パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム
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初開催は1916年で、アメリカではインディアナポリス500に次ぐ[1]歴史を持つモータースポーツの大会であり、2016年には100周年記念大会として様々なセレモニーが併催された。
一般的な記法では「パイクス・ピーク」となるが、日本のモータージャーナリズム他では「パイクスピーク」と書くならいのため、当記事も後者に倣う。
概要
レースはラリー・アメリカを運営するSCCA(スポーツカークラブ・オブ・アメリカ)の公認である[2]。1916年に第1回が開催され、毎年7月4日の独立記念日前後に決勝が行われる[注釈 1]。毎年大体平均して150のチームが競い合う。2012年のエントリー台数は182台だった。2021年に二輪部門が廃止されたため、2023年は69台にまで減っている[3]。
舞台となるパイクスピークはロッキー山脈の東端、コロラドスプリングスの西16 kmに位置する山である。標高は4,301 mに達し、アメリカ合衆国の天然記念物に指定されている。1806年に探検家のゼブロン・パイク(Zebulon Pike)によって紹介されたためにPike’s Peak (パイクの頂)と名づけられた。
頂上の座標は北緯38度50分26.6172秒 西経105度2分34.0692秒 / 北緯38.840727000度 西経105.042797000度。レースは標高2,862 m地点をスタート地点とし、頂上までの標高差1,439 mを一気に駆け上がる。トップセクションは富士山の標高より高い場所を走行する。距離は19.99 km、コーナーの数は156[1]、平均勾配は7%である。山肌を走るコースにはガードレールがない部分が多く、ひとつハンドルを切り損ねれば600mの急斜面を滑落するという危険が伴う。
かつてはコースの大部分はグラベル(未舗装路)だった[1]が、安全上の問題から2011年にトップセクションが完全なターマック(舗装路)になり、2012年にはコース全域がターマックとなった。
スタート地点とゴール地点で大きく標高が異なるため、気圧、気温、天候といった自然条件が大きく変化する。実際、スタート地点では晴れているのに頂上付近では雪やひょうが降ることがある。過去にゴール地点の標高を下げて開催されたこともあった。マシンセッティングも、希薄になっていく酸素濃度や急激な気圧の変化に対応して、過剰とも思える出力を発揮するエンジンチューン、特殊なキャブレーション、低い気圧でも有効なダウンフォースを得るための巨大なエアロパーツ、エンジン・ブレーキの冷却系の強化が施される。2010年代からは環境意識の高まりに加えて、酸素濃度に関係なく安定した出力を発揮でき、瞬時に最大トルクを発生させることができる電気自動車 (EV) の存在がクローズアップされていき、2015年には総合優勝を果たし、さらに2018年にはコースレコードも樹立している。こういった気圧変化や酸素濃度減少による負荷は当然ドライバーにも掛かるため、ライバルとの争いというよりは、むしろ頂上へ向かうにつれて刻々と変化する自然との闘いといった意味合いの強いレースである。
レーススケジュールは一週間あり、月曜日に開催されるドライバー達の親睦を深めるゴルフコンペから始まり、火曜日から木曜日までの3日間が予備予選となる。各クラス、コースを3分割してのエリア毎のタイム計測。その合計タイムで規定台数枠の振い落としが行われ、金曜日の予選へ駒を進められる。予選はスタート順決定のためのタイム計測となり、日曜日にコースを通した決勝が行われる。2010年時点でのスケジュールは火曜日に車検。水・木・金曜日の早朝にコースを三分割した練習走行を行い、ボトムセクションのタイムで出走順が決められる。また、金曜日の夕方にダウンタウンでファンフェスタがある。土曜日は休息日。日曜日に決勝が行われる。
1947年から1955年と1965年から1969年は全米選手権 (AAA/USAC National Championship, 後のインディカー・シリーズ) の年間シリーズに組み込まれていた。また1959年大会のみヨーロッパヒルクライム選手権の年間シリーズに組み込まれていた。
クラス分け
2023年現在、四輪は下記の6ディヴィジョン(部門)に分かれている[4]。リアだけでなくフロントにもウィングを備えている車両が多いのが特徴である。
オートバイのクラスも第一回大会から開催されてきたが、死亡事故が相次ぐ状況を鑑みて、2021年大会を前に廃止された[5]。
- アンリミテッド
- 安全基準以外についてはほぼ自由な、無制限のクラス。全体レコードタイムを塗り替える可能性が最も高いとされる。市販車の外観を持っているものは、基本的には鋼管フレームである。
- オープンホイール
- オープンホイール、オープンコクピット、シングルシート、シングルエンジンの車両。外観はバギーカーやインディカー、ダートオーバルのスタイル。駆動レイアウト(二輪駆動/四輪駆動)の違いや過給器の有無などによって、気筒あたり最低重量が別個に定められている。1916年の第一回大会から存在する最も歴史があるクラスで、過去の優勝者にはF1・CART王者のマリオ・アンドレッティや、北米オープンホイール界のレジェンドであるアンサー一家(ルイス・アンサー、アル・アンサー、ボビー・アンサー、ロビー・アンサー)も名を連ねる。
- タイムアタック1
- 市販車ベースの2WD、4WD車によるクラス。大幅な改造が可能だが、空気/燃料の供給方式、エンジンシリンダー数、駆動輪の数、駆動輪の位置はベース車両から変更できない。
- パイクスピークオープン
- 一部空力パーツを除きボディワークはプロダクションカーのそれを保持するが、エンジン・トランスミッション・サスペンションに大きな変更を加える事が出来る[6]。
- エキシビション
- 電気自動車や水素自動車、SEMI(セムアイ = トレーラーヘッド)など、クラス分けに収まらないその他の車両。
- ポルシェ・パイクスピーク・トロフィー・バイ・ヨコハマ
- 横浜タイヤの協賛により開催されている、ポルシェ・ケイマン GT4 クラブスポーツのワンメイクディヴィジョン。
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2000年アンリミテッドクラスのサーブ・9-3
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2009年アンリミテッドクラスのフォード・フィエスタ
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2014年タイムアタッククラスのトヨタ・86
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1961年アル・アンサーのオープンホイール
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2017年オープンホイール
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2013年旧エレクトリッククラスに参戦した田嶋伸博のE-ランナー
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2011年ポルシェ・997 GT2
過去開催されたクラス
- オープンラリークラス
- 過去のWRCグループBカーに相当。現在のアンリミテッドクラスに統合。
- プロダクションGTラリークラス
- 文字通り、無改造に近いPWRCカーに相当。現在のパイクスピークオープンクラスに統合。
- ハイパフォーマンスショールームストック
- スーパーストッククラスへ統合。
- プロトラック
- アメリカンピックアップトラックの4WD車がここに入る。
- ラリーアメリカ
- 2010年より開設。さまざまなクラスが乱立し、複雑化していたオープン、オープンライト、プロダクション、スーパープロダクション、プロダクションGT、グループ2、グループ5車がこちらに統合。
- ロッキーマウンテンヴィンテージレーシング(RMVR)
- 1980年代以前の車両。欧米で言うところのマッスルカーが主流。例として旧フォード・マスタングやシェルビー・マスタング、リンカーン、マーキュリーなどによる。
- スーパーストックカー
- NASCARなどのストックカーによるクラス。
- エレクトリック
- 電気自動車によるクラス。エキシビションクラスに統合。
二輪・クワッド
- 250cc
- 450cc
- 450ccスーパーモト
- 750cc
- 1205cc
- エレクトリックバイク
- ビンテージ
- 650 – 750cc、2気筒、ライダーの年齢制限50歳
- サイドカー
- クワッド・モディファイド
- ATV、いわゆる四輪バギー。500cc以下
- エキシビションパワースポーツ
- サイド・バイ・サイド・ビークル(UTV)、大型ATV、電動二輪車やクラス分けに収まらないその他の車両。
- 二輪において以前は大きくプロクラスとアマチュアクラスに分かれていて、それぞれに250ccと無制限のOPENクラスが存在した。
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2007年バイク
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2011年サイドカー
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2017年クアッド
注釈
出典
- ^ a b c d 阪口真一「RACE TO THE CLOUDS」『Motor Ring』第7巻、自動車技術会、1998年、31-32頁、2021年8月18日閲覧。
- ^ “Championship Standings” (英語). Rally America. 2018年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月4日閲覧。
- ^ LIST OF THE COMPETITORS INVITED TO PARTICIPATE IN THE 101st RUNNING OF THE BROADMOOR PIKES PEAK INTERNATIONAL HILL CLIMB BROUGHT TO YOU BY GRAN TURISMO ‐ SUNDAY, June 25, 2023
- ^ DIVISIONS
- ^ MOTORCYCLE COMPETITION DECISION ANNOUNCED BY PIKES PEAK INTERNATIONAL HILL CLIMB ORGANIZERS
- ^ “Divisions” (英語). 2012年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月1日閲覧。
- ^ “The Broadmoor Pikes Peak International Hill Climb” (pdf) (英語). 2018年9月14日閲覧。
- ^ 2010公式パンフレット参照
- ^ “From Cadillacs to Sidecars, Adelphia Pikes Peak International Hill Climb will run 17 divisions” (英語). Hispania News. (2000年6月30日). オリジナルの2007年2月18日時点におけるアーカイブ。 2011年10月11日閲覧。
- ^ (英語)『Honda Sets New Electric-Vehicle Record at Pikes Peak Hill Climb』(プレスリリース)American Honda Motor Co., Inc、1999年9月27日 。2019年9月21日閲覧。
- ^ “2007年パイクスピークは、田嶋がワールドレコードで総合優勝”. webCG. (2007年7月25日) 2011年10月10日閲覧。
- ^ 『ヨコハマタイヤ装着車が電気自動車の歴代記録を更新』(プレスリリース)横浜ゴム株式会社、2010年6月29日 。2019年9月21日閲覧。
- ^ “MONSTER IN HILL CLIMB”. モンスタースポーツ. 2011年10月10日閲覧。
- ^ 『ヨコハマタイヤ装着車が2年連続で電気自動車の最速記録を更新』(プレスリリース)横浜ゴム株式会社、2011年6月27日 。2019年9月21日閲覧。
- ^ a b c 『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、横浜ゴムのADVAN装着車が初参戦でEVクラス優勝、BluEarth装着車は自己ベストタイムを更新』(プレスリリース)横浜ゴム株式会社、2012年8月20日 。2019年9月21日閲覧。
- ^ 『パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム2014 『MiEV Evolution III』が電気自動車改造クラスで初優勝』(プレスリリース)三菱自動車工業株式会社、2014年6月30日 。2015年5月16日閲覧。
- ^ 『Racing On』第56巻、ニューズ出版、1989年9月、[要ページ番号]。
- ^ 『Auto Sport』第535巻、三栄書房、1989年9月、[要ページ番号]。
- ^ “上州オートクラブ ヒストリー”. 2010年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年7月27日閲覧。
- ^ “哀川翔がパイクスピークを完走” 2021年4月6日閲覧。
- ^ a b “PPIHC 2010 Result” (英語). 2013年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月17日閲覧。
- ^ a b “2011 Results” (英語). 2011年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月21日閲覧。
- ^ a b “【パイクスピーク2012決勝速報】もうひとつの日本人の活躍!”. ザッカー編集部スタッフのリレーコラム (2012年8月15日). 2012年9月15日閲覧。
- ^ “2012 Result” (英語). 2012年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月21日閲覧。
- ^ “【パイクスピーク15】ホンダ、エキジビションクラスに参加…次世代技術を検証”. Response 2021年4月6日閲覧。
- ^ “【ホンダミーティング15】4輪独立型ピュアEVを試乗…タイヤ1輪ずつにモーターを搭載”. Response 2021年4月6日閲覧。
- ^ a b “【パイクスピーク16】ホンダ NSX のEVレーサー、改造EVクラス2位…総合3位”. 2021年4月6日閲覧。
- ^ “「パイクスピークでOS技研がサポートする日本人選手がクラス優勝!」フォーミュラD吉原大二郎選手が快挙を達成!”. 2021年9月13日閲覧。
- ^ “The Broadmoor Pikes Peak International Hill Climb Brought to you by Gran Turismo 2020 Official Overall Results” (PDF). 2021年9月13日閲覧。
- 1 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムとは
- 2 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの概要
- 3 記録
- 4 日本勢の挑戦
- 5 WRC勢
- 6 脚注
固有名詞の分類
自動車レース |
NHRAチャンピオンシップ・ドラッグ・レーシング・シリーズ GP3 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム インターコンチネンタル・ラリー・チャレンジ フォーミュラ・ルノー3.5 |
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