チョクラルスキー法
Cz法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 05:45 UTC 版)
材料となる粗く砕かれた高純度多結晶シリコンは、石英のるつぼに詰められる。この段階で最終的な半導体の特性を決める微量の導電型不純物である、P型ならホウ素 (B) を、N型ならリン (P) やアンチモン (Sb) を加えておく。石英るつぼは不活性ガスで満たされた炉内に納められると、周囲からカーボンヒーターで加熱されて多結晶シリコンはやがて溶融する。溶けたシリコン液相表面の温度は溶解温度となるように厳密に管理され、その表面中心にピアノ線で吊るされた種結晶を接触させた後、ゆっくりと回転させながら引き上げていく。種結晶が接触した下部ではわずかに冷やされたシリコンが固体となって析出し種結晶の結晶配列を引き継いで溶解シリコン表面との間に成長してゆく。溶解シリコンから引き上げて成長させる過程で、引き上げ速度を少し上げたり溶解シリコンの温度を少し上げると結晶径が減少し、その逆は結晶径が拡大する。 種結晶はそれまでに作ったシリコン単結晶の残余であるが、内部に原子配列の転位が含まれている可能性があるため、下に成長してゆくシリコンへこの乱れが引き継がれないように「種しぼり」(ネッキング)と呼ばれる意図的に3 – 5 mm程度まで細くした部分を作る。この種しぼりによって結晶に転位が存在していても熱拡散によって転位が上方に移動するので無転位となる。また、結晶欠陥は転位が表面に移動することで結晶界面のエネルギーを減じることも欠陥が排除されることになる。種しぼり後は、るつぼの温度を下げて溶解シリコンを過冷却状態にする。望む口径のインゴットとなるように、溶解シリコンの温度、引き上げ速度、回転数を調整しながらゆっくりと回転させて引き上げていく。2000年代後半現在最新の直径300 mmインゴットは重さ350 kgにもなる。 石英製るつぼの表面から溶解シリコン中に酸素が混入するが、多くがSiOとして融解シリコン表面からガスとなって蒸発し炉壁などに付着して微粒子となる。この微粒子が再び融解シリコン表面に落下して結晶内に取り込まれると転位結晶となるため、炉の上部からアルゴンガスを導入して真空ポンプで吸引しSiOガスを排除することでこの影響を小さくする。また、炉壁から対流によって直接、結晶中に取り込まれる酸素を少なくするために、超伝導電磁石による静磁場を炉内に印加して溶解シリコン内の対流を抑制するMCZ法(Magnetic CZ法)が使われる。また、融解シリコンから出たSiOガスが炉内のヒーターとして使われるグラファイトと反応してCOやCO2が発生している。これを放置すると融解シリコンに溶け込み結晶中に取り込まれて炭素濃度を高めることになるのでこのためにもアルゴンガスで排気されている。偏析係数が1より小さい炭素 (0.07) や窒素 (7×10-4) 、ホウ素 (0.8) 、リン (0.35) といった不純物の濃度は結晶の成長に従って石英るつぼ中の融解シリコン液の減少により徐々に濃くなるため、結晶成長初期より終期の方が結晶中に取り込まれる不純物の濃度は高くなる。偏析係数が1より大きい不純物はこの逆の効果が起きる。酸素の偏析係数が1より大きいか小さいかは結論が出ていない。ドーパントとしてリンよりホウ素が選ばれるのは偏析による偏りが比較的小さいためである。 CZ法は大口径の単結晶が作りやすく、2000年代現在では量産半導体で使用される[100]方位の大口径ウェハー用の単結晶インゴットは、すべてこの方法により作られている。例外として結晶の成長方向にそって抵抗率の変化が大きいという問題により、パワーデバイスにはあまり用いられない。
※この「Cz法」の解説は、「シリコンウェハー」の解説の一部です。
「Cz法」を含む「シリコンウェハー」の記事については、「シリコンウェハー」の概要を参照ください。
- CZ法のページへのリンク