起源の仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/21 06:49 UTC 版)
バーストの持続時間が長くても数ミリ秒であることから、発生源の大きさは数百キロメートル以下であると考えられている。また、宇宙論的な距離から来たものであれば、その発生源は非常に高エネルギーでなければならない。また、観測される電波に偏光が見られることから、非常に強力な磁場の中にある発生源から放出されていると考えられている。 2020年現在、最も有力な仮説の1つは、マグネターに起源を求めるものである。最初の発見を記した e-print が公開された直後の2007年には、高速電波バーストがマグネターのハイパーフレアに関連している可能性が提唱されている。2015年にはマグネター仮説を支持する3つの研究が発表されている。2020年4月に検出されたマグネターSGR1935+2154を起源とする天の川銀河内からの最初の高速電波バーストの同定は、マグネターが高速電波バーストの発生源の1つである可能性を強く示唆するものであった。 他の有力な説の1つに、ブラックホールや中性子星といったコンパクト天体の合体によるとする説があり、ガンマ線バーストとの関連も示唆されている。また、高エネルギーの超新星がこれらのバーストの発生源である可能性がある。2013年には、高速電波バーストの発生機構を説明するものとして、角運動量を失ったパルサーが重力崩壊してブラックホールになる際に起こす現象「ブリッツァー (Blitzar)」が提唱された。2016年には、高速電波バーストの「残光」とGW150914の0.4秒後の弱いガンマ線バーストの起源を説明するためにカー・ニューマン・ブラックホールの磁気圏の崩壊が提唱された。また、もし高速電波バーストがブラックホール爆発に由来するものであれば、量子重力効果が初めて検出されたものとなるとされている。2017年初頭には、超大質量ブラックホールの近くの強い磁場がパルサーの磁気圏内の電流シートを不安定化させ、閉じ込められたエネルギーを放出して高速電波バーストにエネルギーを供給するという説が提唱された。 また、未発見の物質にその原因を求める説も挙げられている。2014年には、パルサーの暗黒物質による崩壊と、それに続くパルサー磁気圏の放出が高速電波バーストの発生源である可能性が示唆された。2015年には、高速電波バーストがアクシオン・ミニクラスターの爆発的崩壊によって引き起こされることが示唆された。宇宙弦が、初期宇宙に広がっていたプラズマと相互作用してこれらのバーストを発生させたとする説も提唱されている。 2016年にFRB121102の反復バーストが確認されて以降は、さらに新たな起源の仮説が提唱されている。活動銀河核のような環境で発生する可能性のある大規模な量子もつれ力学的状態を伴う超放射として知られるコヒーレントな放射現象が、高速電波バーストや高速電波バーストと関連した他の観測(例えば、高いイベントレート、反復性、可変強度プロファイル)を説明するために提案されてきた。2019年7月、反復しない高速電波バーストは1回限りのイベントではなく、検出されなかった反復イベントを持つリピーターである可能性があるうえ、まだ観測されていないあるいは想定されていないイベントによって高速電波バーストが引き起こされる可能性があることが報告された。 変わったところでは、系外銀河にある知的文明が使用する光帆船の動力に使われる電磁波が高速電波バーストの原因である可能性についても研究されている。この研究では、数世紀に1度程度、天の川銀河内の知的文明による高速電波バーストが観測される可能性があるとしている。
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