イギリス陸軍とは?

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イギリス陸軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2009/11/04 15:18 UTC 版)

イギリス陸軍
Flag of the British Army.svg
創設 1707年 - 現在
国籍 Flag of the United Kingdom.svg イギリス
兵科 陸軍
兵力 約 147,000名
上級部隊 国防省
モットー Be the Best
参謀総長 リチャード・ダナット GCB CBE MC

イギリス陸軍 (British Army) は、イギリス国防省に属するイギリス (United Kingdom) の陸軍である。イギリス軍の3つの軍事組織(イギリス陸軍、イギリス海軍イギリス空軍)のうちの一つ。2007年の時点で約105,000人と予備役の約37,200人が所属する。

目次

歴史

概要

イギリス陸軍は、ブリテン島本土および北アイルランド(北アイルランドは言うまでもなく連合王国の一部ではあるが、イギリス陸軍の地域区分では「海外」となっている)その他の海外領土テロを含む軍事的脅威から防衛すること、NATOによる共同防衛に参画すること、NATO枠外での紛争介入や平和維持活動等をおこなうこと、必要とされた場合地方自治体等に非軍事分野のものを含む支援活動をおこなうこと、などを任務としている。

もともとイギリスは島国であり、地政学的に言って地上部隊による脅威を受けづらい環境にあり、第二次世界大戦においてすらブリテン島本土に上陸侵攻を受けることはなかった。したがって歴史的にも、また現代においてもイギリス陸軍は基本的に海外での活動にその力点を置いており、ブリテン島本土の防衛はほとんどの時代において2次的な任務である。

また実際問題として、予見しうる将来において最悪の状況が発生したとしても、常識的にはブリテン島本土が外国軍によって上陸侵攻を受けることを到底考えることが出来ない以上、現代においてもこの傾向は変化していない。イギリス陸軍の実戦配備部隊はそもそも海外に駐留しているか、国内に駐留していたとしても国外に展開することを前提とするものがほとんどで、本土防衛にあてられる部隊は国防義勇軍(TA:Territorial Army)という予備役部隊による2線級部隊を主体としている。

ただし対テロ活動は別問題であり、北アイルランド紛争に起因するIRA暫定派による爆弾テロ、また近年ではイスラム系テロリストの脅威に対応するため、HUMINT部隊である特殊偵察連隊が新設されるなど、その対策はむしろ強化されている。

また、NATOの一員としての共同防衛活動に関しては、NATOに対するNATO域外からの軍事的脅威が(少なくとも冷戦期と比較すれば)大幅に減少したことを受け、大幅な数的削減と同時に、西ヨーロッパ大陸部での全面戦争状況下における機甲戦を指向した戦力から、地域紛争への介入を指向した戦力への質的方向転換が図られている。

呼称

イギリス陸軍には、海軍・空軍とは異なり、その名称に“Royal”すなわち王立の文字がつかないが、陸軍に関しては飽くまでも“British”を冠するものが正式名称である。これは、海軍・空軍が国王大権に基づく単一かつ国王(女王)に所属する軍隊であるのに対して、陸軍が議会の許可に基づいて編成され、かつ各連隊も国王以外のシェフ(Colonel-in-Chief)が存在することによるものである。もちろんこれはイギリスによく見受けられる時代がかった建前であって、実際には海軍・空軍・陸軍のいずれも厳格な文民統制の下にあるイギリスという“国家の軍隊”である。

またイギリスにおいては、名誉革命後に権利の章典が成立して以来、議会の許可なく平時における常備陸軍(peace-time standing army)を編成することが禁止されており(権利の章典の成立以前も常備陸軍を編成することは一種のタブーではあったが、明文化されたものではなかった[1])、現在においても一定期間ごとに“臨時に”陸軍を編成する許可を議会が可決する必要がある。ただしこれは、現代においては建前とすら言いがたいほどに形骸化しており、実態としてはイギリス陸軍は平時においても常備軍である。

連隊とシェフ

前述のように、イギリス陸軍はそれぞれ個別のシェフが所有する連隊のいわば寄せ集めである。シェフはかつては私財をもって連隊を養う実際上の所有者であったが、当然ながら現在においては全ての連隊にかかる費用は国家予算によってまかなわれている。しかし形骸化し実際の仕事は連隊の式典に出席するぐらいになったとはいえ、シェフという制度自体は現在も存在しており、特殊偵察連隊(SRR:Special Reconnaissance Regiment)のような特殊なものを除いて、ほぼすべての連隊にシェフが存在している。

ヨークシャー連隊の帽章

2006年6月6日以降、シェフはすべてイギリス王族または外国国王である[2]。また、軽竜騎兵連隊(The Light Dragoons)、王立プリンス・オブ・ウェールズ連隊(The Princess of Wales's Royal Regiment 〔Queen's and Royal Hampshires〕)に関しては、それぞれ外国人であるヨルダン国王アブドゥッラー2世デンマーク女王マルグレーテ2世がシェフとなっている。また、2006年6月6日のグリーンハワード連隊(The Green Howards 〔Alexandra, Princess of Wales' Own Yorkshire Regiment〕)のヨークシャー連隊への統合まではノルウェー国王ハーラル5世が同連隊のシェフの地位にあった。

形式上シェフより一つ下の役職である連隊長(Colonel)は、イギリス陸軍においては功績のあった将官もしくは王族による形式上の名誉職であり、連隊の実際の指揮を執ることは現在ではまず考えられないため、その任務は指揮担当士官(Commanding Officer)の役職名で中佐(Lieutenant-Colonel)が行っている。また、この場合の連隊長(Colonel)は陸軍大佐(Colonel)と全く同じ語ではあるが陸軍の階級とは関係なく、シェフと同様の名誉称号のようなものである。

近衛部隊と儀仗任務

イギリス陸軍は古くからの伝統の多くを現代にも引き継いでおり、そのなかでもとくにロンドンにおいて近衛部隊等のおこなう衛兵の交代式や騎兵の行進などの各種式典は、ロンドン観光の目玉の一つとしてイギリス国外においても有名である。この式典の多くは近衛部隊によっておこなわれており、これらの近衛部隊を統括する管理部隊として王室師団(Household Division)が置かれている。管理上この師団(名称は師団だが戦闘部隊としての師団とは異なる)に属するものがいわゆる近衛部隊である。

王室師団に属するのは、王室騎兵のライフガード連隊およびブルーズ・アンド・ロイヤルズ連隊と近衛歩兵(Foot Guards)、すなわち擲弾兵近衛連隊(Grenadier Guards)・コールドストリーム近衛連隊(Coldstream Guards)・スコットランド近衛連隊(Scots Guards)・アイルランド近衛連隊(Irish Guards)・ウェールズ近衛連隊(Welsh Guards)の5個連隊である。また、近衛歩兵は近衛師団(Guards Division)の管理下にもあり、近衛師団には予備役部隊である国防義勇軍(Territorial Army(TA))のロンドン連隊(London Regiment)も加えられる。

王室師団は基本的に管理部隊であり、実際の儀仗任務の運用はロンドン管区(London District)が行なっている。ロンドン管区とはイギリス陸軍の制度における軍管区の一つで師団相当格の組織であり、ロンドンの防衛を目的とする組織で、自動車道25号線(M25)の内側をその防衛管区とし、そこに属する部隊はほかのいずれの司令部にも属さないこととなっている。指揮官(少将(Major General))は王室師団長が兼任し、その麾下に王室部隊(Household Troops)が編成される。王室部隊には王室師団の他に王立騎馬砲兵(Royal Horse Artillery)の王立騎馬砲兵・国王中隊(King's Troop, Royal Horse Artillery)が加わる。

実際の儀仗任務はこのロンドン管区に所属する部隊によっておこなわれるが、ロンドン管区にはすべての近衛部隊が所属するわけでもなく、また近衛部隊以外の部隊が所属しないわけでもないことに注意する必要がある。ロンドン管区に所属する連隊は、具体的には王室騎兵のうち王室騎兵乗馬連隊、王立騎馬砲兵・国王中隊、各連隊に付属する軍楽隊、そしていわゆるパブリック・デューティーによってロンドン管区に配属される各歩兵大隊である。パブリック・デューティーとは近衛歩兵あるいは戦列歩兵に所属する大隊から、ロンドンの警備部隊を抽出する古くからの制度で、現代においては5個の近衛歩兵連隊に所属する5個大隊から2個大隊が、戦列歩兵連隊からは1個大隊がローテーションでこの任務にあたり、またこのほか擲弾兵近衛連隊・コールドストリーム近衛連隊・スコットランド近衛連隊に所属する近衛増強中隊の3個中隊がローテーションしない恒常的なものとして、その任務にあたっている。なお、1994年の陸軍再編の時点で、かつての中隊単位での抽出は廃止され、現在の大隊単位の制度へ移行している。

現在進行中の2008年までの完了を目処とする陸軍の再編後は、現在のローテーション制度が廃止され近衛歩兵の2個大隊と戦列歩兵の1個大隊が近衛増強中隊のような恒常的な儀仗任務につくこととなっている。ただしこの改革については反対もある。(近衛兵 (イギリス)も参照。)

組織

詳細は「イギリス陸軍の編成」を参照

イギリス陸軍の組織は、それぞれの起源が異なるため、編成が複雑である。大まかに常備軍 (Regular Army) と国防義勇軍 (Territorial Army) に分けられ、常備軍はその名の通り戦時に限らず平時も編成されるが、国防義勇軍は予備役である。

双方の軍は、管理組織と任務組織の特質の異なる部隊が所属する。

師団

現在、6個師団を配備させている。

名称 司令部 隷下部隊など
第1機甲師団 1st Armoured Division ヘルフォルト, ドイツ 3個装甲部隊、1個兵站部隊からなる機甲師団。
第2歩兵師団 2nd Infantry Division Craigiehall, エディンバラ 4個歩兵連隊
第3歩兵師団 3rd Infantry Division Bulford, ソールズベリー 2個機械化旅団、1個軽旅団、1個歩兵旅団、1個兵站旅団。
第4歩兵師団 4th Infantry Division Aldershot 3個重歩兵連隊。
第5歩兵師団 5th Infantry Division Shrewsbury 3個重歩兵連隊、1個空挺強襲旅団。
第6歩兵師団 6th Infantry Division ヨーク 展開師団司令部

航空編成

イギリス陸軍は、統合軍の一部をイギリス空軍と共同で運用しているが、陸軍にも航空隊が存在する。

イギリス陸軍の階級

詳細は「イギリス軍の階級」を参照


イギリス陸軍の装備品

車両

戦車

装軌車

装輪車

火器

小火器

火砲

ロケット

  • MLRS - (67基)
  • LAW80 携帯式対戦車ロケット

誘導弾

対空ミサイル
対戦車ミサイル

工兵用装備

需品器材

通信器材

航空機

回転翼機

固定翼機

参考文献

  • W Y Carman; Richard Simkin (1985). Richard Simkin's Uniforms of the British Army : Infantry, Royal Artillery, Royal Engineers and other corps. Exeter, England: Webb & Bower. ISBN 978-0-86350-031-2. 
  • W Y Carman; Richard Simkin; K J Douglas-Morris (1982). Richard Simkin's uniforms of the British Army : the cavalry regiments : from the collection of Captain K.J. Douglas-Morris. Exeter, England: Webb & Bower. ISBN 978-0-906671-13-9. 
  • David Griffin (1985). Encyclopaedia of modern British Army regiments. Wellingborough: P. Stephens. ISBN 978-0-85059-708-0. 
  • Simon Dunstan (1996). The Guards : Britain's houshold division. London: Windrow & Greene. ISBN 978-1-85915-062-7. 

関連項目

注記

  1. ^ 辻本 諭「イングランドにおける常備軍の成立 -ウィリアム三世期の常備軍論争-」(青木書店歴史学研究』2006年10月号 No.819 p1~p22)
  2. ^ 歴史的には高位の爵位を持つ貴族も一部連隊のシェフの任を担っていたが、2006年6月6日のウェリントン公爵連隊(The Duke of Wellington's Regiment)のヨークシャー連隊(The Yorkshire Regiment)への統合により、ウェリントン公爵はヨークシャー連隊副シェフ(Deputy Colonel-in-Chief)へいわば格下げとなり、イギリス王族ではないイギリス貴族による最後のシェフの地位は失われた。

外部リンク





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