オオクワガタ亜属 Dorcus
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 08:54 UTC 版)
「オオクワガタ属」の記事における「オオクワガタ亜属 Dorcus」の解説
アンタエウスオオクワガタ Dorcus antaeus - 東南アジア内陸部に生息し、インドシナ系とヒマラヤ系に大きく分けられる。標高2,000m以上に生息し、低温多湿を好む。ミナミオオクワガタとも呼ばれ、アンテと略称される。オオクワガタに次いで外産解禁時にブームを担った。産地ごとに差異が見られ、2010年、亜種分けされた。D.a.antaeus (原名亜種) インド北東部・ネパール・ブータン・ミャンマー西部に産する個体群。3亜種の中で最も大きくなり、♂の体は他の亜種に比べて体はやや細長く、光沢が強い。 また、大あごの湾曲が弱く、大型個体では内歯はより前方に突出し、斜め前方を向く。市場では産地によって価格も変わる。内歯が先端に付くインド産は高額になり、ネパール産、ブータン産なども人気がある。一時期インド産は数十万円することも稀ではなかった。 D.a.miyashitai ミャンマー東部・タイ北部・ラオス北部・ベトナム北部・中国雲南省南部に産する個体群。原名亜種に比べてオスの体と大あごは太短く、光沢はやや鈍い。 大型個体では大あごの内歯が側方に突出する。 D.a.datei マレー半島・ベトナム南部に産する個体群。3亜種中最も小型で、オスの大あごは太短く湾曲が強い。 また、大あごの先端部と内歯はより鋭く突出して、前胸背板の前方がより広い。原名亜種とは正反対の特徴を持つが、内歯の面積が広く人気があり、価格もタイやラオスの個体群よりも高価である。 ホペイオオクワガタ Dorcus hopeiホペイオオクワガタ(原名亜種) D.h.hopei - 中国南部に生息する。特に福建省産が良く流通しており人気がある。アンタエウスオオクワガタの次に流行ったいわゆる「中国ホーペ」。 オオクワガタ D.h.binodulosus - 日本最大級のクワガタ。クワガタブームの先駆け的存在だが、もともと少ない上に乱獲によって野生個体数は減っており、絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)に指定されている。クルビデンスオオクワガタの亜種として位置づけられていたが、後のDNA解析の結果、2000年にホペイオオクワガタの亜種とされた。 クルビデンスオオクワガタ Dorcus curvidensD.c.curvidens (原名亜種) ホペイオオクワガタと同種との意見も多いが、北脇和光は中国広西省で一本の木から本種とホペイオオクワガタを採集していることや、雌雄の形態も差異がみられるため、別種であると思われる。 D.c.babai ベトナム中部~南部に生息する。大顎の付け根付近に位置する内歯が特徴的な亜種。2010年、世界のクワガタムシ大図鑑の著者藤田宏によって新亜種記載された。長い間記載されていなかったため、クルビデンスssp.など、当時の流通名が未だに残っている種。また、原名亜種と同所で得られていることが確認されているため、別種である。今後独立種に昇格する可能性が極めて高い。 グランディスオオクワガタ Dorcus grandis - 本亜属中の最大種。オオクワガタ亜属では最大の大きさを持つ。野外ギネスは91.5mm。 体の横幅があり、大アゴが太く、強く湾曲している。成虫は約2年以上とかなり長生きする。D.g.grandis (原名亜種) ラオス、ベトナム北部、中国雲南省、海南島に生息する。前胸背板の前縁が斜めに切れ込んでいる。 D.g.formosanus 台湾に生息する。内歯は大型個体ほど やや前方に位置する。前胸背の切れ込みがあるものと、ないものが存在する。 D.g.moriyai ミャンマー、インド北東部に生息する。特に大型で、光沢が強い。原名亜種のような前胸背の切れ込みはない。 リツセマオオクワガタ Dorcus ritsemae 以前はパリーオオクワガタ (D. parryi)と呼ばれていたが、1998年にリツセマオオクワガタ (D. ritsemae)とされた。東南アジアの島々などの隔離された地域に分布しているため、大アゴなどに特有の形態が存在している。その為、以下の8亜種に分けられている。 D.r.ritsemae (原名亜種) - ジャワ島東部~中部 D.r.kazuhisai - ジャワ島西部 D.r.volscens - スマトラ島・ボルネオ島・マレー半島・ニアス島 D.r.setsuroi - フィリピンミンダナオ島 D.r.curvus - フィリピンパラワン島 D.r.astridae - スラウェシ島北部~中部・ペレン島 D.r.ungaiae - スラウェシ島南部ロンポバタン山・バワカレン山・カバエナ島 D.r.khaoyaiensis - タイ北部~南部・ラオス中部・カンボジア シェンクリンオオクワガタ Dorcus schenklingi コクワガタを大きくしたような外見をしている。メスの上翅には縦のスジがなく、アンタエウスオオクワガタのメスに似ている。生息地域の台湾では保護の対象となっている。オオクワガタ亜属の中では比較的気性が荒い傾向がある。 パラレリピペドゥスオオクワガタ(ヨーロッパオオクワガタ) Dorcus parallelipipedus オオクワガタの仲間では小型種であるが、オオクワガタらしい特徴を備えている。 カミジョウオオクワガタ Dorcus kamijoi 2009年7月に記載された新種。ベトナム南部に分布。Holotype標本は飼育個体。野外で発見されている個体はほとんどが♀で♂は小型の個体しか得られていない。 タイリクツノボソオオクワガタ Dorcus yaksha ベトナム北部・タイ北部・ミャンマー北部・インド北東部などに生息する。2010年に世界のクワガタムシ大図鑑の著者である藤田宏によってDorcus tonkinensisという学名で新種記載されたが、既に記載されていたため、学名表記はDorcus yakshaが正しいと思われる。(学名は一般的に記載年の一番古いものが使われるため。) yakshaとは古代インド神話に登場する鬼神夜叉のことである。
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