クリン=リントナー式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/06 10:12 UTC 版)
「ギアードロコ」の記事における「クリン=リントナー式」の解説
クリン=リントナー式(the Klien-Lindner locomotive)は、一見して外側台枠式のn動軸(一般的にはn≧4)の機関車に見えるが、第1・第n動軸を中空軸(左右の動輪を連結する)とし、その中に中央部に特殊な球状の歯を切った中実軸を通して中空軸の内側に刻まれた溝と中実軸側の角状突起を噛み合わせることで、中空軸による首振り動作を許容しつつ、n動軸全てについて単純な連結棒(サイドロッド)による動力伝達を可能とするギアードロコの一種である。また、この第1・第n動軸の左右の各動輪それぞれの直近を2頂点とし、中空軸を1辺とする三角形のサブフレームを取り付け、その重心位置で台枠と首振り・スライド可能なピンを用いて結合し、それぞれの残る1頂点同士を関節によって連結することで首振りの範囲を制限する、一種のラジアル機構も備わっていた。第1・第n動軸の機構は複雑精緻で保守にも一定以上の技術水準を求められるが、それ以外は通常型蒸気機関車と変わらず、アメリカのギアードロコのように弁装置が通常の何倍もの高速回転を強いられることもないため、高速運転でも通常型機関車に遜色がない。但し、両端の動軸に復心機構が備えられないため、曲線通過時のフランジ摩耗などの点では有利であるが、その反面車体のローリング時にこれを抑止する手段が無く、直線区間での直進安定性や曲線区間への進入時の安定性を欠くことになりやすい、という問題があった。元々はイギリスでアーサー・ヘイウッド(Arthur Heywood)により1877年に考案されたが、同国では実用化に至らず、1890年になってドイツのエヴァルド・クリン(Ewald Klien)とハインリヒ・リントナー(Heinrich Lindner)という2人の技術者によって実用化され、ザクセン州立鉄道向けを皮切りとしてドイツ国内の大手メーカー各社で大量に製造され、主として軌道条件が劣悪であるにもかかわらず、牽引力が要求される産業用機関車や野戦軍用軽便鉄道などに供給された。日本ではコッペル・ギアシステムの採用による特許料支払いを回避する目的で、日本陸軍向けK1・K2形にのみ採用された。
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