伯父(叔父)
★1a.叔父と姪が関係を持つ。
『新生』(島崎藤村) 妻をなくした岸本捨吉には、4人の幼い子供たちが残された。姪の節子が、住み込みで家事や育児を手伝いに来ているうちに、岸本と節子は関係を持ち、節子は妊娠する。その時、岸本は42歳、節子は21歳だった。岸本は1人フランスへ旅立ち、節子の産んだ男児は養子に出される。3年を経て岸本は帰国するが、ふたたび節子と関係してしまう。岸本は兄義雄(=節子の父)から義絶され、節子は台湾の叔父(=岸本のもう1人の兄)に引き取られる。
*冷凍睡眠で若さを保つ伯父と、年頃の姪が関係を持つ→〔冷凍睡眠〕2の『ガラスの城の記録』(手塚治虫)。
『犬神家の一族』(横溝正史) 青沼静馬は、犬神佐兵衛が50歳を過ぎて愛人に産ませた息子である。佐兵衛の恩人の縁者・珠世が犬神家の財産を受け継ぐので、静馬は「珠世と結婚しよう」とたくらむ。しかし、実は珠世は佐兵衛の孫娘であり、静馬と珠世は叔父・姪の関係になるのだった。それを知った静馬は、珠世との結婚を断念した〔*犬神松子が静馬を利用して犬神家の財産を得ようとしたが、「もはや静馬は役に立たない」と思って、松子は静馬を殺した〕。
『めし』(成瀬巳喜男) 大阪の会社に勤める初之輔と妻三千代は結婚して5年、子供はいない。三千代は、家事に追われる毎日に疑問を感じている。そこへ初之輔の姪・20歳の里子が、親の勧める縁談を嫌って家出し、やって来る。初之輔は親切に里子の面倒を見、里子は「私ほんとは初之輔さんみたいな人が好きなのよ」と言う。三千代は心穏やかならず、東京の実家に帰り、このまま東京で職を捜そうと思う。しかし女1人の自立は困難であり、迎えに来た初之輔と一緒に、三千代は大阪へ帰る。
★2b.「中年男と若い女のカップル」と思ったら、ごく普通の叔父と姪だった。
『彼岸過迄』(夏目漱石)「停留所」~「報告」 いたずら好きの田口要作は、探偵趣味を持つ青年・田川敬太郎に、「四十恰好の某紳士の、本日夕刻の行動を探ってくれ」と依頼する。敬太郎が紳士を尾行すると、紳士は若い女と連れ立って街を歩き、西洋料理店で一緒に食事をした。後日、敬太郎は尾行の結果を、「紳士と若い女は夫婦ではないだろうが、肉体関係があるかどうかはわからない」と、田口に報告する。実は、紳士は田口の義弟(松本恒三)、若い女は田口の娘(千代子)だった。敬太郎が「わけありの男女か」と思ったのは、ごく普通の叔父と姪の間柄なのだった。
『疑惑の影』(ヒッチコック) 遠方の叔父(=母の弟)チャーリーが訪れるというので、彼と同名の姪チャーリーは喜ぶ。姪は昔から叔父が大好きだった。しかしやがて姪は、叔父が逃走中の連続殺人犯であることに気づく。叔父は姪に「もし君がしゃべれば、母上は悲しみ、父上は職を失うだろう」と言って開き直る。叔父は、自分の正体を知った姪を、列車から突き落として殺そうとするが、逆に彼の方が落ちて死んでしまう。
『冬の華』(降旗康男) ヤクザの加納秀次は、組織を裏切った男を殺し、男の3歳の娘洋子の世話を、舎弟の南幸吉に託す。加納は15年服役し、その間、「ブラジルにいる叔父」といつわって、洋子に手紙を書き、学費を送り続ける。やがて加納は出所し、南は「加納を洋子に会わせたい」と思う。しかし加納は、「殺した人の娘さんに会えるものか」と断る。美しい女学生に成長した洋子は、加納を見て「叔父さま?」と問いかけるが、加納は「人違いです」としか言えない。加納は再び、ヤクザ仲間を殺す仕事をせねばならなくなり、洋子に別れの電話をかける。
*殺した男の妻子の面倒を見る→〔宿〕9の『沓掛時次郎』(長谷川伸)。
★5.叔父と甥が戦う。
『アーサーの死』(マロリー)第1巻第19章 アーサーは、ユーサー・ペンドラゴン王とイグレインとの間に生まれたが、それに先立って、イグレインはティンタージェル公との間に娘マーゴースをもうけていた。アーサーは成長後、ロット王妃となったマーゴースに出会って恋し、彼女を異父姉と知らず関係を結んで、モードレッドが誕生する。モードレッドにとってアーサーは、父であると同時に、母の異父弟ゆえ叔父でもある。後年、モードレッドはアーサーに戦いを挑む→〔父と息子〕6。
★6.甥が伯父を救う。
『パルチヴァール』(エッシェンバハ)第5巻・第9巻・第16巻 聖杯城のアンフォルタス王は、かつて毒槍で睾丸を突かれ、長期間その傷に苦しんでいた。少年パルチヴァールが城を訪れるが、彼は、アンフォルタス王が母方の伯父であることを知らなかった。また、王の苦しみの理由を問いさえすれば、王の傷は癒えるはずだったが、それもせずにパルチヴァールは城を去った(*→〔禁忌〕3)。しかし後にパルチヴァールは再び城を訪れて、アンフォルタス王に傷の具合を問い、神の慈悲により王は回復した。
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