月の植民 構造物

月の植民

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/27 08:53 UTC 版)

構造物

居住地

インフレータブル型のモジュールによる月面基地のコンセプト

居住地については月面基地の項目も参照

居住モジュールに関しては多数の提案がある。そのデザインは、月に関する人間の知識が成長するに従い、また科学技術による可能性の変化により、発展してきた。居住地の提案は、実際の宇宙船の着陸船や使用済み燃料タンクから、様々な形の空気圧で膨らませる(インフレータブル型の)モジュールにまで及ぶ。早くから、月の環境のいくつかの危険(激しい温度変化や、大気や磁気圏の欠如(高いレベルの放射線微小隕石を意味する)、それに長い夜)が認識され考慮されるようになった。

いくつかの提案では月の地下にコロニーを建設し、放射線や微小隕石からの保護を得ようとしている。そういった基地の建設はおそらくより複雑だろう。地球から運ばれる最初の機械の一つは、居住棟を掘るための遠隔操作のボーリングマシンかもしれない。かつて作られたこともあるが、いくつかの種類の硬化剤、たとえば利用可能な資源から作れるコンクリートに似た物質など、が崩落を避けるために必要となるだろう[19]。また、元の位置に多孔性の断熱材を作って使用することもできるだろう。インフレータブル型でセルフシーリング機能を持った居住地も、空気を保つために設置されるかもしれない。掘る以外の手段としては、月に存在するかもしれない地下の枯れた巨大な溶岩洞が考えられる[20]2009年かぐやの観測データの分析により、溶岩洞の入り口と思われる縦穴の存在が確認されている[21]

おそらく最も簡単な方法は、地表に月基地を建設し、月の土でモジュールを覆うことである。他に、月基地を地表に建設しその他の方法でも保護する、たとえば放射線や微小隕石への防御を改良した、考えも出されている。人工の磁場は、深宇宙の長距離の有人ミッションで放射線への防御策として提案されているが、類似の技術は月コロニーでも利用可能かもしれない。

エネルギー

月基地では燃料の生産から通信、生命維持装置に科学研究まで、様々な作業のために電力を必要とするだろう。

原子力

核分裂炉は、おそらく必要なエネルギーの大部分を満たすことができるだろう。核融合炉と比べての利点は、それが既に存在する技術であるということである。核融合炉の利点は、核融合で要求されるヘリウム3が月には豊富だということである。しかしながら、信頼でき、効率的な核融合炉は、月の植民の時点では利用できないだろう。

原子力電池(RTG)は太陽エネルギーによるコロニーでのバックアップと、緊急時のエネルギー源として使用できる。

太陽エネルギー

太陽エネルギーは有力な候補である。それは月基地の比較的安いエネルギー供給源であることが証明されており、特に太陽電池パネルの製造に必要な原材料が採掘できることがわかってからは、より注目が集まっている。しかしながら、月の長い夜(地球の14日に相当)は太陽エネルギーの欠点となる。これは、幾つかの発電所を建て、少なくとも一箇所に常に日光が当たっているようにすることで、解決するかもしれない。他の可能性のある方法は、発電所を常に、またはほとんどの期間日光が当たる場所、たとえば月の南極付近にあるマラペール山や、北極付近のピアリークレーターの縁、に建てることである。

太陽エネルギーを変換するのはシリコン太陽電池である必要はない。他にも、熱機関による発電機を動かすために、日向と日陰の大きな温度差を使うことも可能であるかもしれない。また、強力な太陽光を直接や鏡により中継して、照明や農業、熱加工に使うこともできる。さらに、焦点を合わせたときの熱は、月表面の資源から様々な元素を取り出す材料加工に利用することもできる。

燃料電池

スペースシャトル燃料電池は、17日間確実に動作している。月では、14.75日 - 月の夜の長さの期間、だけ必要となるだろう。次の月の夜に備え、昼の間に太陽パネル(太陽電池または太陽熱発電)から必要な電力を供給して、水(燃料電池の廃棄物)を水素と酸素に戻しておくことはできるだろう。

現在の燃料電池の技術は、シャトルで使われたものよりはるかに発展 - 固体高分子形燃料電池は軽く熱の発生も少ない(小さく軽い放熱器で済む) - しており、より経済的に地球から打ち上げることができる。

初期の基地やコロニーにおいては、シャトルの燃料電池でも十分満足できるだろう。


  1. ^ Lunar Base Designsインターネットアーカイブ
  2. ^ Outer-space sex carries complications”. msnbc.msn.com. 2008年2月18日閲覧。
  3. ^ Known effects of long-term space flights on the human body”. racetomars.com. 2008年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月16日閲覧。
  4. ^ Binary asteroid in Jupiter's orbit may be icy comet from solar system's infancy”. berkeley.edu. 2008年2月16日閲覧。
  5. ^ 月面の宇宙放射線、ISSの2.6倍 「滞在2か月が限度」”. AFP (2020年9月26日). 2020年9月27日閲覧。
  6. ^ Ice on the Moon”. thespacereview.com. 2008年2月16日閲覧。
  7. ^ a b c d The Moon's Malapert Mountain Seen As Ideal Site for Lunar Lab”. space.com. 2008年2月18日閲覧。
  8. ^ a b c d Astronomy.com - Eternal light at a lunar pole
  9. ^ - 月の極域での日照の割合が判明 ~かぐや搭載レーザ高度計による観測の成果~
  10. ^ The Clementine Mission”. cmf.nrl.navy.mil. 2008年2月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月20日閲覧。
  11. ^ The Clementine Bistatic Radar Experiment -- Nozette et al. 274 (5292): 1495 -- Science (See above)”. 2005年12月11日閲覧。
  12. ^ EUREKA! ICE FOUND AT LUNAR POLES”. lunar.arc.nasa.gov. 2008年2月20日閲覧。
  13. ^ Cornell News: No ice found at lunar poles (See above)”. 2005年12月11日閲覧。
  14. ^ NASA、衝突実験により月面から水を検出
  15. ^ (PDF) DEVELOPING_A_SITE_SELECTION_STRATEGY_for_a_LUNAR_OUTPOST. lpi.usra.edu. http://www.lpi.usra.edu/lunar_resources/documents/DevelopingSiteSelection.pdf 2008年2月19日閲覧。. 
  16. ^ (PDF) LUNAR_FAR-SIDE_COMMUNICATION_SATELLITES. nasa.gov. http://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19680015886_1968015886.pdf 2008年2月19日閲覧。. 
  17. ^ [Y.]. “RADIO ASTRONOMY FROM THE LUNAR FAR SIDE: PRECURSOR STUDIES OF RADIO WAVE PROPAGATION AROUND THE MOON”. astro.gla.ac.uk. 2002年5月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月18日閲覧。
  18. ^ Estimated Solar Wind-Implanted Helium-3 Distribution on the Moon. agu.org. http://www.agu.org/pubs/crossref/1999/1998GL900305.shtml 2008年2月18日閲覧。. 
  19. ^ a b Tung Dju (T. D.) Lin, cited via James, Barry (1992年2月13日). “On Moon, Concrete Digs?”. International Herald Tribune. http://www.iht.com/articles/1992/02/13/moon.php 2006年12月24日閲覧。 
  20. ^ (インターネット・アーカイブ)
  21. ^ かぐや、月面に“縦穴”を発見
  22. ^ Lunar base”. RussianSpaceWeb.com. 2006年12月24日閲覧。
  23. ^ http://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19780007206_1978007206.pdf NASA History of Project Ranger p.80





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