陪審員候補者団の構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 07:41 UTC 版)
「陪審員の選任」の記事における「陪審員候補者団の構成」の解説
法域にもよるが、陪審員の選任手続の第1段階は、陪審員候補者団 (jury pool, or venire) を構成することである。陪審員候補者団とは、陪審の任務のために選ばれた人々の集まりであり、ここから陪審員が選ばれる。陪審員候補者を選び出す方法は、選挙人名簿、運転免許者リスト、その他その地域の住民が広く載っている名簿(納税者名簿や電気・水道等の利用者など)からの無作為抽出である。最近では、裁判所が複数の名簿を組み合わせて陪審員の親リストを作成しているところもだんだん増えている。アメリカ合衆国で最もよく使われている名簿の組み合わせは、選挙人名簿と運転免許者リストであり、19州で採用されている。 陪審員となる資格があれば、必ず陪審員の職務を引き受けなければならないというわけではない。ほとんどの法域で、陪審員の職務からの免除事由を限定的に定めており、免除事由があれば陪審員の職務を辞退することができる。最も一般的な免除事由は、職業によるものである(例えば、医師、消防士、政治家、警察官を含め刑事司法に携わる職業の人など)。伝統的に、職業による免除事由は、その人の独自の技術や仕事が地域社会にとって不可欠なものであり、長期間その人がいないと地域社会が難渋するという場合に限られてきた。その他の一般的な免除事由は、過去一定期間(12か月から24か月のことが多い)内に陪審員(小陪審又は大陪審)を務めた人たち、自分しか幼児の世話をする人がいない人、成人の無能力者などである。宗教的・主義的な理由から免除を受けることもできる(宗教的信条により宣誓及び陪審の職務が禁じられているエホバの証人など)。また、宗教的又は道徳的な理由から他人に対する裁判に参加することは間違いであるとの信条を持っている人も、免除を受けることができる。アメリカのいくつかの法域では、前に法律の教育を受けたことがある人や弁護士も、法律の専門家は他の陪審員に影響を与えすぎるおそれがあるとの考えから、免除対象となることがあるが、近年では、多くの法域でこの免除事由は削除されている。裁判所は、このほか、病気やけが、経済的な困窮や、極めて不都合な事情があるといった場合に陪審の任務を免除することができる。 次に、選任手続により陪審員が選ばれる。すべての陪審員を選ぶ前に陪審員候補者団が尽きてしまった場合は、裁判所の書記官は、陪審員候補者の集合場所から更に候補者を送ってもらわなければならない。もし、追加の候補者が集合場所ですぐに手に入らないときは、ほとんどの法域で、裁判所が補欠陪審 (tales jury) を選び出すことが認められている。補欠陪審は、裁判所から執行機関(警察等)に対する、その地域のどこか公共の場所で陪審資格のある個人を見付け出してくるようにとの命令に基づいて、裁判所に連れてこられた陪審員(補欠陪審員という)により構成されるものである。これは、広範囲の名簿から無作為に陪審員を選出するという、より一般的な手続からは、外れたやり方である。 多くの法域で、被告人には、より公平な裁判が受けられると思われる場所への法廷地 (venue) の変更を求めることが認められている。法廷地の変更は、陪審員候補者団に事件が広く知れ渡っていることによる影響があるときに、必要になる場合がある。 連邦裁判においては、不適切な管轄を理由とする移送の申立(Motion to transfer for improper venue)や法的公正を理由とする移送の申立(Motion to transfer for interest of justice)が認められて法廷地(または管轄裁判所)が変更される場合がある。
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