ニッケル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/05 08:18 UTC 版)
歴史
アクセル・クロンステット(Axel Frederik Cronstedt)が1751年に単体分離[3]。
産地
ニッケル鉱石の生産は世界全体で134万トン(2009年現在)である。その内訳はロシアが19 %、オーストラリア14 %、インドネシア12 %、カナダ10 %、ニューカレドニア7 %となっている[8]。全世界での埋蔵量に占めるニューカレドニアの割合は25%と推定されている[9]。
鉱石としては、おもに蛇紋岩中に産出する珪ニッケル鉱(Garnierite、(Ni,Mg)3Si2O5(OH)4 とされるが、組成が一定しないので独立種とは認められていない)、磁硫鉄鉱などと共産するペントランド鉱(Pentlandite、(Fe,Ni)9S8)がおもに採掘されている。
精錬
かつては、オ-フォード法、モンド法、ヒビネット法[4]、徐冷選鉱法などが利用された。2000年代以降は電気精錬法が用いられる[10]。
国別の産出量
2011年における国別の産出量は以下の通りである[11]。
順位 | 国 | ニッケル鉱の産出量(万トン) | 全世界での割合(%) |
---|---|---|---|
1 | インドネシア | 29.0 | 14.8 |
2 | フィリピン | 27.0 | 13.8 |
3 | ロシア | 26.7 | 13.6 |
4 | カナダ | 22.0 | 11.2 |
5 | オーストラリア | 21.5 | 11.0 |
日本のニッケル鉱山と産出
日本では第二次世界大戦中、京都府与謝郡の大江山で開発されたニッケル鉱山で日本冶金工業が採鉱し、近くの製錬所でフェロニッケルに製錬、さらに川崎市の同社工場でニッケル合金として軍用に提供していた。また山口県においても、山口県周南市から岩国市にかけて断続的に蛇紋岩帯があり、昭和15年から20年にかけて金峰鉱山などで採掘が行われた。このほか千葉県の房総半島など、蛇紋岩帯の存在する地域で採掘が行われた。しかし、これは戦時体制による商業コストを度外視したものであり、ほとんどが終戦とともに閉山・廃鉱となった。
この金属は、日本国内において産業上重要性が高いものの、産出地に偏りがあり[注釈 1]供給構造が脆弱である。日本では国内で消費する鉱物資源の多くを他国からの輸入で支えている実情から、万一の国際情勢の急変に対する安全保障策として国内消費量の最低60日分を国家備蓄すると定められている。
2015年(平成27年)現在、ニッケルを日本国内で製錬しているのは、大平洋金属八戸製造所、日本冶金工業大江山製造所、住友金属鉱山日向製錬所である。
生物との関わり
ウレアーゼ(尿素分解酵素)やいくつかのヒドロゲナーゼ(分子型水素の酸化還元酵素)などは、その機能を発現するためにニッケルを取り込んでいる[12]。しかしながら、ニッケルは金属アレルギーを引き起こしやすい金属のひとつであり、WHOの下部組織IARCはニッケル化合物を「Group1:ヒトに対する発癌性が認められる化学物質」としている[注釈 2]。
注釈
出典
- ^ M. Carnes et al. (2009). “A Stable Tetraalkyl Complex of Nickel(IV)”. Angewandte Chemie International Edition 48: 3384. doi:10.1002/anie.200804435.
- ^ S. Pfirrmann et al. (2009). “A Dinuclear Nickel(I) Dinitrogen Complex and its Reduction in Single-Electron Steps”. Angewandte Chemie International Edition 48: 3357. doi:10.1002/anie.200805862.
- ^ a b 桜井弘『元素111の新知識』講談社、1998年、155頁。ISBN 4-06-257192-7。
- ^ a b 藤原唯義、「ニッケル及モネルメタルの採鑛と製錬」 『日本鑛業會誌』 1933年 49巻 575号 p.165-169, doi:10.11508/shigentosozai1885.49.165, 資源・素材学会
- ^ a b 藤井 2013, pp. 130–182, 第4章 金属工業のビタミン「レアメタル」
- ^ 深道和明, 斎藤英夫、「不感磁性インバー合金, エリンバー合金Cr基合金を中心にして」 『日本金属学会会報』 1976年 15巻 9号 p.553-562, 日本金属学会
- ^ a b 「GM、バーレとニッケル供給契約 EV電池コスト低減へ」『Reuters』、2022年11月18日。2022年12月8日閲覧。
- ^ 外務省 国際ニッケル研究会の概要
- ^ “楽園の暴動とニッケル市場”. ニューズウィーク日本版(2024年6月4日号). CCCメディアハウス. (2024-05-28). p. 30.
- ^ 黒川晴正、高石和幸、「住友金属鉱山ニッケル工場におけるニッケル・コバルト精錬」 『Journal of MMIJ.」 2007年 123巻 12号 p.678-681, doi:10.2473/journalofmmij.123.678, 資源・素材学会
- ^ 地理 統計要覧 2014年版 ISBN 978-4-8176-0382-1 P,96
- ^ 一島英治、『酵素の化学』 p.45
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