重機及び搬送車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 08:18 UTC 版)
大規模災害時に 障害物の除去や道路啓開(けいかい)を行うための重機と搬送車の事。重機は多くがキャタピラーを履いた装軌車両。阪神・淡路大震災の教訓から東京消防庁が消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)を創設し 道路啓開用の重機が配備された。現在、東京消防庁には遠隔操作も可能な大小のドラグショベル(パワーショベル)とトラクターショベル(ホイールローダー。以前はブルドーザー)を保有している。ドラグショベルとトラクターショベルはそれぞれ、第二消防方面本部(日立製・川崎重工製)、第六消防方面本部(CAT製・川崎重工製・日立製)、第八消防方面本部(日立製・川崎重工製)、第九消防方面本部(CAT製・川崎重工製)の重機がそれぞれの消防救助機動部隊に配備されている。また、ドラグショベルは第六消防方面本部のCAT製を除き、すべて、ブレードと移動式アームクレーン仕様になっており、なおかつ7トンクラスの大型と1トンクラスの小型の2台セットになっている(第六消防方面本部は7トンクラスのみで、クレーン装備と、ブレード装備はなし)。また、7トン用アタッチメント4種類(掘削用バケット、掴み用油圧旋回フォーク、油圧カッター、油圧ブレーカー、交換用カプラー、1トン用アタッチメント2種類、掘削用バケット、油圧フォークがある。7トンクラスは解体用のヘッド・フロントガードと5本ほどの油圧配管が備えられている。また、1トンクラスは油圧配管が1本ある。トラクターショベルに関しては、バケットと、フォークリフトのようなフォークの2種類のアタッチメントがある。ドラグショベル7トンクラスは全体を覆うキャビンタイプであるが、ドラグショベルの1トンクラスとトラクターショベルは、屋根だけの、キャノピタイプである。また、重機運搬車は2台あり、20トン超の4軸の大型トラックタイプである。装備は、重機を下ろすときのスロープとハイジャッキ(荷台を持ち上げるめにの長いタイプのジャッキ)アタッチメントセットと台座である。クレーンなどは装備していない。1号車はドラグショベルを、2号車はトラクターショベルを積載するが、第六消防方面本部と、第八方面消防本部の消防機動救助部隊の車輌は、2号車はそれぞれ、双腕重機と、救出救助車をトラクターショベルと載せ替えで運用される。また、第七消防方面本部にある即応対処部隊にも重機が配備されているが、それは消防救助機動部隊の独自購入重機とは違い、総務省消防庁から貸与されたコベルコ製5トン重機と三菱ふそう製の運搬車のセットであり、救助用エアボート(6人乗り大型•4人乗り小型)及び全地形対応車と載せ替えて運用されている。 また、東京消防庁第六消防方面本部の消防救助機動部隊と川崎市消防局中原消防署は2本のアームを持っているパワーショベルで日立製の「双腕重機」を配備している。これは、2本の腕で掴み、切断の両方が出来る重機である。左右に2本の腕が取り付けられていて、それぞれに、配管と油圧フォークや、油圧カッターが備えられている。そして、ブレードとキャブのガードもついている。加えて、横浜市消防局特別高度救助部隊もホイールローダーを、京都市消防局はスキッドステアローダーを配備している。 また、冬季に積雪のある地域では、除排雪用に、ホイールローダーを配備している消防本部もある。また、広島県江田島市消防本部は災害時の瓦礫等排除用に同様の車輌を配備している。 さらに2013年より東日本大震災を教訓に緊急消防援助隊の装備強化として総務省消防庁が重機(遠隔操作が可能なショベルカー)及び搬送車を全国各地に貸与配備し、平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害でも活躍した。第1弾は日野製運搬車とコマツ製重機、第2弾は三菱ふそう製運搬車とコベルコ製重機、第3弾は三菱ふそう製運搬車とコベルコ製重機(クレーン解体仕様)、第5弾は、いすゞ製運搬車とコベルコ製重機(クレーン解体仕様)、第6弾は、日野製運搬車と日立製重機(クレーン解体仕様)などがある。なお、すべての重機にアタッチメント4種類(掘削用バケット、物を掴む油圧旋回フォーク、コンクリートなどを砕く油圧ブレーカー、鉄筋などを切断する鉄骨切断機)と交換用カプラー、2〜3本の油圧配管、運搬車にはアタッチメント置台、ユニッククレーン、下ろすときの歩み板などが装備品となっている。重機は3トンと5トンがある。運搬車は第1弾・第2弾では3トンタイプは2軸車、5トンタイプは3軸の車輌であったが、第3弾の三菱ふそう製運搬車からは3トン・5トンタイプとも3軸の運搬車になった。第1弾の日野製運搬車は荷台がスライドして傾くセルフローダー式だったが、第2弾の三菱ふそう製運搬車からは、ジャッキで荷台ごと上げて傾ける方式になった。なお、第3弾頃(2020年)から土砂排出用ベルトコンベアも装備するようになった。第1弾~第6弾のすべてがキャビン仕様で製作された。神戸市消防局が、クレーンなしのハイジャッキ仕様の重機運搬車と、CAT製の3トン重機(3本配管、交換用カプラー、アームクレーン仕様)と重機運搬車に積載する交換用アタッチメント・置台付きを2020年3月に配備した。また、山口市消防本部は貸与のコベルコ製重機・三菱ふそう製運搬車とは別に独自でCAT製の5トン重機(キャビン仕様・ブレード・1本配管・ヘッド・フロントガード付き)でグラップルバケットを装備した重機を配備した。この車輌は、貸与のコベルコ製重機と載せ替えで運用か、もしくは、提携を結んでいる市内の搬送業者が運ぶ。 同様に人吉下球磨消防組合ではいすゞ•フォワード(増トン車)と5t重機(コベルコ製)を独自に導入した。障害物除去の機能を持たない車両としては、岡崎市消防本部には60センチの段差や水深1・2メートルまで走行でき荒れ地や雪上、がれき、浸水地域などのあらゆる災害現場に人や物資を運搬する事ができる「全地形対応車」(レッドサラマンダー)ゴムクローラーで道路を走行できる車輌(大型で、2つの車体に分かれており、連結棒で連結されている)を貸与配備。2017年7月に九州北部で発生した豪雨災害(九州北部豪雨)での災害救助活動に初投入された。長距離輸送時は4軸運搬車にて搬送される。横浜市消防局に四角い車体でクローラー式で放水砲がついた無人放水車と、ホイールローダーもしくはパワーショベルに放水銃がついた2台一セットで遠隔操作が可能な2台セットの無人放水車が配備されている。いずれも、資材搬送車の専用コンテナで搬送される。 重機及び搬送車(東京消防庁・更新済廃車) 双腕重機(東京消防庁) 重機及び搬送車総務省消防庁配備(さいたま市消防局) 機動震災作業車三菱ふそう・ファイター(横浜市消防局) 救出救助車(廃車済)及び搬送車(東京消防庁) 全地形対応車両(レッドサラマンダー)(岡崎市消防本部)
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