イスカンダル伝承
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 14:52 UTC 版)
「アレクサンドロス3世」の記事における「イスカンダル伝承」の解説
詳細は「アレクサンドロス・ロマンス」を参照 アラビア語やペルシア語ではアレクサンドロスはイスカンダルの名前で知られる。アレクサンドロス3世の勇猛はイスラーム世界に一種の英雄伝説となって語り伝えられた。中東における伝承ではアレクサンドロスには2つの角があるとされ、イスカンダル双角王(イスカンダル・ズルカルナイン)の名で知られた。また、東南アジアにイスカンダルという男性名があるのは、イスラーム教の東進によってこの英雄伝説が広まった結果である。アレクサンドロス・ロマンスの広まった範囲は、ギリシア文化を受け継いだヨーロッパやイスラーム世界のみならず、断片的に中国やエチオピアにまで広がっている。 イスカンダル (波: اسكندر, Iskandar) は、古代マケドニア王国のアレクサンドロス大王を指すアラビア語・ペルシア語の人名である。もともとは Aliskandar であったが、語頭のal-が定冠詞と勘違いされ( الإسكندر al-iskandar)、اسكندر Iskandar と呼ばれるようになった(言語学では「異分析」という)。ただし、現在でもアラビア語では定冠詞をつけて al-Iskandar と言うのが普通である。kとsが入れ替わった(「音位転換」という)理由は不明である。 これらイスラーム世界でのイスカンダル像は、主に『偽カリステネスのアレクサンドロス物語』といったアレクサンドリア発祥の空想譚を起源とし、それにアッバース朝時代の翻訳運動などで流入したシリア、エジプトなどでのアレクサンドロス伝承などから、イラン世界におけるアレクサンドロス3世の支配を歴史的に整合性をつけようとしたものであった。 文学ではフェルドウスィーやニザーミーといった著名な作家たちが韻文や散文による『イスカンダル・ナーマ』(アレクサンドロスの書)を著している。これらの作品ではイスカンダルとアリストテレスが理想的な「君主と宰相」像として描かれている。 また、アレクサンドロスに由来する中東の都市名は、それぞれアレクサンドリアはアル・イスカンダリーヤ、アレクサンドレッタはイスカンダルーン(トルコ語ではイスケンデルン)と呼ばれる。 イスラム教の東進に伴い、東南アジアでも一般的な男性名となっており、歴史上でもマラッカ国王イスカンダル・シャー(在位1414年-1424年)、 アチェ国王イスカンダル・ムダ(在位:1607年-1636年)らがいる。シンガポール近くのジョホールバル南部開発地区の名前であるイスカンダル・マレーシア(英語版)は開発開始当時のジョホールのスルタン(英語版) イスカンダル・イブニ・スルタン・イスマイル(英語版)の名前に因んでいる。
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