改竄 改竄の概要

改竄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/05 14:19 UTC 版)

概説

改竄という概念は、悪意がない場合も含んでおり、たとえばその変更が不適切であるか否かが厳密に定義できる分野では、悪意がなくても誤解や知識不足によって不適切な変更を行った場合や、パソコンの誤操作等の事故による意図的でない変更は「改竄」にあたる(#悪意の有無に関わらない改竄の例)。

改竄は、様々な動機で行われている。例えば、不当な利益を得るため、違法な行為を隠蔽するため、他人を陥れるため 等々等々である。

文書改竄の罪と罰

文書を改竄する行為を防ぎ、それを行った者を罰するために、日本の法律では文書偽造の罪が定められている。 公文書の改竄に関しては公文書偽造罪があり、私文書に関しては私文書偽造罪がある。

一般の用語では改竄と呼ばれていることを、法律の領域では様々な用語を用いて細分化し分類している。改竄の中でも、真正に成立した文書に変更を加えることは「変造」という用語を用いる。その中で、権限のない者が真正文書を改変すること「有形変造」といい、 権限のある者が真正文書を改変することを「無形変造」という。

国ごとに罰則は異なる。日本では文書偽造のを犯した者に対するは以下のように定められている。

公文書偽造罪に関する罰則は以下のように定められている。
  • 有印公文書を偽造した場合、1年以上10年以下の懲役刑法155条1項)
  • 無印公文書を偽造した場合、3年以下の懲役または20万円以下の罰金(刑法155条3項)
私文書偽造罪に関する罰則は以下のように定められている。
  • 有印私文書の場合、3月以上5年以下の懲役(刑法159条1項)
  • 無印私文書の場合、1年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法159条3項)

企業における改竄

企業では経理の帳簿や、財務諸表などが改竄されることがある。 例えば以下のような改竄が行われることがある。

  • 帳簿上の利益を実際よりも大きく見せることで、業績が良好であるように見せることがある。いわゆる粉飾決算の一種である。株式公開をしている会社(公開企業)では、実際の利益額が小さい場合に、それを公表すると株価が下落したり、増資(新規株式発行や銀行からの融資等々)が困難になる場合があり、そうした犯罪行為が行われることがある。
  • 帳簿上の利益を実際より少なく見せる、ということが行われることがある。税金を支払う額を小さくすること(脱税)などの目的で行われる。
  • 帳簿を2つ作成し、本当の情報を記した帳簿は隠し、改竄した情報を記した帳簿をあたかも正規の帳簿のように保有したり(二重帳簿)、会計士などによる検査の時に提示する、ということが行われることがある。
  • 横領や資金流用等の不正の記録を残さない、一旦記録したものを消してしまう。

また企業では労働基準法に違反する状態(サービス残業や労働時間超過など)で従業員を働かせている場合に、出勤記録の改竄が行われることもある。労働基準局の調査が入った場合に隠蔽するためなどである。

国家・政府組織・公務員などによる改竄

国家や政府組織によって各種文書、報道、報道原稿、証拠資料 等々が改竄されることがある。

例えば(旧)ソ連において、組織的・日常的に文書改竄が行われていたことが知られており、例えばある人物が失脚した場合や粛清された場合などに、その人物が有力であったことを示す痕跡を抹消するために、図書館の蔵書から各地の展示館等の展示に至るまでありとあらゆる資料に対し、写真の加工、文章の削除、書換などの改竄が即座に行われていた。これ以外にも、時の政策と矛盾するような不都合な記述の改竄が日々行われていた。

また第二次世界大戦の時代、日本は軍国主義に陥っており、軍部の中枢である大本営が常習的に情報を改竄して報道でニュースとして流し、国民を騙していた[1]。実際には日本軍は、連合国の戦艦4隻と空母11隻しか沈めなかったのだが、大本営の公式発表の合計数では、あたかも日本軍が連合軍の戦艦を43隻、空母を84隻も沈めたかのように捏造して放送で流した[1]。(大本営発表

全体主義国家や、共産主義国家、独裁国家などでは、資料改竄が大々的に行われることがある。たとえば、朝鮮民主主義人民共和国は、非常に厳しい情報統制を敷き、過去の政策や指導者の出自などを示す資料の改竄・捏造・廃棄が常習的に行われている。

日本では、大阪地検が2010年に大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件を起こした。


  1. ^ a b 『大本営発表: 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』辻田真佐憲著、幻冬舎、2016
  2. ^ 「チバニアン」GSSP申請論文における特定不正行為の告発と、その後の研究機関の回答について”. 古関東深海盆ジオパーク推進協議会. 2021年3月19日閲覧。


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