A300-600の開発
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「エアバスA300」の記事における「A300-600の開発」の解説
詳細は「エアバスA300-600」を参照 エアバス・インダストリーはA310だけでなく、A300への新技術投入も早くから考えていた。新しいA300では、A310との競合を避けるため座席数を少し増やしつつ、A310と同じ2人乗務のコックピットを導入してA300とA310の運航の共通性を高めることになった。この次世代型A300の機体構造はA300B4をベースに開発され、正式な型式名はA300B4-600と名付けられたが、一般的にA300-600と呼ばれるようになった。本項では以下、A300-600より前に開発されたA300シリーズをA300第1世代、A300-600およびその派生型をA300-600シリーズと呼ぶ。 2人乗務のコックピットは、A300第1世代の頃から研究されていた。A300第1世代の通常仕様では、航空機関士が操作する機器類は主にコックピット内の右舷側にあるが、エンジン始動後は航空機関士が前方向きに座って飛行できるよう操作パネルが配置されていた。エアバス・インダストリーは、この考えを一段と進めて航空機関士を必要とせず操縦士2名だけでの運航も可能なFFCC(Forward Facing Crew Cockpit の略)と呼ばれるコックピットを開発した。A300のFFCC仕様機は1981年10月6日に初飛行し、ワイドボディ機として世界初となる操縦士2名だけでの飛行を3時間40分実施した。FFCC仕様機の試験は順調に進み、1982年にガルーダ・インドネシア航空に対して初引き渡しが行われた。また、1980年代前半にA300の垂直安定板の前縁や主脚扉などをCFRP製とした試作品の開発や実証試験も行われていた。 これらの取り組みやA310で蓄積された技術がA300-600に反映された。A300-600の開発では、A300第1世代より航続力と搭載力を強化すること、そして、可能な限りA310との共通性を持たせて開発・生産コストや航空会社の運用コストを抑えることを目指して以下の点などが変更された。 A300B4の後部胴体を平行部分を3フレーム(1.59メートル)延長する一方で、2フレーム短縮されたA310の尾部を流用し、座席を1列 - 2列分(8 - 16席)増やしつつ胴体延長による重心・尾翼間距離の変化を抑えた。 主翼も改良が加えられ、動翼が簡素化されたほか、翼型や空力学的特性がA310の新型主翼に近づけられた。失速特性も改善され主翼のスラットのフェンスが不要になり除去された。 水平尾翼はA310と同じ小型のものに変更された。 フライ・バイ・ワイヤ等の採用でコックピットはA310とほぼ共通化され、2人乗務での運航が標準となったほか、操縦士の操縦資格もA310とA300-600とで共通化された。 上記の主翼の改良や小型水平尾翼の採用、フライ・バイ・ワイヤの導入に加え、複合材料の使用拡大、小型軽量の補助動力装置の採用、カーボンブレーキの採用、客室装備等の軽量化により全体で2トンの軽量化を実現した。 エンジンはGE製CF6シリーズとP&W製のJT9Dシリーズであるが、燃料消費率や推力が向上した改良型に変更された。 生産の途中からは、翼端渦を抑えて揚抗比を向上させるため、主翼の翼端にウイングチップ・フェンスと名付けられた矢尻状の板が追加された。 A300-600を最初に発注したのはサウジアラビア航空(現・サウディア)で、その内容はJT9Dエンジン装備仕様を11機であった。これにより1980年12月6日にA300-600の開発が正式決定された。A300・A310通算252号機がA300-600の初号機となり1983年7月9日に初飛行した。型式証明のための飛行試験には3機が用いられ、飛行回数はのべ232回、飛行時間は計506時間の試験が行われた。1984年3月9日に型式証明が交付され、同月25日にサウジアラビア航空に対して初納入されて翌月に初就航した。1985年までにサウジアラビア航空に加えてクウェート航空、タイ国際航空でもA300-600の就航が始まった。
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