同値類 同値類の概要

同値類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/11 05:23 UTC 版)

合同は同値関係の例である.左の2つの三角形は合同であるが,3つ目と4つ目の三角形は図の他のどの三角形とも合同でない.したがって,はじめの2つの三角形は同じ同値類に属するが,3つ目と4つ目の三角形はそれぞれ個別の同値類に属する.

フォーマルには,集合 SS 上の同値関係 が与えられたとき,元 aS における同値類は,a に同値な元全体の集合

である.「同値関係」の定義から同値類は S の分割をなす.この分割,同値類たちの集合,を S による商集合 (quotient set) あるいは商空間 (quotient space) と呼び,S/∼ と表記する.

集合 S が(演算や位相のような)構造を持ち,同値関係 がこの構造と適切に両立するように定義されているとき,商集合はしばしばもとの集合から類似の構造を引き継ぐ.例としては,線型代数学における商空間位相空間論における商空間商群英語版等質空間商環商モノイド英語版商圏英語版など.

  • X がすべての車の集合であり, が「同じ色である」という同値関係のとき,ある1つの同値類はすべての緑色の車からなる.X/∼ はすべての車の色の集合と自然に同一視できる.
  • X を平面内のすべての長方形の集合とし, を「同じ面積を持つ」という同値関係とする.各正の実数 A に対し,面積が A の長方形全体のなす同値類がある[1]
  • 整数の集合 Z 上の2を法とした同値関係を考える,つまり xy とはそれらの差 xy偶数であることである.この関係はちょうど2つの同値類を生じる:1つはすべての偶数からなり,もう1つはすべての奇数からなる.この関係の下で,[7], [9], [1] はすべて Z/∼ の同じ元を表す[2]
  • Xb0 でない整数の順序対 (a, b) 全体の集合とし,X 上の同値関係 (a, b) ∼ (c, d) ⇔ ad = bc によって定義する.すると対 (a, b) の同値類は有理数 a/b と同一視することができ,この同値関係とその同値類は有理数の形式的な定義に用いることができる[3].同じ構成は任意の整域分数体に一般化することができる.
  • Xユークリッド平面内のすべての直線の集合とし,LMLM平行と定義すると,互いに平行な直線の集合が1つの同値類をなす(直線は自分自身と平行と考える).この状況では,各同値類は無限遠点を決定する.

記法と定義

同値関係二項関係 であって以下の3つの性質を満たすものである[4]

  • X の任意の元 a に対して,aa である(反射性),
  • X の任意の2元 a, b に対して,ab ならば ba である(対称性),
  • X の任意の3つの元 a, b, c に対して,ab かつ bc ならば ac である(推移性).

a の同値類は [a] と書き,a によって関係づけられる元全体の集合

として定義される.同値関係 R を明示して [a]R とも書かれる.これは aR-同値類といわれる.

同値関係 R に関する X のすべての同値類からなる集合を X/R と書き,XR による商集合 (quotient set of X by R, X modulo R) と呼ぶ[5]X から X/R への各元をその同値類に写す全射 標準射影と呼ばれる.

各同値類の元を(しばしば暗黙に)選ぶと,切断英語版と呼ばれる単射が定義される.この切断を s で表せば,各同値類 c に対して [s(c)] = c である.元 s(c)c代表元 (representative) と呼ばれる.切断を適切に取って類の任意の元をその類の代表元として選ぶことができる.

ある切断が他の切断よりも「自然」であることがある.この場合,代表元を標準英語版代表元と呼ぶ.例えば,合同算術において,整数上の同値関係で,ababと呼ばれる与えられた整数 n の倍数であると定義したものを考える.各類は n 未満の非負整数を唯一つ含み,これらの整数が標準的な代表元である.類とその代表元は多かれ少なかれ同一視され,例えば a mod n という表記は類を表すことも標準的な代表元(an割った余り)を表すこともある.


  1. ^ Avelsgaard 1989, p. 127.
  2. ^ a b Devlin 2004, p. 123.
  3. ^ Maddox 2002, pp. 77–78.
  4. ^ Devlin 2004, p. 122.
  5. ^ Wolf 1998, p. 178.
  6. ^ Maddox 2002, p. 74, Thm. 2.5.15.
  7. ^ Avelsgaard 1989, p. 132, Thm. 3.16.


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