経済との相関
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 08:11 UTC 版)
「持続可能な開発のための文化」の記事における「経済との相関」の解説
文化や持続性を考慮しても開発とは経済活動になる。「文化のためのアジェンダ21」でも「文化と経済」として経済問題に触れているが、危惧しているのは新自由主義やグローバル資本主義・自由市場資本主義が経済的不平等(富の偏重)をもたらし、文化的マイノリティを生み出し追い詰めかねず、グローバリゼーションは固有文化やアイデンティティーをも浸食することにある。2008年のG20サミットで当時のブッシュ・アメリカ大統領は、「自由市場資本主義は時間・空間・文化・宗教に関わらず有効性を示してきた」と主張。トマ・ピケティは『21世紀の資本』で「資本主義は持続不可能な格差を生む」と指摘。歪な資本主義が文化多様性や文化持続性を蝕んでいる。グローバル・チャレンジ・ファウンデーションが発表した研究『12 Risks That Threaten Human Civilisation(人類を脅かす12のリスク)』の中には、「Global System Collapse(グローバリズムによる破滅」も上げられており、世界経済のグローバル化により連鎖的な経済危機や貧富の拡大で社会が不安定化しており、経済破綻が起これば世界全体に社会混乱が波及し、持続可能性が断たれる恐れを示唆している。しかし、「文化と開発」は経済的自由主義(経済的自由権)を否定するものではない。開発によって犠牲になりがちな環境や文化であるが、開発から得られた収益が保護費用に還元されることもあり、経済成長の必要性はある。開発と保護は表裏一体の関係にあり、そのためにも持続可能な開発計画と文化的健全性、公益資本主義が求められる。 保護のみであれば国家主義・大きな政府が有効に思えるが(保護名目での強制強要は許されない)、社会主義の中国ですら市場経済を導入したことで格差は広がっており、例えば北京の都市化により昔ながらの路地胡同が失われ、深刻な大気汚染は酸性雨をもたらし歴史的建造物を危機に晒し、経済発展に伴い伝統的な生活様式も忘れられつつある。 また、先進国に共通する問題として、少子高齢化による人口減少社会の到来は文化消費を含めた経済力の低下を招き、文化の継承を危ういものにする。一定の機械化はある程度の抑止効果をもたらすが、工業化は環境負荷が大きく持続可能性に逆行するばかりか、そもそも文化は人から人へ伝承されるべきものである(ミーム)。 他方、知識経済・文化経済学の視点では、文化持続性の効果が期待される面もある。例えばクールジャパンによる「文化の輸出」などに現れる可能性がある。但し、文化の押し売り・文化侵略には注意をはらう必要があり、文化摩擦になってはならない。地域文化の尊重と多文化主義の共存に基づくエシカルな経済活動が求められ、それは紫の経済として実行される。 文化自身が持つ経済性を引き出すため(富の創造)、ユネスコは「遺産と創造性」を推進している。
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