN 978-4-00-430559-0。
- ^ 日野巌『動物妖怪譚』 下、中央公論新社〈中公文庫〉、2006年(原著1926年)、158-159頁。ISBN 978-4-12-204792-1。
- ^ “ネコのうんちく”. カフェ にゃんまる. 2013年12月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月23日閲覧。
- ^ 佐野賢治他 著、桜井徳太郎 編『民間信仰辞典』東京堂出版、1980年、223頁。ISBN 978-4-490-10137-9。
- ^ 京極夏彦 著「妖怪の宴 妖怪の匣 第6回」、郡司聡他 編『怪』 vol.0029、角川書店〈カドカワムック〉、2010年、122頁。ISBN 978-4-04-885055-1。
- ^ Hartwell, Sarah (2001-2009). “Winged Cats, What are they?” (英語). Cat Resource Archive. Messybeast.com. 2010年4月26日閲覧。
- ^ a b c 古山他 2005, p. 155
- ^ 湯本豪一編著『続・妖怪図巻』国書刊行会、2006年、161-165頁。ISBN 978-4-336-04778-6。
- ^ 新紀元社編集部 編『真・女神転生悪魔事典』健部伸明監修、新紀元社〈Truth In Fantasy〉、2003年、94頁。ISBN 978-4-7753-0149-4。
- ^ 『世界の幻獣エンサイクロペディア』一条真也監修、講談社、2010年、194頁。ISBN 978-4-06-215952-4。
猫又と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
- >> 「猫又」を含む用語の索引
- 猫又のページへのリンク