【TT33】(てぃーてぃーさんじゅうさん)
Tokarev TT33(英)
Токарэв ТТ33(露)
ロシアのトカレフ技師が、M1895の後継として開発した半自動式拳銃。
日本で単に「トカレフ」と言った場合、このTT33、あるいはそのデッドコピーにあたる五四式手槍を指すことが多い。
設計上重視されたことはふたつ。極寒のロシアでも確実に動作する信頼性と、多くの将兵に行き渡るよう高い生産性を持つことであった。
これらを満たすため、優れた軍用拳銃であったアメリカのM1911を参考にしつつ、きわめて単純化された設計が目指された。
まずハーフコックを除いて安全装置が一切存在しない。そして部品の固定は単純な板バネ状の部品のみで成されており、工具を一切用いず分解整備が可能となっていた。
また厚手の手袋をはめても射撃ができるように、用心金が大きく、銃把(グリップ)は細い。
さらに広大なユーラシア大陸での撃ち合いを鑑み、貫通力の高いマウザーC96用の7.62mm弾をほぼそのままコピーした7.63mmトカレフ弾が用いられた。
こうして開発された銃はTT1930として採用された。
TT1930とはツールスキー・トカレヴァ1930年式の略であり、通常はこれをさらに縮めTT30と呼ばれる。
後の1933年には、これを更に簡素化したTT1933(TT33)として多数が量産され、シベリアなどの極端な環境下では信頼性の高い銃として重宝された。
しかしそれ以外の場所では、単に安っぽい、それでいて無闇に危険な銃でしかなかった。
特に中国の北方工業公司が「五四式手槍」としてデッドコピーしたものが香港・台湾・日本などへ大量に密輸され、暴力団抗争などの犯罪に多用された。
手袋の着用を前提に設計された銃把は素手で握ると把持性が極端に悪く、狙いが外れて無関係の市民に誤射されることもままあった。
また小銃弾に近い貫通力を持つトカレフ弾は壁などを貫通し、やはり無辜の市民を巻き添えにする危険が大きかった。
さらに安全装置が存在しないうえ、チャイニーズコピー品はオリジナルよりも信頼性に劣ることもあり、人知れぬ暴発事故も少なくなかったと思われる。
このため日本では、トカレフといえば軍用銃というよりも、犯罪道具としてのイメージを強く持たれている。
当のソ連(ロシア)でも信頼性を偏重したTT33の後継として、バランスの良いPM(マカロフ拳銃)が採用された。
スペックデータ
口径 | 7.62mm×25 |
全長 | 196mm/195mm(68式拳銃) |
銃身長 | 115mm/108mm(68式拳銃) |
重量 | 815g(弾倉無し)/854g(弾倉有り) 795g(68式拳銃) |
ライフリング | 4条/右回り |
使用弾薬 | 7.62mmトカレフ弾 |
装弾数 | 8発 |
作動方式 | シングルアクション・ショートリコイル |
銃口初速 | 420m/s 500m/s(54式手槍) |
有効射程 | 50m |
主なバリエーション
- TT30:
初期型。V字型リアサイトを装備。
- TT33:
主力モデル。リアサイトをU字型に変更した。
また、一部はスライドの小指掛けを細溝に変更している。
- ラドムwz33:
ポーランド製。
- ラドムwz48:
ポーランド製。トリガー付近に手動セフティを追加している。
- FGEトカレフ48M:
ハンガリー製。スライドの指掛けを細溝に変更している。
- FGMトカジプト58:
エジプト軍向けに口径を9mmx19に、装弾数を7+1発に変更。
グリップの形状を握りやすいものにし、手動・グリップセフティを追加。
エジプト軍が不採用を決定した後に市販された。
- TT-C:
ルーマニア製。スライドの指掛けを細溝に変更し、トリガー付近に手動セフティを追加している。
- ツァスタバM57:
ユーゴスラビア製。
スライドの指掛けを傾斜した細溝に変更、グリップを延長し9+1発へ増弾、マガジンセフティを追加した。
- 51式手槍:
中国・ノリンコ製。ソ連よりノックダウン生産。
- 54式手槍:
ノリンコ製国産化モデル。
スライドの指掛けを細溝に変更。輸出型にはフレーム後部に手動セフティを追加。
- ノリンコM213(TU90):
輸出型。9mmx19口径、装弾数はA型は8+1発、B型は13+1発。
スライドの指掛けを傾斜した細溝に変更、輸出型54式と同様に手動セフティを追加。
- M20:
北ベトナム軍向け54式手槍。
- 68式拳銃:
北朝鮮製。内部構造をFN ハイパワーに近い設計に変更。
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