圧電効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/24 15:29 UTC 版)
結晶の種類
32個の結晶点群のうち、21個は非中心対称(対称の中心を持たない)であり、そのうち20個は、直の圧電効果を示す(21番目は立方晶種432である)。このうちの10個は単位セルに両極を持ち、極性があり(例えば、自発的に分極する)、圧電効果を示す。もしこの双極子に逆に電場をかけたならば、この物質は強誘電体と呼ばれる。
- 圧電結晶体の種類:1, 2, m, 222, mm2, 4, -4, 422, 4mm, -42m, 3, 32, 3m, 6, -6, 622, 6mm, -62m, 23, -43m
- 焦電体:1, 2, m, mm2, 4, 4mm, 3, 3m, 6, 6mm
主な圧電体材料
天然・人工ともに多くの材料は、圧電効果を示す。以下に主なものを列挙する。
天然結晶
- ベルリナイト(燐酸アルミニウム:AlPO4) … 希少なリン酸塩鉱物で、構造的には石英に等しい。
- 蔗糖
- 石英(水晶)(SiO2)
- ロッシェル塩(酒石酸カリウム-ナトリウム)(KNaC4H4O6)
- トパーズ(黄玉、ケイ酸塩)(Al2SiO4(F,OH)2)
- 電気石(トルマリン)グループ鉱物
その他の天然物
圧電効果は、生物学上の力センサーの役割りをしていると考えられている[3][4]。
人工結晶
- オルト(正)燐酸ガリウム(GaPO4) … 石英類似結晶
- ランガサイト(La3Ga5SiO14) … 石英類似結晶
人工セラミックス
ペロフスカイト(ペロブスカイトとも呼ばれている。perovskite チタン酸カルシウム:CaTiO3)やタングステン-青銅構造を持つセラミックスの一群は、圧電効果を示す。
- チタン酸バリウム(BaTiO3) … チタン酸バリウムは、最初に発見された圧電セラミックスである。
- チタン酸鉛(PbTiO3)
- チタン酸ジルコン酸鉛(ジルコニウム酸-チタン酸鉛)(Pb[ZrxTi1-x]O3 0<x<1 混晶) … 一般的には、PZTとして知られている。PZTは今日使われている最も一般的な圧電セラミックスである。
- ニオブ酸カリウム(KNbO3)
- ニオブ酸リチウム(LiNbO3)
- タンタル酸リチウム(LiTaO3)
- タングステン酸ナトリウム(NaXWO3)
- 酸化亜鉛(ZnO、Zn2O3)
- Ba2NaNb5O5
- Pb2KNb5O15
- リチウムテトラボレート(Li2B4O7)
鉛フリー圧電セラミックス
近年、RoHS指令によって鉛を含んでいる物質の毒性に関して関心が高まっている。この問題に取り組むため、無鉛の圧電材料が再開発された。
- ニオブ酸ナトリウムカリウム((K,Na)NbO3) … 2004年に、齋藤康善が率いる豊田中央研究所の研究グループによって、高いを有するPZTに近い特性を備えたニオブ酸ナトリウムカリウムが発見された[5]。
- ビスマスフェライト(BiFeO3)は鉛フリーセラミックスの置き換えの有望な候補である。
- ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)
- チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)
- チタン酸ビスマスナトリウム(Na0.5Bi0.5TiO3)
現在のところ、これらの物質の環境に対する影響や安定供給も確認されていない。
ポリマー
- ポリフッ化ビニリデン(1,1-2フッ化エタン重合体、PVDF) … PVDFは、石英より数段高い圧電性を示す。材料の結晶構造が圧電効果を生み出すセラミックスとは違い、ポリマー内では、電界があると相互に曲がりくねった長鎖分子がくっ付いたり、引き離れたりする。
その他の人工物
応用分野
この圧電効果は、正圧電効果の有る物質(応力を加えた時、電気を生ずる)はまた、逆圧電効果(電場が有れば、縮んだり、伸びたりする。この場合電場のかけ方により、一方向のみ、または双方向の場合がある)が有るであろうと可逆的に考えられている。例えば、鉛・ジルコニア・チタン水晶では、元の長さの最大0.1%形状が変わるであろう。この効果は、音、高電圧の発生、電気周波数の発生、マイクロバランスや光学機器の超微調整焦点合わせなど、検出や製造に応用されている。また、原子解像や顕微探査スキャニング(STM, AFM, MTA, SNOMなど)といった多くの科学計測技術の拠りどころともなっている。
その他にも圧電効果による摩擦軽減特性も報告されている[6]。これは結晶配向を正確に制御した酸化亜鉛をコーティングしたもので大気・真空・油中で摩擦を軽減する。特に極性分子が介在しない油中においては圧電効果による反発力で荷重が増加するにつれ摩擦抵抗が低下するという実験結果が出ており、今後は油・真空環境下での応用が期待される。
- ^ “piezoelectric” (英語). Etymology, origin and meaning of piezoelectric by etymonline. 2022年4月19日閲覧。
- ^ "On the Piezoelectric Effect of Bone", Eiichi Fukada and Iwao Yasuda, 1957 The Physical Society of Japan
- ^ "Electrical Properties of Bone", Roderic Lakes, University of Wisconsin–Madison
- ^ Becker, Robert O; Marino, Andrew A (1982). “Chapter 4: Electrical Properties of Biological Tissue (Piezoelectricity)”. Electromagnetism & Life. Albany, New York: State University of New York Press. ISBN 0-87395-560-9
- ^ Saito, Yasuyoshi; Takao, Hisaaki; Tanil, Toshihiko; Nonoyama, Tatsuhiko; Takatoril Kazumasa; Homma, Takahiko; Nagaya, Toshiatsu; Nakamura, Masaya (2004-11-04). “Lead-free piezoceramics”. Nature (Nature Publishing Group) 432 (7013): 81–87. Bibcode: 2004Natur.432...84S. doi:10.1038/nature03028. PMID 15516921 .
- ^ 圧電効果を利用して摩擦力の低減に成功 - 独立行政法人物質・材料研究機構
圧電効果と同じ種類の言葉
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