暴走族 社会の対応

暴走族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 06:49 UTC 版)

社会の対応

1970年代以降は、不良少年が既存の暴走族グループに居場所を求め急速に規模を拡大していた。また、暴走族の中に特定のファッションやスタイルが生まれると、これに憧れや興味を持った少年をさらに集めていく循環に陥り、未成年の比率が80 - 90%を占めていた。一方で、これらに対しては「社会に適応する準備段階において発生する反発」や「まだ方向を見出せない若いエネルギーの発散」の範疇として、迷惑行為とはされながらもモラトリアムとして容認される向きもあり、警察側も無理な追跡は(事故を防止する上でも)避けるといった傾向も見られたが、次第に道路の占拠や騒音で迷惑度を高め、抗争や暴徒化で暴力事件を引き起こすなど凶悪化していくと、傷害や窃盗などで検挙されることも増えてきた。こうした状況の解決には、カミナリ族の勃興当時には単なる交通違反の取り締まりとして対応されていた状況から、交通違反のみではなく三ない運動のように家庭や学校などを含めた少年非行問題としての対策へと転換する必要に迫られた。

センターライン上にチャッターバーが設置された峠道

一方で、このような未成年者の問題とは異なり、違法競走型暴走族は構成員の社会属性などに特定の共通性を見いだしづらく、また成人が多くなった現在の共同危険型暴走族も同様であることから、そういったものへの対策は交通違反を逐一取り締まっていく従来型が主となる。ルーレット族の集会や初日の出暴走のように規模の大きなものには、パーキングエリア内の集団を解散させたり検問を行うなどして取り締まっている。違法競走型暴走族の大規模な暴走行為にも共同危険行為が適用されている[26]。しかし、一人もしくは少数グループでのゲリラ的な活動が増加しており、それらの取り締まりは非常に困難である。ドリフト族への予防的対策としては、カーブの路面に凹凸の段差舗装を設けたり、センターライン上にチャッターバーを設置したりすることや、峠道入り口での検問や夜間閉鎖などの措置が取られている。

暴力団が一部の暴走族を組織化し、一定の庇護や武器・薬物の提供を見返りに、上納金を納めさせて資金源とする例も見られる。暴走族構成員の少年にアルバイトを世話したり、パーティー会場を斡旋してパーティー券を販売させるなどで、その収益の一部を手数料や上納金として徴収する。1977年からは暴走族の違法薬物による検挙が顕在化している[27]。暴力団と一定の関係を持つ暴走族では、構成員の一部が暴走族「卒業」後に暴力団員として雇用され、暴力団の予備軍的存在となっており、暴力団との関係を断つためにこうした暴走族の解体も図られている。

助長の禁止

1990年代の2輪ローリング族

法律では暴走族および違法改造車に対して、給油や車検など「暴走族を利する行為」を明確に禁止する規定がないが、その代替として各都道府県の条例により、暴走族や違法改造車に対し違法行為の助長を禁止している例はある。

熊本県の「熊本県暴走行為の防止に関する条例」を例とすれば、同条例で暴走族および違法改造車に対し、以下のような行為(暴走族の助長)を禁止している。

  • (暴走行為を助長する改造の禁止)暴走行為を助長するような自動車等の改造をしてはならない(条例第5条1項)
  • (違法改造車への給油の禁止)整備不良車両もしくは車両番号票を取り外し、隠ぺいし、若しくは折り曲げた自動車等の運転者に対し燃料を販売してはならない(条例第5条2項)
  • 特攻服、旗の製造の禁止)衣服、はちまき、旗等の刺しゅう又は印刷を業とする者は、衣服等に暴走行為を行う集団の名称その他暴走行為に関する表示の刺しゅう又は印刷をしてはならない(条例第5条3項)

注釈

  1. ^
    警察庁資料(1975年)
    年齢構成 職業構成
    年齢 東京 神奈川 秋田 大阪 職業 東京 秋田
    15歳以下 0.3% 0.5% 高校生 45.0% 9.0%
    16歳 19.3% 10.8% 1.3% 大学生 5.4% 1.5%
    17歳 35.4% 24.2% 10.0% 公務員 0.5% 1.3%
    18歳 13.5% 20.8% 15.1% 8.8% 会社員 12.8% 15.8%
    19歳 12.2% 13.8% 15.1% 31.6% 店員 11.4% 17.6%
    小計 80.4% 69.9% 41.9% 40.3% 運転手 3.9% 5.6%
    20歳 9.8% 13.7% 23.8% 21.6% 自動車修理
    21歳 4.3% 7.6% 17.9% 10.0% 工員 9.2%
    22歳 1.4% 3.3% 7.9% 9.1% 土建業 3.6% 12.8%
    23歳 2.0% 2.8% 4.9% 4.1% 農業 11.8%
    24歳 0.7% 1.5% 1.5% 2.8% 家事手伝い 6.4%
    25歳 1.2% 0.5% 2.0% 2.2%(※) 無職 2.0% 11.8%
    26歳以上 0.7% その他 6.1%
    サンプル数 4,994名 1,201名 391名 320名 サンプル数 4,994名 391名

    ※25 - 29歳まで

  2. ^ 特に大規模な抗争の例として、1975年6月8日に国道134号で、東京の暴走族(ブラックエンペラー、ルート20、スペクター、アーリーキャッツなど)400名と、神奈川と横須賀の暴走族(ピエロ、ホワイトナックル、崇族、邪道会など)の連盟200名が、同年5月8日に起こった傘下グループ間の諍いを理由に大乱闘を行った。4台の車両が炎上、21台が大破、相当数の負傷者を出した。のちに神奈川県警の鎌倉警察署はこの件に関する捜査本部を設置し、抗争に関与した者の一部を逮捕した。
  3. ^ 特に大規模な暴動の例として、1975年5月17日に兵庫県神戸市で、約3,000名の群衆が250台の暴走族車両と合流しフラワーロードを占拠した。タクシーを横転させ、立看板に放火、建物の窓ガラスを割り、警察官や派出所へ投石し44名の警察官を負傷させた。また同日には愛知県岡崎市でも、約500名の暴走族と約1,000名の群集が国道を占拠し、愛知県警の警察部隊と衝突する事件があった。
  4. ^ キャロルクールスダウン・タウン・ブギウギ・バンド、1980年にデビューした横浜銀蝿など。
  5. ^ 広島市では、暴走族が「えびす講祭り」を幹部卒業式と位置づけて、集団で練り歩くなどの示威活動を行って来た背景があり、祭り自体の治安悪化が問題となっていた。この条例制定以降はえびす講期間中における暴走族のトラブルは激減した。→参考:1999年胡子講暴挙事件広島市暴走族追放条例事件
  6. ^ なお、スポーツ需要に関しては国産車のラインナップが壊滅的である(かつ2020年代では人気中古車の高騰が止まらない)ことから販売台数の多い中古輸入車をベースにする動きもあった。
  7. ^ 消音器がない直管、特殊構造でメガホン化し騒音を増幅する。
  8. ^ 特徴的な重低音が好まれる。
  9. ^ 当時ビキニカウルは一般的ではなく、布とプラスチックシールドのいわゆる「風防」である。

出典

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