慢性活動性EBウイルス感染症 診断基準

慢性活動性EBウイルス感染症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 04:37 UTC 版)

診断基準

CAEBVの2015年厚生労働省研究班による診断基準[7]は、以下の4項目をすべて満たすこととされている:

  1. 伝染性単核症様症状が3か月以上持続(連続的または断続的)
  2. 末梢血または病変組織におけるEBウイルスゲノム量の増加
  3. T細胞あるいはNK細胞にEB ウイルス感染を認める
  4. 既知の疾患とは異なること

検査

検査としては血液中のEBウイルスのDNA定量(リアルタイムPCR法)が行われ、EBウイルスの増加がチェックされる[7]

EBウイルス抗体検査は、EBVCA IgGの異常高値やEBNA陰性などの所見が得られることがあって診断の参考となるが、特異性は低い。末梢血骨髄液中のリンパ球の増加、血球貪食症候群を呈している症例では、血球減少と骨髄中への(単球ではなく)の増生、可溶性IL-2レセプター高値、血清フェリチン高値などが見られる。

  • 肝障害症例 - 肝生検で肝実質へのリンパ球の集積がみられる。これらのリンパ球はEBER-1などの免疫染色でEBウイルス陽性を示す。
  • 神経障害症例 - 脊髄MRI検査で横断性脊髄炎の所見が見られることがある。

上のような検査は自費診療のため高額で、患者にとって大きな負担になっている。それだけでなく、検査料が高いため検査せずに他の疾患と考えられたまま治療が続くうちに、症状が悪化しがちである。その意味で、早期発見を妨げている。一部の患者会では署名を集め、厚生労働省に対して疾患知識の周知の要望と合わせて難病指定等による患者負担の軽減の要望を行っている[14]

治療

化学療法骨髄移植が選択される[7]

骨髄移植
造血幹細胞移植が有効で、臍帯血移植も行われる。
化学療法
小児領域においては血球貪食症候群を併発した症例で抗腫瘍薬エトポシド免疫抑制剤シクロスポリン)の併用療法が行われ、一定の効果を挙げている。それ以外には悪性リンパ腫に準じた抗腫瘍薬による化学療法などが行われている。成人でも小児領域に準じて同様の治療が行われているが、これらのいずれもが根治的な治療とはいえず、化学療法だけでは再燃や難治化の局面を迎えて最終的に死の転帰をたどるケースが少なくない。

近年医療成績が向上した。造血幹細胞移植59例中、観察期間(の中央値)3年で66%が生存していたという2012年の報告がある[15]。また、「骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植(RIST)」の場合に3年無病生存率が95.0±4.9%だったという2011年の報告がある[16]大阪府立母子医療センターは2016年現在で造血幹細胞移植後4年生存者が91〜93%という成績を公表している[17]。同センターは治療について以下引用のように説明している。

まず免疫化学療法で病気の鎮静化を図り急変のリスクを回避します。次に感染細胞の減少を期待して多剤併用化学療法を行います。最後の造血幹細胞移植は、大量の抗癌剤(前処置)で感染細胞を含む自己の血液細胞を破壊するとともに、健常なドナーからいただいた造血幹細胞を投与し、健全な造血を回復させる治療法です。 従来はリスクの高い治療法で、感染症、前処置の抗癌剤に起因する合併症、ドナー免疫細胞による臓器障害(GVHD)などの複合要因でときに死に至るほか、移植後には成長ホルモンや性ホルモンの分泌不全、不妊など、犠牲も多い治療法でした。2000年代に入ると薬剤の進歩により、前処置の強度を減じても移植治療が成功するばかりか、移植中のQOL(生活の質)も改善し、移植後のホルモンや生殖能の保持もある程度期待できるようになってきました。

当科では病気が進行する前に治療を開始し、治療をやり遂げる方針をとっています。移植の前処置は強度を減じた方法で行っています。そして症状が安定した状態で移植できれば、骨髄移植でも、近年に広まった臍帯血移植でも成功率に優劣はなく、約90%の人が元気にされています — 大阪府立母子医療センター慢性活動性EBウイルス感染症の治療

[リンク切れ]


  1. ^ a b 研究奨励分野 研究班名簿・疾患概要(21年度) 102 慢性活動性EBウイルス感染症 概要 - 難病情報センター
  2. ^ a b 河敬世、「いわゆる慢性活動性EBウイルス感染症の診断と治療」『ウイルス』 2002年 52巻 2号 p.257-260,doi:10.2222/jsv.52.257, 日本ウイルス学会
  3. ^ 金兼弘和ほか、慢性活動性EBウイルス感染症 モダンメディア 2010年5月号(第56巻5号) (PDF)
  4. ^ 研究内容”. 東京医科歯科大学血液内科. 2016年7月9日閲覧。
  5. ^ EBウイルス感染症研究会
  6. ^ 研究奨励分野 研究班名簿・疾患概要(21年度) 102 慢性活動性EBウイルス感染症 名簿 - 難病情報センター
  7. ^ a b c d e 慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016 (PDF)
  8. ^ 難治性疾患研究班情報(研究奨励分野)》 慢性活動性EBウイルス感染症(平成22年度)
  9. ^ 平成28年度 難治性疾患政策研究事業 研究課題一覧表”. 難病情報センター. 2016年7月9日閲覧。
  10. ^ 81プロデュース スタッフ一同 (2015年12月15日). “松来未祐を応援してくださった皆様へ”. 松来未祐日記. 2015年12月15日閲覧。
  11. ^ 岩月啓氏、「EBウイルス関連皮膚T/NKリンパ球増殖症 -種痘様水疱症と蚊刺過敏症-」『日本小児血液・がん学会雑誌』 2015年 52巻 3号 p.317-325、doi:10.11412/jspho.52.317, 日本小児血液・がん学会
  12. ^ a b 戸倉新樹、「EBウイルスとリンパ増殖症『日本皮膚科学会雑誌』 2006年 116巻 6号 p.909-915, doi:10.14924/dermatol.116.909, 日本皮膚科学会
  13. ^ 今日の小児治療指針 第15版 20120215 発行
  14. ^ CAEBV患者会SHAKE
  15. ^ "EBV-associated T/NK-cell lymphoproliferative diseases in nonimmunocompromised hosts: prospective analysis of 108 cases." PMID 22096243, doi:10.1182/blood-2011-10-381921
  16. ^ "Excellent outcome of allogeneic hematopoietic SCT with reduced-intensity conditioning for the treatment of chronic active EBV infection.", PMID 20498651, doi:10.1038/bmt.2010.122
  17. ^ 慢性活動性EBウイルス感染症の治療 大阪府立母子保健総合医療センター[リンク切れ]


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