Steam 独自の販売方式

Steam

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 15:48 UTC 版)

独自の販売方式

価格設定

購入可能なゲームは値段が段階的につけられている。一般的に古いゲームであるほど安く、新しいゲームは高い。通常の小売店での購入であれば、古いタイトルでも発売当初の価格とさほど変わらない値段で売られていたり、そもそも入手が困難であったりする場合も多いが、そうしたものが現在でも確実に・しかも格安で手に入るという利点がある。また新規作品であっても、海外タイトルの場合は並行輸入や代理店を経て販売されている日本国内でのパッケージの販売価格よりも遥かに格安であることが多い。

加えて一部のゲームは単品としての購入以外に、「独立系開発会社制作のパズルゲーム詰め合わせ」「Half-Lifeシリーズ全作品」など何らかの形で関連するいくつかのゲームが入っているパッケージ(詰め合わせ商品)としても販売されることがある。こうしたパックで購入する場合、ゲームにもよるが単品での購入に比べて大きな割引が適用される。(例えばValve Complete Packと呼ばれるValve社製ゲーム全部入りパックでは、単品で個別に買うよりも$169.15も割安になる。)また、下記にあるように、友人間での共同購入やプレゼント利用を意図した、特定タイトルの複数ライセンスのパック販売もあり、こちらも単体で買う場合よりも割安である場合が多い。

以前は、Steamの価格設定は米ドルを基準としていたが、2014年以降は通貨決済が国際化されたため、価格設定は地域に応じて現地通貨で設定されている。日本で販売されているタイトルはすべて日本円で価格が設定されているため、為替レートによって価格が変動することはない。また、物価や国民の所得が低い新興国(アジア・アフリカ諸国など)では価格も先進国に比べて大幅に安く設定されていることが多い。先進国のユーザが不当に安く新興国のユーザからゲームを入手させないために、後述するトレードやギフトはいくつかの新興国においては他国とは隔離する措置が取られている[28]

頻繁に強気なセールが行われることもSteamの大きな特徴で、中でもそれぞれ週ごとのWeek Long Deal、それぞれ週半ば・週末の数日間行われるMidweek Madness・Weekend Dealが[注釈 5]は時期を問わず常に行われており、これらの対象タイトルは格安価格(ある程度時期の経ったタイトルなら50%から80%程度の割引が多いが、AAAタイトルや新作は -20 〜 33% 以下が多い)で購入できる。セールの対象となるタイトルはその時々で変わるため、熱心なゲーマーは期待感を持って毎週これらのセールを注視しており、顧客を惹きつける大きな魅力の一つとなっている。

また年に数回行われる大規模セールでは4,000を超えるタイトルが一挙にセール対象となる。このイベントに限りAAAタイトルでも比較的大きな割引率での販売が行われることが多い。特に大規模なものは、6月頃に開催されるサマーセールと、12月の年末に開催されるホリデーセールで、他にも中規模セールとして不定期で行われるPublisher Weekendなどがあり、特定のパブリッシャーやシリーズにフォーカスを当てたセールが行われる[注釈 6]

他にも、タイトルによっては先行予約や発売直後において割引価格がかかるスペシャルプロモーションが実施されたり、予約/早期購入に特典を付加しているタイトルも存在する。

ギフト

購入時にギフトオプションを選択すれば、Steamのフレンドへゲームをプレゼントすることができる。2017年以前はゲームのギフトをインベントリに保存しておくことができたが、現在は廃止されている[29]

このシステムの利用を促すため、マルチプレイ主体のゲームの場合は自分用+ギフト3本分のライセンスが割安でセットになったパック(Four Packと呼ばれる)が販売されていることがある。これは例外的に贈る相手を決めるまで無期限で取っておくことができるため、セール期間中にとりあえず買っておいて後でプレゼントするなどといった利用法も可能。

ごく限られた条件下ではあるが、購入したパック中に既に持っているゲームがあった場合、この余剰分のライセンスがギフトとなり友人にプレゼントすることが可能な場合がある。例えば、『The Orange Box』やValve Complete Packを購入した際の『ハーフライフ2』と『ハーフライフ2 エピソード1』、Left 4 DeadシリーズやPortalシリーズのパックを買った際の1作目など。対象となるゲームや状況は限定されており、通常はパック中のゲームのライセンスの二重購入は考慮されず、2回目に買ったものは無駄になってしまうことが多い。

ちなみに、ValveはこのSteam ギフトを使ったライセンスのプレイヤー間での売買を認めておらず(Steamの利用条件によって明記されている)、規約に違反した場合はアカウントが停止される。ただし、後述するトレードシステムによる取引は認められている[30]

コミュニティマーケット

コミュニティマーケットは、前述するトレーディングカードなどのSteamアイテムを売買できるバーチャルマーケットである。ユーザは自由な価格設定が可能で、アイテムごとにそれぞれ売り注文と買い注文を出すことができ、最安値の売り注文が最高額の買い注文にマッチして自動的に取引が成立する。Valve製タイトルのゲーム内アイテムはコミュニティマーケットによって公式にリアルマネートレードが可能で、特に『Team Fortress 2』のアイテム『Mann Co. 物資箱のキー』などは250 - 300円程度の高い価値があり、価格も安定していることから、後述するトレードにおいて疑似通貨として広く用いられる[31]

トレード

Steamにはトレーディング機能があり、カード・ブースターパック・壁紙・絵文字・Valve製タイトルのゲーム内アイテム・クーポン・ギフトなどのSteamアイテムをトレードすることが可能となっている。

前述の通りギフトの売買は通常認められておらず、アカウント停止の対象ともなるが、トレード機能においてトレードした場合は認められるため、地域制限により購入できないゲームを入手したい等の理由でトレードは盛んに行われている。

販売促進

上記のギフト機能を利用した販売促進目的の手法として、指定されたゲームを一定期間無料で体験できる「ゲストパス」がある。特定のタイトルを購入した際に提供されることがあり、購入者はゲストパスを友人にプレゼントし、マルチプレイヤーのゲームなどを一定期間遊ばせることができる。有効期限が切れればゲストパスは無効になるが、このように友人間でプレイ可能な期間を設けることにより、自然な形で購入を促す仕組みになっている。

さらにもう一つの販売促進として、週末期間の割引であるWeekend dealの対象となったマルチプレイヤーゲームを、割引期間中無料でプレイできるFree Weekendが開催されることがある。この期間中はすでに同タイトルを購入済のプレイヤーと全く同じ条件でマルチプレイヤーゲームのプレイが可能となる。

ゲストパスやイベントの終了後は当然プレイは不可能となるが、その際にインストールされたゲームのファイルはそのまま残留し、任意でアンインストールしない限りライブラリにも表示され続ける。その状態で購入の手続きを行えば即座に継続プレイが可能になり、ゲームを最新の状態まで更新する手間をいくぶんか省くことができる。

支払い

ゲームの購入はTLS 1.2により暗号化されている。Steamはさまざまな支払い方法に対応しており、日本ではSteam独自の仮想通貨であるSteam ウォレットのほか、クレジットカードデビットカードPayPal・コンビニ決済・銀行振込LINE PayメルペイPayPayおよびWebMoneyが利用できる。日本独自の決済方法はデジカとの業務提携により、Komoju を利用している。Steamでは決済通貨の国際化が行われており、日本国内では2014年8月より日本円によるものとなっている[32]

海外においても独自の決済方法がサポートされており(e.g. WebMoney(日本のWebMoneyとは無関係)、iDeal, PaySafeCard, Moneybookers, Sofortüberweisung / DIRECTebanking.comなど)、決済通貨も国に応じて露ルーブルリンギットルピアレアルバーツ墨ペソ比ペソ米ドル星ドルNZドル諾クローネ加ドルユーロ英ポンドに対応している。かつてはアルゼンチンペソトルコリラにも対応していたが、為替レートの大幅な変動を理由に2023年11月20日を以て取り扱いを終了し、米ドルでの決済に変更されている[33][34]。現地通貨の決済に対応していない国では米ドル決済が採用されている。2023年12月10日現在、現地通貨非対応国向けの米ドル価格設定が地域別に4つ存在する[35]

ほとんどの新作は発売日前からの予約が可能である。しかし、上記のプレロード機能との兼ね合いもあり、発売後ではなく予約をした段階で料金の支払いが発生する。

Valveの実施しているValve Cyber Cafe Program[36]により、ネットカフェでもSteamが使われているゲームを遊ぶことができるようになる。運用形態は二つあり、クライアント数に応じた使用料金の徴収の場合と、Valveの時間追跡システムによるユーザ個別課金の場合がある。


注釈

  1. ^ ただし、複数のPCで単一のSteamアカウントを同時に利用することはできない。
  2. ^ ただし、現時点でSteam上で日本語表示に対応しているゲームは極少数に限られる。
  3. ^ これらの情報はあくまでオプションであり、使用を始めた段階では非公開となっているため、プライバシーのため公開を控えたいユーザにも配慮されている。
  4. ^ 例えば、ゲーム収集本数のメダルは所持ゲーム数が一定値になることでレベルアップするが、経験値は所持数が1つ増えるごとにわずかずつ増加していく。
  5. ^ 二日間限定・日替わりのDaily Dealや、大規模セール期間中において12時間毎に追加されるフラッシュセールも開催されていたが、2015年のAutumn Sale開催と同時に廃止された。
  6. ^ カプコンの対象タイトルなど。

出典

  1. ^ Steam Client Released”. Valve Corporation (2003年9月12日). 2008年2月3日閲覧。
  2. ^ ニュース - Client Updates”. Steam. 2023年5月7日閲覧。
  3. ^ Valve to Deliver Steam & Source on the Mac”. Valve Corporation (2010年3月8日). 2010年3月8日閲覧。
  4. ^ News – Steam for Linux Now Available”. 2013年11月30日閲覧。
  5. ^ Valve (2023年10月6日). “Valve's debut title, Half-Life, was released in 1998. Since then, we've released dozens of titles that changed the world (and one that didn't). Today, millions of people play our games every day.”. webcache.googleusercontent.com. store.steampowered.com. 2023年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月7日閲覧。
  6. ^ Magrino, Tom (2007年10月24日). “Steam piping Codemasters”. GameSpot. CNET. 2007年11月2日閲覧。
  7. ^ Strategy First to Deliver Multiple Titles On-Line via Steam”. Strategy First PR Department (2005年12月8日). 2006年8月23日閲覧。
  8. ^ PopCap Games Coming To Steam”. Steam News (2006年8月22日). 2006年8月23日閲覧。
  9. ^ Mokey, Nick (2007-08-06), Id Software Gets On Board with Steam, Digital Trends News, http://news.digitaltrends.com/news/story/13781/id_software_gets_on_board_with_steam 2007年11月2日閲覧。 
  10. ^ THQ Brings All-Star Line-up to Steam”. Steampowered.com (2007年7月17日). 2007年7月17日閲覧。
  11. ^ Full Steam ahead for Rockstar Games”. GamerNode. 2008年1月4日閲覧。
  12. ^ Steamの配信ゲームが30,000本を突破…2018年には約9,300本のゲームがリリース”. GameBusiness.jp (2019年1月15日). 2021年9月16日閲覧。
  13. ^ 記録更新が止まらない!Steam同時接続数が2,640万人を突破し1月に引き続き新記録を達成”. Game*Spark (2021年2月9日). 2021年9月16日閲覧。
  14. ^ Steam Registers 13 million Active Accounts”. 2007年12月8日閲覧。
  15. ^ Half Life authentication servers steam up”. 2007年12月9日閲覧。
  16. ^ Netjak review
  17. ^ Sharky review
  18. ^ https://kotaku.com/steam-drm-vs-spore-drm-5051514
  19. ^ SteamとmacOS 10.15 Catalinaについて - Steam Support”. Steam. 2021年7月25日閲覧。
  20. ^ Shuji Ishimoto (2017年4月4日). “Valve、大量の新作がリリースされている「Steam」にて“いいゲーム”の可視性を向上へ。アルゴリズムやキュレーター機能を強化”. AUTOMATON. 2017年4月30日閲覧。
  21. ^ Alden Kroll (2017年2月11日). “進化する Steam”. Steam blog. Valve Software. 2017年4月30日閲覧。
  22. ^ ALDEN (2017年6月7日). “Greenlight、本日終了。6 月 13 日より Steam Direct 導入へ”. Steam blog. Valve Software. 2017年6月11日閲覧。
  23. ^ これまでのただ一度の例外としては、Call of Duty: Modern Warfare 2で検出ミスによって発生した誤BANがある。この時にBANされたユーザは処分が取り消されると同時にお詫びのゲームが進呈された。Valve unbans Modern Warfare 2 players, gives gifts”. Destructoid (2010年7月26日). 2012年1月16日閲覧。
  24. ^ Steam rating”. Valve Developer Community. 2007年11月3日閲覧。
  25. ^ Content streaming”. Valve Developer Community (2006年5月14日). 2007年5月20日閲覧。
  26. ^ Pure servers”. Valve Developer Community (2007年6月6日). 2007年7月11日閲覧。
  27. ^ Content Server Stats”. Steam homepage. 2011年2月1日閲覧。)
  28. ^ Steamストアにて、VPNを使った格安ゲーム購入が困難に。“現地で発行された支払い方法の利用”が必須となる”. automaton (2020年7月31日). 2021年9月16日閲覧。
  29. ^ Steamのギフト仕様が変更―インベントリへの保存が不可に”. Game*Spark (2017年5月4日). 2021年9月16日閲覧。
  30. ^ Steam ギフト”. Steam サポート. 2015年6月26日閲覧。
  31. ^ あなたのSteamインベントリに資産が眠っていませんか? いつの間にか溜まっていたトレーディングカードを売ってみた話”. 4gamer.net (2018年12月29日). 2021年9月16日閲覧。
  32. ^ Steamの価格が日本円になりました!”. 2014年11月26日閲覧。
  33. ^ 11月20日から新たに適用されるアルゼンチンとトルコにおけるUSD価格設定について”. Steamサポート. Valve Corporation. 2023年12月10日閲覧。
  34. ^ Taijiro Yamanaka (2023年10月25日). “Steamにて「為替レートの変動が激しすぎる」として、アルゼンチンとトルコなどの使用通貨が米ドルに変更へ”. AUTOMATON. 株式会社アクティブゲーミングメディア. 2023年12月10日閲覧。
  35. ^ 対応通貨”. Steamworks ドキュメンテーション. Valve Corporation. 2023年12月10日閲覧。
  36. ^ Valve Cyber Cafe Program”. 2007年11月7日閲覧。
  37. ^ Caron, Frank (2007年10月25日). “Valve locking out user accounts for "incorrect territory"”. Ars Technica. 2007年11月26日閲覧。
  38. ^ Breckon, Nick (2007年10月29日). “Valve Responds to Steam Territory Deactivations (Updated)”. ShackNews. 2007年11月26日閲覧。
  39. ^ ATi Steam Offer”. Steam homepage (2007年5月30日). 2007年6月4日閲覧。
  40. ^ Have Fun編集部 (2021年10月10日). “「おま国」はなぜ生まれるのか?日本が冷遇される「おま国」の原因と理由を解説”. webcache.googleusercontent.com. esports-havefun.com. 2023年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月7日閲覧。






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