ジョルダン測度 ジョルダン測度の概要

ジョルダン測度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/24 05:22 UTC 版)

またジョルダン測度の定義は、そのような容積が(折れ線や三角形台形球体のような図形がそうであるように)より複雑な図形に対しても厳密に定まるために満たされるべき、適当な条件(可測条件)を明らかにするものである。しかし、与えられた集合が(古典的な意味での「容積」としての)ジョルダン測度を持つには、それが極めて素直英語版な性質を持つ必要がある(それでも実用上現れる集合の多くはそれを満足する)ことが分かっており、したがってそのような集合はある意味では限定的である(それゆえ、ジョルダン測度をより大きな集合のクラスに対して拡張したルベーグ測度を用いるのが現在ではより一般的である)。

歴史的に言えば、ジョルダン測度が最初に現れるのは19世紀の終わりにかけてであり、歴史的経緯で「ジョルダン測度」(Jordan measure) の語はすでに浸透した用法となってはいるが、現代的な定義で言えば真の測度 (measure) ではない(ジョルダン可測な集合全体は完全加法族をなさない)ことに注意が必要である。例えば、一点集合 {x} (xR) は何れもジョルダン測度零であるが、そのような集合の可算和になる Q[0, 1] はジョルダン可測でない[注釈 1]。文献によっては[1] Jordan content(ジョルダン容積、有限加法的ジョルダン測度)の語(有限加法的測度の項も参照のこと)を用いるものがあるのは、そのような事情による。

ペアノ–ジョルダン測度の名称はその創始者としてのフランス人数学者カミーユ・ジョルダンおよびイタリア人数学者ジゼッペ・ペアノ[2]に由来する。

線型汎函数としての「ジョルダン測度に関する(ルベーグ式の)積分」は(ルベーグ測度に関する(ルベーグ式の)積分がルベーグ積分であるというのと同じ意味で)リーマン積分である。

基本集合の測度

定義により、基本集合とは矩形の合併(重なってもよい)を言う。
矩形に重なりのある基本集合は重なりのない矩形の合併に分解しなおせる。

n次元ユークリッド空間 Rn で考える。初めに、左閉かつ右開な有界区間の直積集合

図の青い曲線で囲まれた領域が考える対象となる集合とする。この集合がジョルダン可測となる(つまり面積を持つ)ことの定義は、(図では緑で境界を表された図形のような)内側から近似する基本図形と(図では紫で境界を表された図形のように)外側から近似する基本図形を同時に考えるとき、それら内と外の二種類の基本図形のジョルダン測度(面積)がいくらでも近くなるようにできることである。

閉区間の直積集合 が基本集合でも球体でもないのだから、ここまでに見たジョルダン可測集合は、いまだ非常に限られているということは留意すべき点である。そこで次の段階として、基本集合で「適切に近似できる」("well-approximated") 有界集合がジョルダン可測であるようにすることは重要である。これはリーマン可積分函数を区分的に定数な函数で近似できるというのとちょうど同じ仕方である。

厳密に、有界集合 Bジョルダン内測度 (inner Jordan measure) を

で、またジョルダン外測度 (outer Jordan measure) を
で、それぞれ定義する(この上限および下限は、何れも基本集合 S のすべてに亙ってとる)。集合 Bジョルダン可測であるとは、B の内測度と外測度とが一致するときに言い、その共通の値を単に Bジョルダン測度と呼ぶ。

これにより、各辺が開または閉区間であるような任意の矩形は可測となることが分かり[注釈 2]、さらに任意の球体、単体などもまたジョルダン可測となる。同様に、2つの連続函数が与えられたとき、それら函数のグラフに挟まれた点全体の成す集合は、それが有界である限りにおいてジョルダン可測であり、2つの函数の共通領域もまたジョルダン可測である。ジョルダン可測集合からなる有限族の合併および交叉はジョルダン可測であり、同じように2つのジョルダン可測集合のもまたジョルダン可測となる。


注釈

  1. ^ 測度が定義される集合に「可測」と付けるのはよいが、ジョルダン容積(あるいはもっとほかの、有限加法的な「容積」)が定義される集合につけて呼ぶ一般的に受け入れられた呼称は特に存在しない。Munkres (1991)は求長可能な曲線に用いる "rectifiable" を一般にも用いることを提案した(その場合の訳は「求積可能」となるであろう)。他の提案名には、「許容、認容、可容」("admissible": Lang, Zorich); 「被覆可能、敷き詰め可能」("pavable": Hubbard); 「容積を持つ」("have content": Burkill); 「容積付けられた」("contented": Loomis and Sternberg) などがある
  2. ^ a b 特に、開区間(開矩形)および閉区間(閉矩形)の測度は半開区間に対するものと一致する[3]
  3. ^ 「現代数学における測度」の意

出典

  1. ^ Munkres, J. R. (1991). Analysis on Manifolds. Boulder, CO: Westview Press. pp. 113. ISBN 0-201-31596-3 
  2. ^ G. Peano, "Applicazioni geometriche del calcolo infinitesimale", Fratelli Bocca, Torino, 1887.
  3. ^ Jordan content of an n-cell - PlanetMath.(英語)
  4. ^ なぜならば、そのジョルダン内測度は補集合稠密であることから零となるが、他方でそのジョルダン外測度はそのルベーグ測度より小さくならない(実は一致する)から消えていない。
  5. ^ Volume - PlanetMath.(英語)。なお杉浦光夫『解析入門I』ではこれを体積確定(=ジョルダン可測)の定義としている。
  6. ^ Orrin Frink (1933-07). “Jordan Measure and Riemann Integration”. The Annals of Mathematics. 2 34 (3): 518-526. ISSN 0003-486X. JSTOR 1968175. 
  7. ^ 二次元の場合は新井仁之『ルベーグ積分講義』p.44証明がある


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