ガス人間第一号 スタッフ

ガス人間第一号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/08 10:20 UTC 版)

スタッフ

参照[8][9][30]

ノンクレジット(スタッフ)

製作

怪奇空想科学映画シリーズと銘打たれた検討用台本が『電送人間』の検討用台本とほぼ同時期に完成しており、当初よりシリーズ物として製作が進められた[43][44]。検討用台本では、体をガス化する宇宙人の話であった[43]

『電送人間』では当時多忙であった本多猪四郎に代わって福田純が監督を務めたが、本作品では本多が監督する予定だった『今日もわれ大空にあり』が製作中止になった[注釈 10]ため、監督を務めることとなった[43]。本多は、ガス人間の演出にあたってナメクジが煙とともに空中転移するという伝承をイメージしたという[45]

小松崎茂は以前の東宝特撮でメカニックデザインやそれに関連したピクトリアルスケッチを手掛けていたが、本作品では映画全体のストーリーボードを描いており、画面構成力の高さが映像にも反映されている[19]

音楽は宮内國郎が担当[46]。宮内は、本多や円谷から具体的な指示はなく、打ち合わせは助監督の梶田興治と行ったと述べている[46]。本作品のBGMは、後に宮内が音楽を担当した『ウルトラQ』や『ウルトラマン』に流用された[30]。『ウルトラマン』の初のサウンドトラック・アルバム『ウルトラマン 総音楽集』(1991年、キングレコード)は、ボーナス・トラックとして本作品のBGMが未使用分も含めて全曲収録されたほか、ライナーノーツには本作品のデータや解説、楽曲メニューなどが記載され、本作品のサウンドトラック・アルバムを兼ねた内容になっている。

劇中で藤千代が披露する「情鬼」は、本作品のために創作された演目である[47]。藤千代役の八千草薫は、宝塚出身で日本舞踊もこなせることから起用された[47]

藤千代の水野に対する感情について、土屋は一緒に自殺したのだから水野を愛していたのだろうと解釈している[28]。一方で、本多は情にほだされただけで根底では男女の愛情には至っていなかったと述べており、土屋の解釈については水野の立場であればそういう見方が当然だろうとしている[47]

英語版では、水野の独白から物語が始まるなど、オリジナルとは異なる編集となっている[1][4]。土屋は、英題の『The Human Vapor』が好きだと述べており、『ガス人間』ではおならをしているようで撮影中から気に入らなかったという[4]

特撮

本作品の特撮はガス人間の描写が中心となっており、前半部分には特撮が用いられていない[6]

本作品で最もスタッフが苦労したのは、人体がガス化したりガスが固まって人体に戻ったりという視覚効果である。特殊撮影の責任者である円谷英二は、過去に『美女と液体人間』で使用した「膨らませたゴム人形の空気を抜いてしぼませる」という方法で人間が溶かされていく描写を表現したが、本作品でも同様の方法を採用した[48]

ガス人間役の土屋嘉男の顔面および全身から形取りした本物そっくりの空気ゴム人形を作り、膨らませた状態で衣裳を着せ、ピアノ線で吊り上げて補助しながら立たせておく。衣裳の内側にはドライアイスの粒がいくつも仕込まれており、人形の足元にはぬるま湯を入れたタライがある。人形の空気を抜いてしぼませると衣裳内側のドライアイスが落下し、ぬるま湯の中に沈む。空気の減り具合に合わせてピアノ線の補助をゆるめて下ろしていけば、ゴム人形は衣裳と共にゆっくりとその場にへたり込み、襟や袖の隙間からモクモクとドライアイスの蒸気を吐き出す[20]。この仕掛けを足元のタライが写り込まないように撮影し、その上に光学合成で青白く光るガスを焼きつけ、「自由にガス化する超能力」を表現した[49]。このゴム人形がはっきりと映し出されるのは予告編のみである[11]。ドライアイスは他のシーンでも用いており、送風などで意志を持ったガスが動いているように演出している[21]

ガス化した状態の合成は、『電送人間』のように輪郭に合わせるのではなく、少し大きめに合成することで、膨張したガスの状態を表現している[11]

照明を担当した高島利雄は、合成の詳細がわからないまま、ここに人が入るのだろうという曖昧な想定で光を当てていたという[50]

クライマックスの劇場での火災はミニチュアによって表現されているが[48][11]、実際の建物からの映像の切り替えに違和感が少ないと評価されている[11]


注釈

  1. ^ 資料によっては、「THE HUMAN VAPOUR」と記述している[5][6]
  2. ^ a b ノンクレジット。
  3. ^ 予告編および完成版の題字では「1号」となっている。
  4. ^ 公開当時のポスターなどでは「空想科学映画第三弾」と表記されている[21]
  5. ^ 資料によっては、「小柄」[23]、「不明」[22]と記述している。
  6. ^ 資料によっては、「ライト級 - ほぼゼロ」[23]、「不明」[22]と記述している。
  7. ^ 書籍『モスラ映画大全』では、サングラスの男と記述している[31]
  8. ^ 書籍『モスラ映画大全』では、チンピラと記述している[33]
  9. ^ 書籍『モスラ映画大全』では、金庫前の死体と記述している[36]
  10. ^ その後、監督を古澤憲吾に変更して1964年に公開された。
  11. ^ 書籍『ゴジラ大全集』では、ヨーロッパで特に好評であったと記述している[52]
  12. ^ 土屋が田中から聞いたことろによれば、アメリカ側と金銭面での折り合いがつかなかったため流れたとのことであった[4]。土屋は、下手に二番煎じになるよりは流れて正解であったと語っている[4]

出典

  1. ^ a b ゴジラ大百科 1993, pp. 146–147, 構成・文 中村哲「東宝SF/怪獣映画・海外版大研究」
  2. ^ a b ゴジラ画報 1999, p. 93, 「ガス人間第1号」
  3. ^ a b c 東宝特撮映画大全集 2012, p. 50, 「『ガス人間第一号』」
  4. ^ a b c d e f g h i ゴジラとともに 2016, pp. 38–40, 構成・文 友井健人「土屋嘉男」(『シネマバー ザ・グリソムギャング』イベント〈2009年5月〉と『新文芸坐』イベント〈2011年2月〉)
  5. ^ a b ゴジラグラフィティ 1983, p. 36, 「PART.2 ガス人間第1号」
  6. ^ a b c d e ゴジラ来襲 1998, pp. 44–45, 「第2章 東宝・怪獣SF特撮映画の歩み 第1期(1954-1962)」
  7. ^ a b 東宝特撮未発表資料アーカイヴ 2010, p. 421, 中村哲「第3部 作品解説」
  8. ^ a b c d e f g h 映画資料室”. viewer.kintoneapp.com. 2022年2月19日閲覧。
  9. ^ a b c d e 東宝特撮映画全史 1983, pp. 545–546, 「東宝特撮映画作品リスト」
  10. ^ a b c d 本多全仕事 2000, p. 123, 「本多猪四郎作品リスト」
  11. ^ a b c d e f g 円谷英二特撮世界 2001, p. 75, 「ガス人間第1号」
  12. ^ a b キャラクター大全 2014, p. 47, 「東宝特撮映画リストACT.2」
  13. ^ 本多全仕事 2000, p. 30, 「本多猪四郎特撮映画の世界」
  14. ^ a b c d e f g 動画王特別編集ゴジラ大図鑑 2000, pp. 42–44, 「コラム1 変身人間の系譜」
  15. ^ a b 東宝ゴジラ会 2010, p. 294, 「円谷組作品紹介」
  16. ^ a b c d e f g h 東宝特撮全怪獣図鑑 2014, p. 25, 「ガス人間第1号」
  17. ^ ガス人間第一号 The Human Vapour”. 本多猪四郎オフィシャルサイト. 2015年10月29日閲覧。
  18. ^ 作品詳細「金づくり太閤記」”. キネマ写真館Ⓡ 日本映画写真データベース. 映画演劇文化協会. 2015年10月29日閲覧。
  19. ^ a b ゴジラ大全集 1994, p. 174, 「総天然色 東宝空想絵画館 ガス人間第1号」
  20. ^ a b c 東宝特撮映画大全集 2012, p. 53, 「『ガス人間第一号』撮影秘話/川北監督に訊く」
  21. ^ a b c d 超常識 2016, p. 308, 「東宝変身人間映画の系譜」
  22. ^ a b c d 全怪獣大図鑑 2021, p. 261, 「怪物、怪人、宇宙人」
  23. ^ a b c d ゴジラ来襲 1998, p. 199, 「第7章 特選!東宝怪獣名鑑'98」
  24. ^ a b 怪獣大全集 1991, p. 68, 「東宝モンスター名鑑」
  25. ^ a b c GTOM vol.0 2022, p. 23, 「ガス人間㐧一号」
  26. ^ キャラクター大全 2014, p. 128, 「SF・特撮映画全集1」
  27. ^ 東宝特撮映画大全集 2012, p. 52, 「『ガス人間第一号』怪人図鑑/兵器図録/資料館」
  28. ^ a b c d 東宝SF特撮映画シリーズ5 1986, p. 147, 「土屋嘉男ロングインタビュー」
  29. ^ a b c 東宝特撮映画全史 1983, p. 536, 「主要特撮作品配役リスト」
  30. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af 東宝特撮映画大全集 2012, p. 51, 「『ガス人間第一号』作品解説/俳優名鑑」
  31. ^ モスラ映画大全 2011, p. 145, 「脇役俳優辞典41」
  32. ^ モスラ映画大全 2011, p. 63, 「脇役俳優辞典21」
  33. ^ モスラ映画大全 2011, p. 35, 「脇役俳優辞典10」
  34. ^ モスラ映画大全 2011, p. 15, 「脇役俳優辞典01」
  35. ^ モスラ映画大全 2011, p. 123, 「脇役俳優辞典34」
  36. ^ モスラ映画大全 2011, p. 71, 「脇役俳優辞典25」
  37. ^ モスラ映画大全 2011, p. 125, 「脇役俳優辞典35」
  38. ^ a b 「俳優名鑑」『東宝特撮映画DVDコレクション』第12号、デアゴスティーニ・ジャパン、2010年3月、9頁、雑誌コード:22765-3/30。 
  39. ^ モスラ映画大全 2011, p. 133, 「脇役俳優辞典39」
  40. ^ a b c 田野辺尚人 編「ゴジラ俳優名鑑」『別冊映画秘宝 初代ゴジラ研究読本』洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2014年8月24日、108,110頁。 
  41. ^ モスラ映画大全 2011, p. 105, 「脇役俳優辞典32」
  42. ^ 中野昭慶、染谷勝樹『特技監督 中野昭慶』ワイズ出版〈ワイズ出版映画文庫〉、2014年、70頁。ISBN 978-4-89830-280-4 
  43. ^ a b c 東宝特撮映画大全集 2012, p. 48, 「『電送人間』撮影秘話-特別編-」
  44. ^ 鈴木宣孝「『怪奇空想科学映画シリーズ』の誕生」『東宝特撮映画DVDコレクション』第51号、デアゴスティーニ・ジャパン、2011年9月、9頁、雑誌コード:20694-9/27。 
  45. ^ 「本多猪四郎監督 長編インタビュー(3)」『海底軍艦/妖星ゴラス/宇宙大怪獣ドゴラ』東宝出版事業室〈東宝SF特撮映画シリーズ VOL.4〉、1985年8月1日、203頁。ISBN 4-924609-13-7 
  46. ^ a b 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, pp. 120–121, 「東宝チャンピオンまつりスタッフインタビュー10 宮内國郎 再録」
  47. ^ a b c 東宝SF特撮映画シリーズ5 1986, p. 165, 「本多猪四郎監督 長編インタビュー(4)」
  48. ^ a b 東宝特撮映画全史 1983, pp. 192–193, 「東宝特撮映画作品史 ガス人間第一号」
  49. ^ 山本真吾 編『円谷英二の映像世界』実業之日本社、1983年、187頁。 
  50. ^ モスラ映画大全 2011, p. 49, 聞き手・中村哲 友井健人「インタビュー 照明 高島利雄」
  51. ^ a b 怪獣大全集 1991, pp. 94–95, 「土屋嘉男インタビュー SFが大好きです」
  52. ^ ゴジラ大全集 1994, pp. 58–59, 「東宝特撮映画史 ゴジラ誕生 特撮路線の確立」
  53. ^ 怪獣大戦争』のDVDでの土屋嘉男オーディオコメンタリーより。
  54. ^ ゴジラ大全集 1994, p. 73, 「未発表企画あれこれ」
  55. ^ a b 東宝特撮映画大全集 2012, p. 96, 「『フランケンシュタイン対地底怪獣』資料館」
  56. ^ a b ゴジラ大全集 1994, p. 64, 「東宝特撮映画史 ゴジラ誕生 怪獣新シリーズの展開」
  57. ^ 東宝特撮未発表資料アーカイヴ 2010, pp. 260–290.
  58. ^ ゴジラ大百科 1993, pp. 132–133, 「幻のゴジラ映画大公開!」
  59. ^ 日本特撮映画図鑑 1999, p. 140, 「東宝特撮作品 ビデオLDラインナップ 特撮シリーズ」
  60. ^ 変身人間シリーズ Blu-ray 2枚組”. 東宝WEB SITE. 東宝. 2022年1月28日閲覧。
  61. ^ 舞台「ガス人間第1号」〈ステージ〉”. OZmall. スターツ出版. 2015年10月29日閲覧。
  62. ^ a b 「新感染」韓国ホラー監督が蒼井優と小栗旬主演で日本映画「ガス人間」をリメーク!」『よろず〜ニュース』デイリースポーツ、2024年5月7日。2024年5月8日閲覧。

出典(リンク)







固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ガス人間第一号」の関連用語

ガス人間第一号のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ガス人間第一号のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのガス人間第一号 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS