山
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 07:50 UTC 版)
山の気候と生物
山の気候は平地と大きく異なる。山では気象が変化しやすく、風も強く、降水量も多い[20]。山は起伏が激しいため地上付近の暖かい空気と高所の寒い空気が混じりあい、雲が発生しやすいためである。
また、標高が100m上昇するごとに気温は0.6度(摂氏)低くなるとされており、そのため、標高が高くなれば植生や生態系も異なってくる。標高が上がるにつれて植生はより寒冷に適応したものとなっていくため、山麓の低地が熱帯であるのに山頂の植生が温帯性や冷帯性を示したり、さらには森林の生育できる温度を下回ってしまいツンドラや氷河が広がっているということもありうる。
例として、ほぼ赤道直下にあるキリマンジャロ山においては、山麓の標高1,900mくらいまではサバンナが広がっているのに対し、標高2,500m程度までは熱帯雨林、3,000m付近までは雲霧林となり[21]、それより上になると森林限界を迎えてしまうため樹木が生育できず、まばらな低木や草原が広がるようになる。4,400m以上では植物の生育が不可能になり、5,500m以上では赤道直下にもかかわらず氷河が存在する[22]。
特に海抜数千メートルの高山では気象環境は過酷であり、ある程度の標高以上では気温が低すぎてもはや樹木が生育できず、そのような環境に適応した特殊な植物・動物が生息している。これを高山植物・高山動物という。この樹木が生育できなくなる地点のことを森林限界というが、これは基本的には標高によって決定されるものの、その地表の諸条件に大きく左右されるために、必ずしも直線的に限界線が続いているわけではない。
また、森林限界は気温によって左右されるため、場所によってその高度は大きく異なり、基本的には緯度が低いほど森林限界の高度は高く、緯度が高いほどその高度は低くなる。寒帯にある山岳の場合、麓から山頂までツンドラや氷雪に覆われていることは珍しくない[23]。
また、標高の高い山岳においては斜面に雨雲がぶつかるため、山麓に降雨をもたらすことが多い。この場合、山脈を越えた空気は乾燥することとなり、山の反対側にフェーン現象をもたらすことがある。
また、海岸から高い山脈にさえぎられた反対側では山脈の方から吹き込む卓越風の風下となり、すでに水分のほとんどを雨として落としてしまっているため、極度に乾燥した気候となることがある。これを雨陰効果と呼び、タクラマカン砂漠やグレートベースンなどがこの要因によって砂漠となっている[24]。逆に山岳の風上側においては乾燥地においても降雨をもたらすことはよくある。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i 竹内 2002.
- ^ Blyth et,al. 2002 p.74.
- ^ Blyth et,al. 2002 p.14.
- ^ Panos (2002年). “High Stakes”. 2012年6月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月17日閲覧。
- ^ 尼崎市立地域研究史料館. “レファレンス事例詳細”. レファレンス協同データベース. 国立国会図書館. 2018年11月11日閲覧。
- ^ “Nepal and China agree on Mount Everest's height”. BBC News. (2010年4月8日). オリジナルの2012年3月3日時点におけるアーカイブ。 2010年8月22日閲覧。
- ^ “The 'Highest' Spot on Earth”. Npr.org (2007年4月7日). 2013年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月31日閲覧。
- ^ “Mountains: Highest Points on Earth”. National Geographic Society. 2010年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月19日閲覧。
- ^ “標高3メートル、日本一低い山に…天保山下回る:社会:”. 読売新聞(YOMIURI ONLINE). 2014年4月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 水谷 2006, p. 42.
- ^ Baker & Ratcliff 2012, p. 5.
- ^ 「山はどうしてできるのか ダイナミックな地球科学入門」p150-152 藤岡換太郎 講談社 2012年1月20日第1刷
- ^ 「山はどうしてできるのか ダイナミックな地球科学入門」p120-122 藤岡換太郎 講談社 2012年1月20日第1刷
- ^ Price 2017, p. 31.
- ^ Price 2017, pp. 32–33.
- ^ a b Price 2017, p. 34.
- ^ Price 2017, p. 35.
- ^ アイドマ 2006, pp. 68–69.
- ^ 深田 1982, pp. 13–376.
- ^ 公益社団法人 日本山岳会「山を知ろう」
- ^ 水野 2016, p. 121.
- ^ 現代地図帳 1988, p. 43.
- ^ Price 2017, p. 61.
- ^ 篠田 2008, p. 23.
- ^ 小林 2015, p. 83.
- ^ Kolossov, V. (2005). Border studies: changing perspectives and theoretical approaches. Geopolitics, 10(4), 606-632.
- ^ Van Houtum, H. (2005). The geopolitics of borders and boundaries. Geopolitics, 10(4), 672-679.
- ^ Price 2017, p. 6.
- ^ Moore, Lorna G. (2001). “Human Genetic Adaptation to High Altitude”. High Alt Med Biol 2 (2): 257–279. doi:10.1089/152702901750265341. PMID 11443005.
- ^ Cook, James D.; Boy, Erick; Flowers, Carol; del Carmen Daroca, Maria (2005). “The influence of high-altitude living on body iron”. Blood 106 (4): 1441–1446. doi:10.1182/blood-2004-12-4782. PMID 15870179 .
- ^ “El Alto, Bolivia: A New World Out Of Differences”. 2015年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月8日閲覧。
- ^ Finnegan, William (2015年4月20日). “Tears of the Sun” (英語). The New Yorker. Condé Nast Publications. 2018年7月8日閲覧。
- ^ West, JB (2002). “Highest permanent human habitation”. High Altitude Medical Biology 3 (4): 401–7. doi:10.1089/15270290260512882. PMID 12631426.
- ^ “Everest:The Death Zone”. Nova. PBS (1998年2月24日). 2017年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月8日閲覧。
- ^ Price 2017, p. 89.
- ^ Price 2017, pp. 81–83.
- ^ 坂井他 2007, pp. 254–255.
- ^ Blyth et,al. 2002 p.22.
- ^ “International Year of Freshwater 2003”. 2006年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年12月7日閲覧。
- ^ “The Mountain Institute”. 2006年7月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年12月7日閲覧。
- ^ a b Price 2017, p. 52.
- ^ 「登山の誕生」p83-89 中公新書 小泉武栄 2001年6月25日発行
- ^ 「登山の誕生」p105-108 中公新書 小泉武栄 2001年6月25日発行
- ^ 「登山の誕生」p113-116 中公新書 小泉武栄 2001年6月25日発行
- ^ 「登山の誕生」p48-59 中公新書 小泉武栄 2001年6月25日発行
- ^ “山梨のパワースポット”. 富士の国やまなし観光ネット. 社団法人やまなし観光推進機構. 2011年3月6日閲覧。
- ^ ランドネ 2010, pp. 57–71.
- ^ a b c d e f g h i j k l 新詳高等地図.
山と同じ種類の言葉
品詞の分類
「山」に関係したコラム
-
FX(外国為替証拠金取引)のADXとは、為替レートのトレンドの強さを数値として算出したテクニカル指標のことで、一般的にはチャートの下側に折れ線グラフで表します。また、ADXはDMIというテクニカル指標...
-
個人投資家が株式投資を行う場合、証券会社を通じて株式売買を行うのが一般的です。証券会社は、株式などの有価証券の売買をはじめ、店頭デリバティブ取引や有価証券の管理を主な業務としています。日本国内の証券会...
-
株主優待銘柄とは、株主に対する還元策の1つとして商品券や割引券など配布している銘柄のことです。企業は、株主還元のため、また、株主の獲得のためにさまざまな株主優待を用意しています。株主優待は、1単元でも...
- >> 「山」を含む用語の索引
- 山のページへのリンク