バロック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 21:57 UTC 版)
特徴
ハインリヒ・ヴェルフリンはバロックを円に代わり楕円が構成の中心に据えられ、全体の均衡が軸を中心とした構成に取って代わり、色彩と絵画的な効果がより重要になり始めた時代と定義した。
このアナロジーを音楽に当て嵌めると、「バロック音楽」という表現は有用なものとなる。対照的なフレーズの長さ、和音、対位法はポリフォニーを時代遅れにし、オーケストラ的な色彩がより強く現れるようになる。同様に、詩の表現は単純で、力強く、劇的なものとなり、明快でゆったりしたシンコペーションのリズムがジョン・ダンのようなマニエリスム詩人の用いる洗練され入り組んだ形而上学的な直喩に取って代わった。バロックの叙事詩であるジョン・ミルトンの『失楽園』では視覚表現の発達に強く影響された想像力が感じられる。
絵画では、バロックの身振りはマニエリスムのそれに比べゆったりとしている。より両義的、不可解、神秘的でなく、むしろバロックの主要な芸術形態の1つであるオペラでの身振りに近い。バロックのポーズはコントラポスト(傾いだ姿勢)に頼っており、肩と腰の平面を反対方向にずらして置くフォルムの緊張感は今にも動き出しそうな印象を与える。
17世紀初頭にはヨーロッパ全土で激烈を極めた宗教戦争などあらゆる闘争が起こり、国家や社会が分裂した。その不安な時代において、連続的な運動と永続的な秩序との間にしかるべき関係を見出そうとする努力がなされ、そこから独特な心情的表現が生まれた。これが「バロック」である。強い激烈な印象を与える変化と対比など、これらすべては、動的で変化に富む自然と人間の感情から見出された新しい表現であった。
調和・均整を目指すルネサンス様式に対して劇的な流動性、過剰な装飾性を特色とする。「永遠の相のもとに[注釈 2]」がルネサンスの理想であり、「移ろい行く相のもとに」がバロックの理想である。全てが虚無であるとする「ヴァニタス」、その中で常に死を思う「メメント・モリ」、そうであるからこそ現在を生きよとする「カルペ・ディエム」という、破壊と変容の時代がもたらした3つの主題が広く見出される。
ルネサンスからバロック初期はイタリアが文化の中心であったが、バロック後期には文化の中心はフランスへ移ってゆく。
注釈
出典
- ^ Olívio da Costa Carvalho, Dicionário de português-francês, Porto Editora, 1996 ISBN 972-0-05011-X
- ^ Helen Hills Rethinking the Baroque
- ^ Albert Dauzat & al., Dictionnaire étymologique Larousse, 1989 ISBN 2-03-710006-X
- ^ Dictionnaire de L’Académie française, 1re édition. (オンライン版)
- ^ Dictionnaire de L’Académie française, 4e édition. (オンライン版)
- ^ Source : Claude Lebédel, Histoire et splendeurs du baroque en France, édition Ouest-France, Rennes, 2003.
- ^ Dictionnaire de L’Académie française, 7e édition. F. Didot, Paris, 1878 (オンライン版)
- ^ Heinrich Wölfflin, Renaissance und Barock: Eine Untersuchung über Wesen und Entstehung der Barockstils in Italien, 1888
- ^ Helen Gardner, Fred S. Kleiner, and Christin J. Mamiya, Gardner's Art Through the Ages (Belmont, CA: Thomson/Wadsworth, 2005), p. 516.
- ^ The Life of Marie de' Medici Archived 2003年9月14日, at the Wayback Machine.
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