ロータリーエンジン (初期航空機) 解説

ロータリーエンジン (初期航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/04 03:13 UTC 版)

解説

ロータリーエンジンは、星型エンジンのクランクシャフトを機体に固定し、エンジン全体が回転する形式のレシプロエンジンで、プロペラ軸はクランクケースに固定される。100馬力程度までのエンジンに使われた。ローラン・セガンフランス語版と弟のルイフランス語版によって開発されたノームエンジン(後のノーム・エ・ローヌ)が有名である。

ロータリーエンジンには、トルク変動を吸収するフライホイールの役割をエンジンそのもので担うことで軽量化できる、シリンダーが回転することにより表面を流れる空気の量が多く均等になることから冷却効果が向上し水冷エンジンよりも軽量な空冷エンジンとすることができる、といった利点があるため、エンジン技術が未熟でエンジンが低出力、低回転であった時代に採用された。飛散する潤滑油が貯まって火災を招かないように、ロータリーエンジンを装備した飛行機は下半分にカウリングをつけていないことが識別しやすい外見的特徴となっている。また、初期のロータリーエンジンでは、潤滑油としてヒマシ油が使われていたため、飛散した油滴を吸い込むことでパイロットの下痢が多発した。

しかし、エンジンの回転速度が高くなるにつれて、強い遠心力が加わるため潤滑油の循環が難しく同時に潤滑油が外部へ飛散してしまい、燃料と同程度に潤滑油も消費するため、経済的には効率が悪かった。同じく遠心力により各部に負荷がかかるため高出力化(大型化や高回転化)に限界がある、エンジンの回転速度が高くなると、重いエンジンの回転によるジャイロ効果[疑問点]が強く影響して非常に癖が強く離着陸操縦が難しい機体になる(これによりソッピース キャメルでは事故が多発した。)、といった短所が顕著になった。また、スロットルがつけられないため、出力調整には燃料と空気の混合比をかえる面倒な操作をせねばならず、素早い調整には「ブリップスイッチ」によるエンジンのオン・オフが多用されたが、この操作による故障を起こしやすかった。

第一次世界大戦後は、熱伝導率の高い材質、シリンダーとシリンダーヘッドの分離、より緻密で背の高い冷却フィン[注釈 1]など、新技術の導入による改良が進み、回転させなくても充分な冷却が可能な新型の空冷星型エンジンが続々と登場すると、ロータリーエンジンは搭載されなくなっていった。

飛散する潤滑油がゴーグルに付着するため、パイロットマフラーで拭き取っていた。飛散しないエンジンを使用するようになっても防寒用や止血帯としてマフラーを常備するようになった。


注釈

  1. ^ 薄く面積の大きなフィンはエンジンの振動によって割れやすいため、製造が難しかった。

出典

  1. ^ Charles Benjamin Redrup”. 2008年4月11日閲覧。





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