サウダージ
「サウダージ」とは・「サウダージ」の意味
「サウダージ」とは、ポルトガル語で「郷愁」「哀愁」など、今は無いものや昔のことを思い出して切なく思う気持ちを意味する。サウダージ(saudade)は、ポルトガル語の中でも正確な語源が分からないとされている言葉のひとつ。発音によって「サウダーデ」と言うこともある。植民地時代にブラジルに移民したポルトガル人が、心の中に持ち続けていた故郷ポルトガルへの思いや、愛した人・失った人を思い出して切なく思う気持ちを表したという説が有力となっている。しかし、単純に懐かしむ・悲しむということではなく、温かい両親に育てられたことや昔よく遊んだ人への思いなど、今になってはどうやっても手の届かない過去に対する「憧れ」的な意味も含むなど、心の微妙な動きを表現しているため、他の言葉には簡単に置き換えることができない複雑なニュアンスを含んでいる。なお、ラテン語で「孤独」を意味する「solitate」が語源という説もある。
外国語の中には、サウダージのようにその国の歴史や人々の生活環境などによって生まれた独自の言葉があるため、一言で他言語に翻訳することが困難な言葉がある。特にポルトガル語の翻訳は難しいとされているが、サウダージはその中のひとつである。アイルランド出身の作家「エラ・フランシス・サンダース」が2014年9月に刊行しベストセラーとなった「翻訳できない世界の言葉」には52の単語が紹介されているが、その中にはサウダージも含まれている。また、ポルトガルの隣国スペインでも使われており、スペイン語では「ノスタルジー」「懐旧の情」などの意味を持つ。ただし、辞典などでは「あくまでもサウダージが持つ多面的な意味を補う単語であり、サウダージそのものに対する意味ではない」という表記となっている。
このように解釈の難しいサウダージという単語が日本に浸透した理由は、音楽であるという説が強い。1959年にブラジル人歌手のジョアン・ジルベルトが歌った「想いあふれて(Chega de Saudade)」はボサノヴァの元祖と言われており、今も多くの人々に愛されている名曲である。そのささやくような歌声と切ないメロディーはブラジルで大ヒットとなり、多くの歌手が歌い継いだことで後年、日本でも人気の楽曲となった。また、現代の日本ポップスでもサザンオールスターズの「SAUDADE~真冬の蜃気楼~」や、ポルノグラフィティの「サウダージ」などのヒットにより、その意味は伝わらなくとも「サウダージ」の言葉は広く知られるようになった。
「サウダージ」の熟語・言い回し
ポルトガルやブラジルでは日常的に使われるが、日本においてサウダージという言葉を会話の中で使うことは少ない。そのため日本語ではサウダージに関連する熟語やよく使う言い回しなどはほとんど見当たらないが、映画や楽曲などの解説や本の書評などの芸術関係において第三者的な立場から使われることがある。例としては、一言では言い表せない主人公の心の揺れ動く様子を表現するときに「この作品には主人公のサウダージが描かれている」や、亡くなってしまった人や故郷を思い出している際に「サウダージが胸を締め付けているようだ」のように使われる。現地では、例えば長く住み慣れた家を手放す際に「私はこの家にサウダージを感じる」や、親しい人が亡くなったときに「あなたへのサウダージを抱く」「あなたがいなくなってサウダージで苦しい」などのように使われることが多い。
サウジサウダージとは
サウジサウダージは、1988年10月2日から続いているJ-WAVEのラジオ音楽番組である。サウダージに健康や乾杯を表わす「サウジ」を付けた造語で、ヨーロッパやブラジル、ラテンアメリカなどの音楽を紹介している。放送時間は日曜日の17時から17時54分までで、ナビゲーターは滝川クリステルが担当している。
サウダージ
(Saudade から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/24 01:59 UTC 版)
サウダージ(ポルトガル語: saudade, サウダーデとも)とは、郷愁、憧憬、思慕、切なさ、などの意味合いを持つ、ポルトガル語 , ガリシア語の単語。ポルトガル語、およびそれと極めて近い関係にあるガリシア語に独特の単語とされ(そのため、日本語への翻訳もできない)、他の言語では一つの単語で言い表しづらい複雑なニュアンスを持つ。ガリシア語ではこの語はあまり使われず、一般に類義語のモリーニャ(morriña)が同様の意味で使われる。
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- 1 サウダージとは
- 2 サウダージの概要
- 3 語源
- 4 特徴
- 5 サウダシスモ
- 6 外部リンク
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