カリブ海 人文

カリブ海

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 01:39 UTC 版)

人文

カリブ海沿岸には多くの人々が住むが、人口分布には濃淡がある。南アメリカ大陸にはコロンビアカルタヘナバランキージャ、サンタ・マルタ、ベネズエラマラカイボや、沿岸都市ではないものの首都カラカスなどの大都市が点在し人口も多い。小アンティル諸島や西インド諸島も、小島が多いものの人口は稠密である。ドミニカ共和国の首都サント・ドミンゴや、ジャマイカの首都キングストンなどの大都市もある。これに比べ、カリブ海西岸に当たる中央アメリカ沿岸部には熱帯雨林が広がり、開発がほとんど進んでいないため人口も少ない[22]。沿岸各国はそれぞれカリブ海に輸出港を構えており、パナマコロン市、コスタリカのリモン、ホンジュラスのプエルト・コルテス、グアテマラのプエルト・バリオス、ベリーズのベリーズシティなどの都市はあるが、コロン市を除きどの都市も人口10万を超えることはなく、比較的小規模な都市が多い。このほか、ホンジュラスのカリブ沿岸は平地が多く20世紀に入ってから急速にバナナなどのプランテーションが開発され、バナナ産業を基盤とするホンジュラスラ・セイバなどの小都市が成立しているものの、中央アメリカ諸国の中心は太平洋側の中央高原にある。

カリブ海沿岸地域の民族・言語構成は多様である。民族的には沿岸人口の多くは16世紀以降に移民してきたスペイン人や、彼らと先住民たちの間の混血が多数派を占めている。小アンティル諸島やハイチにおいては、奴隷としてアフリカから17世紀以降につれてこられた黒人の子孫が多数派を占める。先住のインディオ達はほとんどおらず、各地の辺境にわずかに残るのみとなっている。混血していないカリブ族はわずかに残っているが、多くは黒人と混血し、ブラック・カリブ、またはガリフナと呼ばれる一つの民族を形成した。また、19世紀以降サトウキビプランテーションの労働者として連れてこられたインド人たちも沿岸諸国に多数定着しており、ヒンドゥー教イスラム教を守り独自の文化を保ち続けている。沿岸部の宗教は、ほぼ旧宗主国に準じており、大陸部においてはローマ・カトリックが圧倒的であるが、小アンティルなどプロテスタントの信仰が強い地域も存在する。

最も多く使用される言葉はスペイン語で、南北アメリカ大陸、およびキューバやドミニカ共和国など、沿岸地域の大国のほとんどはスペイン語圏である。それに対し、とくに小アンティル諸島の言語構成は複雑であり、英語フランス語オランダ語など旧宗主国の言語圏が島ごとに細かく分かれている。大陸部でもベリーズは英語圏である。こうしたことからカリブ海域、とくに小アンティル諸島やジャマイカなどはラテンアメリカとは厳密には呼べない。これを考慮して1948年国際連合の下部組織として設置された国連ラテンアメリカ経済委員会が、1984年に国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会に改称[23]されたように、カリブ海諸国の独自性を考慮した動きもある。旧宗主国の公用語とは別に、ハイチのハイチ語やカリブ海各地のガリフナたちのガリフナ語、ABC諸島におけるパピアメント語といったクレオール言語も各地に存在する。

カリブ海沿岸の17の英語圏諸国は、共同で西インド諸島大学を設立している[24]


  1. ^ The Caribbean Sea World Wildlife Fund. Website last accessed 5 December 2009
  2. ^ The Caribbean Sea All The Sea. URL last accessed May 7, 2006
  3. ^ 「『現代用語の基礎知識』特別編集 国際情勢ベーシックシリーズ9 ラテンアメリカ 第2版」 p150-151 自由国民社 加茂雄三ほか著 2005年2月10日第2版第1刷
  4. ^ 「地球を旅する地理の本 7 中南アメリカ」p165 大月書店 1993年11月29日第1刷発行
  5. ^ 「マヤ文明 密林に栄えた石器文化」p198 青山和夫 岩波新書 2012年4月20日第1刷
  6. ^ 「地球を旅する地理の本 7 中南アメリカ」p167 大月書店 1993年11月29日第1刷発行
  7. ^ 国本伊代・小林志郎・小沢卓也『パナマを知るための55章』p54 エリア・スタディーズ、明石書店 2004年
  8. ^ 「略奪の海カリブ」p104 増田義郎 岩波書店 1989年6月20日第1刷
  9. ^ 「略奪の海カリブ」p138-139 増田義郎 岩波書店 1989年6月20日第1刷
  10. ^ 「『現代用語の基礎知識』特別編集 国際情勢ベーシックシリーズ9 ラテンアメリカ 第2版」 p157 自由国民社 加茂雄三ほか著 2005年2月10日第2版第1刷
  11. ^ 「中米の奇跡コスタリカ」寿里順平 東洋書店 平成2年5月5日2版1刷
  12. ^ 「『現代用語の基礎知識』特別編集 国際情勢ベーシックシリーズ9 ラテンアメリカ 第2版」 p160 自由国民社 加茂雄三ほか著 2005年2月10日第2版第1刷
  13. ^ 「ラテンアメリカを知る事典」p119 平凡社 1999年12月10日新訂増補版第1刷
  14. ^ 「中部アメリカ」(世界地誌シリーズ10)p104-105 石井久生・浦部浩之編 朝倉書店 2018年3月20日初版第1刷
  15. ^ 「中部アメリカ」(世界地誌シリーズ10)p106-107 石井久生・浦部浩之編 朝倉書店 2018年3月20日初版第1刷
  16. ^ 「中部アメリカ」(世界地誌シリーズ10)p111-113 石井久生・浦部浩之編 朝倉書店 2018年3月20日初版第1刷
  17. ^ 「現代中米・カリブを読む 政治・経済・国際関係」(異文化理解講座8)p178 小池康弘編 国際交流基金 2008年3月31日1版1刷発行
  18. ^ 「世界地理14 ラテンアメリカⅠ」p313-315 福井英一郎編 昭和53年9月25日初版第1刷 朝倉書店
  19. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3027347 「過去20年に大きな被害を出した火山噴火一覧」AFPBB 2014年09月29日 2015年2月11日閲覧
  20. ^ 二村久則編集『コロンビアを知るための60章』エリアスタディーズ90  24ページ 明石書店 2011年6月30日初版第1刷 
  21. ^ Status of coral reefs in the Caribbean and Atlantic Ocean World Resource Institute. URL accessed on April 29, 2006.
  22. ^ 「世界地理14 ラテンアメリカⅠ」p258 福井英一郎編 昭和53年9月25日初版第1刷 朝倉書店
  23. ^ 「国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会」”. 外務省 (2016年7月7日). 2020年6月13日閲覧。
  24. ^ 「現代中米・カリブを読む 政治・経済・国際関係」(異文化理解講座8)p179-180 小池康弘編 国際交流基金 2008年3月31日1版1刷発行
  25. ^ a b An Overview of Land Based Sources of Marine Pollution Caribbean Environment Programme. URL last accessed May 14, 1 B.C.
  26. ^ LME 12: Caribbean Sea NOAA Fisheries Northeast Fisheries Science Center Narragansett Laboratory. URL last accessed May 14, 2006.
  27. ^ Reefs at Risk in the Caribbean: Economic Valuation Methodology World Resources Institute 2007.
  28. ^ パナマ運河を超えるニカラグア運河、まもなく着工予定”. WIRED.jp (2014年7月27日). 2015年2月11日閲覧。
  29. ^ Nicaragua announces start of China-backed canal to rival Panama ロイターBY GABRIEL STARGARDTER
  30. ^ ニカラグアの運河、12月着工 総延長パナマの3倍






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