潮汐 生物との関係

潮汐

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 08:45 UTC 版)

生物との関係

海と陸とでは、棲息する生物相が全く異なる。海岸線では干潮時には海水から顔を出し、満潮時には海水中に没する地域があり、これを潮間帯という。潮間帯は生物にとっては海の区域でありながら、一時的に陸になる区域であり、独特の生物相を持つ。潮間帯の直下、低潮線の下を潮下帯、潮間帯のすぐ上、高潮線の上を潮上帯と言う。

潮の満ち引きは、当然海に住む生き物達にも大きな影響を与える。総じて彼らは大潮の時に産卵することが知られている。また、大潮になると魚類の活性が上がるとも言われており、アメリカで釣り大会を行う場合は大潮の週末と決まっている。日本の釣具店にはほぼ必ず潮見表が置いてあり、潮見表を元に釣りに出かける釣り客も多い。

気象との関係

地震との関係

潮汐は地震の発生と有意な関係があるとされる[16][17]。潮汐力が地球内部の岩盤にも影響を与え上下伸縮を引き起こしているためで、特に断層の方向と地球潮汐の方向が一致し力が最大となったときに、地殻変動ひずみの限界と重なり最後の一押しとなって地震を誘発するものと考えられている[18]東京大学の研究チームも1万件以上の地震データから、潮汐力の強い時期に巨大地震の発生確率が上昇するという研究結果を英科学誌ネイチャー ジオサイエンス」に発表しており、同研究では小さな岩石の破壊が潮汐力によって大規模な破壊へと発展していく可能性が示唆されている[19][20]。潮汐が地震の引き金になったとみられるケースは世界における地震全体の5%程と推定されている[21]

東北地方太平洋沖地震

2011年に発生した東北地方太平洋沖地震誘発地震とみられている長野県北部地震では、潮汐に関係するとみられる地震が最大規模となった M 6.7 の地震を含む全体の約50%という非常に高い相関で確認された[21]

また、本震発生以降に1976年から2011年までの期間に東北地方太平洋沖地震の震源域で発生した Mw 5 以上の地震と潮汐力の関係をあらためて調査したところ、1976年からの約25年間は相関関係がなかった。しかし、2000年頃より次第に相関関係が現れ、その後、本震が発生した2011年3月11日までは明瞭な傾向が出現し、断層にかかる力が最大になる時間帯に地震が発生していた。特に、前震とされる3月9日11時45分に発生した地震の震源と3月11日の本震破壊開始点の間の領域付近には強い相関が現れていたが、3月11日以降は潮汐力との関係は見られなくなった[18]


注釈

  1. ^ なお、天体表面の液体だけでなく、気体(大気大気潮汐)にも影響は出ている。また、厳密に言うと、天体の固体部分にも影響は出ており、地球でも(固体地球でも)影響は起きている(地球潮汐)。

出典

  1. ^ a b 『日本大百科全書』(ニッポニカ)
  2. ^ a b c 佐藤、p.135
  3. ^ a b 佐藤、p.136
  4. ^ a b 柳、pp.17-18
  5. ^ a b 柳、pp.18-20
  6. ^ 柳、p.20
  7. ^ 柳、p.24
  8. ^ 柳、p.40
  9. ^ 柳、pp.32-33,40
  10. ^ 柳、pp.23-24
  11. ^ クランシー、p.12
  12. ^ 柳、pp.74-75
  13. ^ クランシー、p.23
  14. ^ 柳、pp.58-60
  15. ^ 柳、pp.66-67
  16. ^ 潮汐は地震を引き起こすのか?”. www-solid.eps.s.u-tokyo.ac.jp. 2024年1月1日閲覧。
  17. ^ 鶴岡弘, 大竹政和、地震発生における地球潮汐の影響 数値シミュレーションによるアプローチ 『地学雑誌』 2002年 111巻 2号 p.256-267, doi:10.5026/jgeography.111.2_256
  18. ^ a b なゐふる91号(2012年10月) (PDF) 日本地震学会
  19. ^ 巨大地震、大潮の時期に発生確率上昇か 東大研究(AFPBB News 2016年9月13日)
  20. ^ 月の引力、大地震と関係か 東大チーム(日本経済新聞 2016年9月13日)
  21. ^ a b 長野県栄村で地震で多発、「潮汐」引き金 地殻変動と重なる 産総研分析(MSN産経ニュース/産経新聞 2012年3月19日)/同記事の夕刊フジ版引用(阿修羅)
  22. ^ 川島秀一『追込漁(おいこみりょう)』<ものと人間の文化史> 法政大学出版局 2008年、ISBN 9784588214219 pp.173,285-288.
  23. ^ 原田英司「<研究・技術報告>実験水槽における水位変化の簡便な自動制御 : 人工潮汐」『瀬戸臨海実験所年報』第2号、京都大学理学部附属瀬戸臨海実験所、1988年3月、25-27頁、NAID 120005327054 


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