ZIP (記憶媒体)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 13:29 UTC 版)
メディア
Zipのディスクは3.5インチフロッピーディスクと比較してより厚いが、それ以外は3.5インチフロッピーディスクとほぼ同じ大きさである。ドライブとディスクへの損傷を防ぐため、100MB Zipディスクのジャケット部分裏側の角(裏面の写真左上)に再帰反射スポットがあり、このディスクの再帰反射スポットを検出しないとドライブが動作しないようになっている。250MB Zipディスクでは黄色いシールが貼られており、区別が可能である。
互換性
上述の通り、Zipには3種類の容量のメディアがあるが、ドライブは基本的に上位互換となっている。ただし制限があり、250MBドライブは、100MBディスクへの書き込み速度が遅い。また、750MBドライブは100MBディスクの読み出しは可能だが書き込みは出来ない。この「100MBディスクに書き込めない」という仕様は、最も普及している100MBドライブのユーザーとのデータ交換に支障を来すこととなり、尽きかけていたZipの命運に、こと日本ではとどめを刺すこととなった。
非対応のディスクをドライブに挿入(100MBドライブへ250MBディスクを入れるなど)された際に、そのディスクにアクセスされることなく直ちにディスクが排出されるよう、再帰反射スポットの位置が3つのメディア容量で異なる。
特徴とインプリメンテーション
他のディスクフォーマットと違い、Zipのライトプロテクトは、ディスクコントローラそれ自身で実現されている代わりに、ソフトウェアとハードウェアの双方で実現されている。ディスク上のメタデータは、ドライブがホストコンピュータに従わせるライトプロテクトの状態を示す。プロテクトの設定を変えるために、コンピュータはZipディスク上のメタデータを変更するようZipドライブにコマンドを発行する。これはディスクがドライブにロードされ、ライトプロテクトをオン/オフするための適切なソフトウェアのあるコンピュータからアクセスされなければならないことを意味する。また理論的には、ライトプロテクトフラグを無視する野良ドライバや改良型Zipドライブが作成される可能性がある。
Zipシステムはパスワードを介したメディアアクセス保護も導入している。ライトプロテクトのように、これはソフトウェアレベルで実装されている。ディスクが挿入された際に、Zipドライブはメタデータを読み出す。そのデータがディスクに読み出しロックが掛かっていることを示していれば、ドライブはコンピュータからパスワードを待つ。パスワードを受け取るまで、ドライブは(基本のディスクI/Oコマンドに対し)空である振りをする。パスワードを受け取り検証すれば、ドライブはドライブ内のディスクを「活性化」させアクセスを許可する。あるドライブモデルにおいて、ソフトウェアを騙してドライブの中にあることを信じ込ませたのとは違うディスクにアクセスできるようにすることを可能にすることがこの実装の1つの副作用である。プロテクトはどのような暗号化も使用していない。プロテクトはただディスク上のメタデータとZipドライブのファームウェアからの協同の結合物である。
販売、問題とライセンシー
最初、Zipドライブは(その当時において)安い標準小売価格と大容量のために、1994年の販売開始後はよく売れた。アメリカでは当初、ドライブはカートリッジ1個付きで199USドルで、追加の100MBのカートリッジが20ドルで販売されていた。より多くの会社がカートリッジを供給するにつれて、追加カートリッジの価格はすぐに次の数年間で下落した。結局、富士フイルム、バーベイタム、マクセルがサプライヤーとなる。セイコーエプソンもライセンスされた100MBドライブモデルを自社ブランドで製造していた。
日本でも1995年当時、MOドライブは当時最も普及していた230MBタイプが約4~5万円、登場して間もない640MBタイプが約6万円だったのに対し、Zip100MBドライブは約2万円と破格であった。また、メディアは230MB MOが約2,000円、640MB MOが約3,000円に対して、100MB Zipディスクは約1,800~2,000円で購入でき、「保存するデータが数百MB程度」というエントリーユーザーに大きく訴求した。しかし、MOドライブやMOディスクが数年間で約半分~1/3の価格まで下がっていったのに対して、Zipはドライブ・メディアとも値段があまり下がらず、ユーザーはやがてMOやCD-R、CD-RWへ移っていった。
ZipドライブとZipディスクの売り上げは1999年から徐々に下降していった。1998年9月、死のクリック(後述)と呼ばれるZipディスクの不具合に関する集団訴訟が起こされた。この訴訟はアイオメガの敗訴に終わっただけでなく、Zipへの信頼性を低下させるものであり、売上低下に拍車をかけた。
その後、安価なCD・DVDドライブや手軽なUSBメモリの出現・普及によりZipドライブの需要は大幅に減った。日本国内では富士フイルムが2002年にドライブの販売が終了し2005年9月にはディスクの販売を終了している。アイオメガでは現在オンラインショップでドライブの販売が終了しディスクの取り扱いのみになっている。
なお、セガの家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」用の外付けZipドライブ発売が予定されていたが[1]、実現することなく終わっている。
- ^ “コンピューター用塗布型磁気テープ「富士フイルムDLT tapeⅣ」が国立科学博物館「重要科学技術史資料」に登録”. 富士フイルム (2021年9月1日). 2024年3月6日閲覧。
- ^ Zipディスク(100MB・250MB)販売終了のご案内 2004年9月12日
- ^ “日本アイオメガ、Zipドライブの新製品「ZipPlus」”. PC Watch (1998年1月23日). 2012年8月30日閲覧。
- ^ The Click of Death Ate My Data
- ^ "Click of death" strikes Iomega
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