第一部 ミュータント兵器(The Mutant Weapon)
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「禁断の世界」の記事における「第一部 ミュータント兵器(The Mutant Weapon)」の解説
惑星「マリス3」に接近した「エスクリプス20」から、医療局員カルフーンはグリッド管制官に着陸の指示を仰いだ。管制官が待機するように言ったあと、エスクリプス20の船内重力が強くなり、照明が消え、各種回路が焼き切れた。どうやらグリッドの力場で、医療船を押し潰そうとしたようだ。惑星にいる連中は、カルフーンが着陸して検疫することを望んでいないらしい。非常用ロケットで町から離れたところに着陸したカルフーンは、船外に出て調査を始めた。周りに農地が広がっているが耕作している人間はいない。しばらく歩くと実ったトウモロコシ畑の中で男が死んでいる。トウモロコシを何本も食べた形跡があるのに、どうみても食料不足で餓死したようだ。 続いて、やせ衰えた女ヘレンに出会った。カルフーンには酸素欠乏症にかかったように思えたが、酸素が十分にある惑星で発生するわけがない。さっそくヘレンの血液をマーガトロイドに注射して、抗体を作り出そうとするカルフーン。ヘレンの説明によるとここマリス3は、惑星「デトラ2」からの移住先として新たに開拓されたばかりで、住民は千人ほどいたという。この病気が突然発生したあとで見知らぬ宇宙船が強行着陸し、乗員たちが町にいた人々を虐殺しはじめたので、みんな町から逃げ出してきたという。病気の発生前に、この惑星に着陸した宇宙船はないので、病気は外部からもたらされたものではないと考えられた。ここの医者たちも、患者の血液には通常の細菌類しかおらず、原因が分からなかったらしい。他の生存者も集まってきたところに、ブラスターを持った屈強な男が現れた。ヘレンから生存者を狙う殺し屋のことを聞いていたカルフーンは、その男を射殺した。やがてマーガトロイドが抗体を作りだしたので、生存者たちにその抗体を注射する。 カルフーンが患者の血液を分析しても、有害な細菌類は見つからない。それでも病気が発生する前に、晴れた日なのに不思議な雷鳴が聞こえたことが分かった。それらのことからカルフーンは、2種類以上の細菌の相互作用で病気が発生するのではないか、と推測した。大気圏内に侵入した飛行体から、細菌類をまき散らしたときに雷鳴のような音が聞こえ、病気が発生したころを見計らって殺し屋どもの宇宙船が着陸した、と考えればつじつまが合う。そうすれば新規に開拓された惑星を、少ない人員で侵略することができる。カルフーンは射殺した殺し屋が乗ってきた地上車で、町に潜入した。彼は強力麻酔剤を噴射できる「スプレー銃」を作り上げ、町の中を歩き回る侵略者たちを眠らせた。この病気のワクチンを、侵略者たちが注射しているのは確実なので、その副作用のように見せかけた。やがて眠っている者が仲間に発見され、強行着陸した宇宙船に運びこまれていく。眠っている3人目の男は、カルフーンが自ら宇宙船に連れて行った。船内には白衣を着た1人の男がいて、その会話の内容から、この男が病気発生の手順を考え出したことは間違いない。カルフーンは白衣の男を、スプレー銃で眠らせてから縛り上げた。侵略者たちの母星から、移住者を運んできた宇宙船が到着し無線で呼びかけてきたが、カルフーンは応答しなかった。 カルフーンが考えた病気の概要では、通常細菌に似せたミュータント病原体の生成物が合わさると、血液内の酸素濃度を低くする効果がある。酸素が脳に届かないと新陳代謝の制御ができなくなり、栄養分を摂取することを忘れてしまい、餓死のようなことが起こるというものだった。やがて、マーガトロイドの抗体で回復した生存者たちが、町に戻ってきて侵略者たちを縛りあげた。惑星を周回していた侵略者たちの宇宙船には、ワクチンの副作用で次々に仲間が死んでいるので助けてくれ、という偽の通信を送った。宇宙船は母星へ逃げ帰っていった。強行着陸していた宇宙船は、エンジンと無線機を壊されたうえで侵略者たちが乗せられ、当局の宇宙船が来るまで惑星を回ることになった。カルフーンたちは想像してみた。ワクチンには死をもたらす恐ろしい副作用があると知ったときに、彼らの母星で何が起こるかを。たぶん指導者たちは、住民によって殺されるだろう。そして惑星を回っている宇宙船に乗せられている、ワクチンを作った白衣の男にも同じことが起こるだろうと。
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